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ファッション×サイエンスで示す“美の普遍性”とは。ウェディングドレスデザイナー松居エリ--1/2【INTERVIEW】

FASHION HEADLINE / 2016年6月21日 19時0分



ーー物理学、視覚認識学、時間生物学など、国内外問わず多くの研究者たちとコラボレーションをされていますが、どのようにして出会われたのですか?ファション業界にいても、なかなか関わる機会の少ないジャンルの方々かなと思うのですが。

無謀にも、いきなりコンタクトをとりました(笑)。時には知人を通じて、紹介して頂いたり。博士たちも「面白い」と思って下さったようで、唐突な申し出にも快く応えてくれたんです。

ーー具体的に、コラボレーションではどのようなテーマを設け、科学と数学をファッションに取り入れたのか、経緯なども踏まえていくつか教えて頂けますか?

例えば、理化学研究所の脳科学者松本元先生とのコラボレーションでは、“美”の普遍性はあるのだろうか、という疑問が私の中で沸き起こり、松本先生に手紙を出したところから始まっています。脳科学の「外部情報は内部情報を取り出すトリガーである」という考えを基にすると、五感を通して美しいと感じる時、脳はすでにこのことを美しいと感じる記憶を過去に創っていたことになるのです。同じものを見ても人それぞれ内部情報が違うので、同じ記憶を持っていない限り美の感じ方が違う。そこで、私たちが好き嫌いを判断するのは、人間の根源的な欲求と生物の遺伝情報という点からヒントを得て、これらの疑問の解明や脳科学をファッションで表現するコレクションを発表しました。

また、最初にコラボレーションを果たしたトポロジストの圓山先生は、◯と△は同じものであるというトポロジーの世界の「視点の転換」を鮮やかに見せて下さいました。それを元に私は服の設計で、繋がりに注目し“長さ”や“角度”から、つまりいわゆるパターンから離れて繋がりのみで創られた服を仕上げたのです。設計することから考えていくと、「服には、身体から立ち上げる服と、最初に展開図がある服」とがあることに気づくきっかけにもなりました。逆に、「煙のような服を創りたいなぁ」「円で服を創ったらどうなるかなぁ」とデザイン先行で生まれた作品もあります。



ーー論理的な科学と数学は、感覚的なデザインやファッションとは対極にあるように考えられていますが、松居さんの作品のうえでは見事に共存しています。それらの共通性、科学者とクリエイターの接点は何だと思われますか?

感覚や感性でものを創ると多くの人が言いますが、私は知覚や思考があってこそだと考えています。知識と経験の土壌から生まれる記憶や思考の積み重ねによって、感覚することができるのです。そのうえで、アートやサイエンスの共通点は、何もないところから生まれるのではなく、すでに存在するものから取り出しさらに飛躍させる作業であること。ものを創り出すことに渇望する者(クリエイター)と探し求めて解明する者(科学者)は同じように、闇の中で光を掴もうと手を伸ばしているのです。

それに、17世紀頃、ニュートン力学で知られるアイザック・ニュートンが多くのことを解明する以前は、創造と科学の世界に分け隔てはなかったんですよ。もともと感性や思考、創造と科学は対立する存在ではないということです。知覚を超えて自然界と人間の脳を繋ぐのが科学や数学。その関係性を視覚化するために科学者が解明した美しい抽象画を、現実界で手に取れるものとして創り出し、解き放ちたいというのが私の切なる願いです。

「自己」になることを許された服こそが“感覚する服”。ウェディングドレスデザイナー松居エリ--2/2【INTERVIEW】に続く。

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