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アートを通じて人と人、都市と地域がつながる。瀬戸内国際芸術祭・総合プロデューサー 北川フラム--2/2【INTERVIEW】

FASHION HEADLINE / 2016年3月27日 20時0分


豊島で展開する「島キッチン」では、地元のお母さんたちも働いている

■人もアートも、それぞれみんな違う面白さ

ーー都市と地域は呼応し、交換し合うことがこの時代、大切であると聞きます。

僕が一番感動したエピソードは、浜辺から作品までの道の途中に住む人が、芸術祭が開幕して3~4日目ぐらいから、発泡スチロールの箱に水をためて、家の前でジュースを売り始めた。「おかあちゃん、何やっているの?」と家族が聞いたら、「島に来る人たちをずっと見ていた。でも、見ているだけではつまらない。何か売れば、おしゃべりできるかもしれない」と考えたと。そのジュースの仕入れ先は、10メートル先の自動販売機。そこで140円で買って冷やして140円で売っている(笑)。

普段、島に人は来ませんから、珍しいわけです。この話を聞いて、「いろいろな人を見てみたい」「話したい」というのが、島の人たちにとっての一番の喜びだと感じました。昔の街道筋もお遍路も、それが楽しみだった。もっと理屈っぽくいえば、地球上には73億人の違う人が生きていて、人それぞれみんな違うという面白さを本能が求める。アートの素晴らしさは、みんなが違っていいところ。人と違っていいことが唯一認められる領域。だから僕はディレクターとして、なるべく違うアートを選びたいと思っている。人間国宝級のすごいものがあっていいし、素人の作品もあってもいい。そういう多様さが、美術の最大の面白さだと思うし、都市と地域の交換の根拠だと思います。

ーー作品にもその影響は現れているのでしょうか。

普段はシリアスなテーマで活動しているアーティストも、おばちゃんたちに、「にいちゃん、がんばれ」と、肩やお尻をたたかれると、作品が明るくなります。それは美術のもっている祝祭性が、島(土地)とのかかわりの中で引き出されるからでしょう。クリスチャン・ボルタンスキーのシリアスな作品、例えば豊島にある《心臓音のアーカイブ》にしたって、海に開けていく感じがしませんか?

■瀬戸内海を希望の海にするために

ーー来訪者も人と人とのかかわりを求めていますね。

アンケートで瀬戸内に来た理由を尋ねると、圧倒的に、1位が現代美術。2位が海や島の面白さ。でも帰るときの答えは、1位が島の人と話せた。2位が島の行事に参加できた。3位が島の食材や料理を食べられた。というふうに変化する。都市は画一化され、人はロボットとして扱われ、会社で言われたことを一生懸命やるしかない。でも、田舎に行けば、固有名詞で呼んでもらえる。だからみんな田舎に行きたがる。

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