パリコレクション俯瞰、もう一つの視点【16SS Paris collection:横井由利】
FASHION HEADLINE / 2016年3月29日 21時0分
16SSの新作コレクションが店頭を飾り始めた。この春、何を買って着ようかと情報チェックはすでに終了したタイミングに、手に入れる商品の背景や店頭に並ぶ必然性を考察してみた。
5ヶ月前の2015年10月に開催された、16SSパリコレクション。各メゾンの新作は発表の翌日には「Style.com」(現Vogue.com)で、速報として世界中に配信され、翌月になるとコレクション分析はすっかり終わり、注目の素材はレースで、流行色は白になると頭のどこかにインプットされている。SNSで拡散されたリアルなブロガーの言葉が響いたとなれば、その意見に従い買い物計画を練っているのかもしれない。ブティックには新作の商品が揃い始めたこのタイミングで、改めてコレクションについて語ることにしたのは、同じ服でも視点が変わると違う見え方をすることを提案するためだ。
3シーズンほど前からトレンドのキーワードに登場している「ジェンダレス」に注目してみた。この言葉の意味は「性差を超えて」だ。20世紀の女性は、ロングスカートからミニスカートに履き替え活発に、ズボンを履きテーラードジャケットを着て男性と肩を並べた。女性ファッションは「ユニセックス」「アンドロジーナス」などという言葉に置き換えられ、進化していった。
21世紀に入ると、今度は男性ファッションに変化が起こり、フリルのついたシャツも、スカートを模したパンツも受け入れる男性が増えている。ジョナサン・アンダーソンのように性差の壁を取り払い、同じ素材、同じデザインを提案するデザイナーも登場している。(その現象は、デザインのアイディアやテクニックで表現可能な事柄で、世相の変化として捉えることができる。)
ところが女性と男性デザイナー別にコレクションを並べてみると、ジェンダーの差が見えてくるのだ。女性デザイナーはまず自分が着たい服を提案し、男性デザイナーは妄想をデザインに落とし込んでいるのだ。それは今始まったことではなく、一般市民がファッションを楽しむようになったころから何ら変わっていないことに気がつく。
女性デザイナーの出発点は、自分が今着たい服だ。男性デザイナーは、新しい考えを持つ女性にはこんな服を着て欲しいし、求めているに違いないという妄想だ。そこで女性たちは、どのプレゼンテーションに賛同するかによって自分が着る服を選ぶのだ。男性デザイナーの服がセクシーに見えるのは、彼らが造形的な「美」を追求するからだろう。それにひきかえ女性デザイナーは案外現実的で、こんな服があったら「着易い」や「楽」をキーワードにし、さらに古い考えから解放された自分をデザインし、男性の視線は二の次の場合が往々にしてある。
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