昔はエゴイスティックだった。でも今は、文化を継承するプラットフォームを作りたい--アーティスト舘鼻則孝2/2【INTERVIEW】
FASHION HEADLINE / 2015年12月17日 23時38分
ーレディー・ガガが履いたことで一躍有名になったシューズも立体的なプロダクトですよね。東京藝大では、友禅など日本文化を学んでいた舘鼻さんが、そこから立体的な作品に飛躍していく時に、何があったのでしょうか?
確かに藝大で勉強したのは、日本の古典的な様式ですが、それは要素として必要だっただけで、クリエイションにおいて、日本の古典的な表現をしたかった訳ではありませんでした。
現代の日本人は和装ではなく洋装で暮らしていますし、自分は新しいことをしたかったので、作品を言葉にするならば現代的でなくてはいけなかった。作品になった時に、現代の日本の暮らしにあったカタチである必要があったわけです。
ー古典的な技法を使いながらも、現代の美意識や暮らしにあった形を追求した作品だということですか?
結局、古典的な日本と現代の日本がコラボレーションしているのが、僕の作品だと思っています。要するに、古典的な日本はそのままに、西洋文化が入ってきた文明開化以降の日本で育った文化と融合させる。言い換えれば、西洋と東洋のコラボレーションとも言えると思います。
自分が海外で評価される理由は、作品の中に西洋と東洋が要素として共存しているからです。
ー今日の撮影で用意して頂いた下駄とシューズもまさに西洋と東洋の対比、そして融合が表現されているということでしょうか?
この(花魁が履くような高下駄を連想させる)下駄の作品は二次曲面だけで構成されています。一方、この(踵が地面につかない構築的な)ヒールレスシューズには二次曲面がなく、三次曲面しかありません。三次曲面で構築されたシューズは、下駄とは作品を作るにあたってイメージした時代が違います。下駄の作品が日本古来の文化が息づく江戸時代までであるならば、ヒールの作品は、西洋文化が入ってきて立体的な美しさが追求されてきた時代のものというイメージです。この二つの作品には、ギリシャ彫刻のように立体的な美を捉えたものと、日本的な様式化された平面的な美の違いが込められています。だから、この二つは両方作らないと作品として成立しないんです。
ー今後やっていきたい活動はありますか?
大学生の頃は「自分が一番になりたい」という気持ちもありました。でも、今はチームで動くことが好きで、みんなで共有していくことを大切にしています。僕はまだ若いかもしれないけど、技術や知恵、そして文化を伝承していく仕組み=プラットフォームを作っていきたいと思っています。ケーススタディをわかりやすいパッケージにして残していくことの方が、すごく大事なことだと思っています。伊勢神宮の式年遷宮も、まさに技術と文化の継承の仕組みですよね。
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