長く守り伝えられてきた“もの”に宿る美、ブランドPR関根千園の骨董コレクション【INTERVIEW】
FASHION HEADLINE / 2015年10月29日 19時0分
―ものに対する日本人の価値観は今後どのように変化していくとお考えですか?
人って不思議のもので、便利なものを追求するために突き進み過ぎると、手のぬくもりを感じるものが恋しくなったりするんです。これまでの価値観では、新しいものと古いものではどちらが良いかって二者択一をしがちでしたが、これからは両方がそれぞれに存在する時代になるんじゃないかな。ファッションについてもそんな気がします。どっちが良いか悪いかではなく、全く違うものとして価値を見いだし始めているのではないかと思いますね。
骨董との出会い、母との思い出
―骨董品の蒐集には、いつ頃から興味を持つようになったんですか?
私が骨董品と出会うきっかけを与えてくれたのは母でした。母は日本の骨董品が大好きで、幼い頃から私を骨董品屋さん巡りに連れて行ってくれたんです。最初の頃は、まだ骨董の良さというものがよく分からず、母はなんでこんなに古いものが好きなんだろうって思っていたんですけど。
母は骨董品自体の価値には興味がなく、見た目が好きか嫌いかを購入の基準としていました。専業主婦であった母は決して贅沢などしませんでしたが、「本当に好きだったら買った方がいいのよ」といって、まだ子どもの私にとっては驚くような値段のものでも購入していました。母の買い物を見て、衝撃を受けました。
―女性としては、思わず共感してしまいます。
今では私も非常に共感できますね。小学生の頃には、食事の支度をする母を手伝って料理を盛るお皿を選んだりしていましたが、選んだ食器が料理や他の食器と合っていないと母によく怒られました。そこから母の意図を自分なりに理解しようと考えるようになったのですが、やはり私も骨董やその組み合わせなどに興味があったのでしょうね。こうした母との思い出であったり、骨董の食器が、全てではなくとも、日常の食卓に上がったりしていたことに、大きな影響を受けているのだと思います。
海外のブランドPRを担当して
―ご自身の骨董好きは、お母様からの影響が大きかったのですね。では、他にはどんな方、あるいはどんなご経験から影響を受けたとお考えですか?
ドリス ヴァン ノッテンやラデュレ、マリー エレーヌ ドゥ タイヤックといったデザイナーやブランドのクリエーターたちとの出会いにも大きな影響を受けていると思います。
「ドリス ヴァン ノッテン」では10年以上仕事をしていますが、デザイナーがファッションを生み出す背景に直に接したことで、特に手仕事の素晴らしさついて改めて気づかされました。同ブランドが展開する刺繍を施したプレタポルテは、実はいまだにインドの職人たちの一本の針から生み出されているんです。ドリスは今、インドに3000人の職人を抱えています。職人育成の環境を整え、手仕事の技術を絶やすことがないよう取り組みを行っているんです。一度でも魔がさして「もうやーめた」って投げ出してしまったら二度と手に入らなくなる、その怖さを知っていますから。
人の手から作られたものには、機械製品にはない揺らぎがあります。歪みが生じたり、あるいは不備があったり。でも私は、手仕事に対しての絶対的な愛好、リスペクトを持っているのです。人の手の温もりを感じるものに囲まれていたい、そしてそれらを次の時代の人たちに伝えていきたい、そう思っています。
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