『ファイアbyルブタン』レビュー。“ジュエリー”のようなシューズエンターテインメント

FASHION HEADLINE / 2013年12月19日 21時45分

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ブルノ・ユラン監督『ファイアbyルブタン』

「靴の魔術師」の異名をとるシューズデザイナー、クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)がプロデュースした、パリの老舗キャバレー「クレイジー・ホース」のバーレスクダンスショー「FIRE」が3D映画化された。

シークエンスの一つでは音楽をデイヴィッド・リンチが手掛け、製作・技術スタッフは、コンテンポラリーダンスの礎、故ピナ・バウシュの代表作を綴ったヴィム・ヴェンダース監督『PINA 踊り続けるいのち』と同じチーム。

つまり、いわゆる普通のドキュメンタリー映画ではないことがおわかりになるだろう。
これは、エロティシズムを散りばめた極上のエンターテインメントと、アーティスティックな映像作品の要素を兼ね備えた、まさに“ジュエリー”のような映画だ。

服飾史の伝統的なアイテムでありながら、ときにコレクター垂涎の工芸品であり、フェティッシュの象徴でもある、ルブタンの「ハイヒール」の数々が、全編にわたり、贅沢な狂言回しを務める。

主役はもちろん、ルックスもテクニックも粒ぞろいのダンサー達の、鍛え抜かれた完璧なボディと、一糸乱れぬパフォーマンス。男心をそそる、という点でも王道のトレーニングを受けたダンサーの美しい媚態に目を奪われ、スタイリッシュな衣装からのぞく可愛らしい小ぶりの乳房がプルンと揺れるたび、心躍る気分になるのは、男だけではないはずだ。

そしてつくづく実感したのは、コンテンポラリーダンスばかりでなく、おそらく多くの現代芸術表現に欠けているのは、このフィジカルな感応と官能、そして「眼の快楽」なのだということ。

ショウアップされたダンスパフォーマンスだけが持つ、華やかさと艶やかさは、問答無用でセロトニン全開の「多幸感」と、明日への活力を与えてくれる麻薬性の快楽だ。
フィリップ・ドゥフクレをアートディレクターに迎えるなど、歴史あるキャバレーの中でも最も先鋭的なスタイルで知られる「クレージーホース」。

そのプロ意識を映像で体感し、アートとエンターテインメントを等しく愛する“高等でない遊民”達の審美眼はますますキビシく豊かに鍛えられていくのである。

12月21日よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開。

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