アートとファッションを行き来する猟奇的ジュエリー--ヘヴン・タヌディレージャ【INTERVIEW】
FASHION HEADLINE / 2013年10月28日 21時0分
ドーバーストリートマーケット・ギンザ1階でのインスタレーション
10月25日からドーバーストリートマーケット・ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)1階にてインドネシア生まれのデザイナー、ヘヴン・タヌディレージャ(Heaven Tanudiredja)手掛けるジュエリーブランド「ヘヴン(HEAVEN)」のスペシャルディスプレイが開催されている。イベントに際し、本人が来日した。13-14AWコレクションのイメージやクリエーションのベースとなる彼のバックグラウンドについて聞いた。
13-14AWのテーマは「美しいカオス」。「友人が鬱病になり、その病気について調べていくうちに、精神的な病を抱えた人に興味を覚え、彼らの頭脳世界を旅しながらイメージを膨らませた」とヘヴン。
新作は一つひとつに「拒食症(ANOREXIA NERVOSA)」「放火狂(PYROMANIA)」などの名が付けられている。単語だけを並べると過激なイメージが思い浮かぶが、ヘヴンの手に掛かるとその世界の住人達の頭脳で繰り広げられている妄想のカレイドスコープは「美しいカオス」となり象られている。今インスタレーションでは自分の殻に閉じこもる精神病者からイメージした、球体のショーケースにディスプレイされた。
彼はジャカルタのエスモード出身。並行してテーラーなどを手伝っていたという。卒業後、アントワープ王立美術学校に進学する。在学中に、インターンとして当時ジョン・ガリアーノが手掛けていたディオール(Dior)のオートクチュールメゾンの現場を経験。卒業後は、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)のアトリエに務めることになる。
「ディオールでは、モードが描き出すファンタジーの世界に触れ、ドリスのアトリエでは、クリエーションとビジネスを両立させる術を学んだ。ウィメンズのデザイナーを目指していた私に、ジュエリーデザインを勧めてくれたのは、ドリスだった」(ヘヴン)。
独立後は、アントワープにアトリエを構え、ジュエリー制作に励んでいる。どれも繊細な手仕事が施された完成度の高いジュエリーは、1点もののアートピースといえるほどだ。現在ディエチ・コルソ・コモ(10 Corso Como)やバーニーズニューヨークなど感度の高いセレクトショップを中心に販売されている。
ヘヴンのジュエリーは、アートに明るいピエール・ベルジェの目にも留まった。ムッシュ・サンローラン生涯のパートナーであり、ムッシュ亡き後、2人で収集した芸術作品をクリスティーズに出品し、個人所蔵品の競売で史上最高額を売り上げたことでも知られている。そのベルジェが運営するコンテンポラリー・ジュエリーのオークションにヘヴンのジュエリーが2点出品され、競り落とされたという。
2013年には、アントワープのデザイナー、ブルーノ・ピータースが立ち上げた、「オネスト・バイ(honest by)」という環境問題に取り組みサステイナブルな世界を目指す、ファッションサイトへも6点出品した。
「クリエーションを追求し、環境問題にも配慮し、ビジネスを成功させること。すべてをクリアーしながら、プロダクツとして成立させることの困難さを常に感じているが、ビジネスが優先される今だからこそ、取り組むべき課題だと思う」とヘヴン。
彼のジュエリーは、アートとプロダクツの境界線を行き来しながら、ジュエリーの新しい時代を切り開いていくだろう。ディスプレイは11月21日まで。
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