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【ファッション・メイカーズvol.1前】coromoza西田拓志“ファッションに足りないのはつくること”

FASHION HEADLINE / 2014年1月27日 12時0分

デジタルな世界からリアルなものづくりの場へと転身した西田氏だが、一方で、ネット業界に比べ、ファッション業界の構造の古さも感じていた。若いクリエーターが新しいことを始める時に、今のファッションビジネスでは高い参入障壁がある。

「ネット業界は才能があれば10万円でも起業でき、若い才能やエネルギーが集まりやすい。片やファッションビジネスは産業のインフラが50年以上前にできたもの。未だに半年前に展示会をして受注するメーカーがリスクを負うシステムです。昔は卸し先の買い取りが前提で、その生産のための期間でしたが、今は預かり在庫なので、本当はビジネス形態も変わっているはず。

知り合いにパン屋みたいなファッションブランドがあります。アトリエを兼ねた店で、デザイナーがその日つくりたいものをつくり、できたものを売る。そういうミニマムな世界もファッションでは可能なのに、大半はシステムに乗っかり、画一的なものづくりしかできなくなっている」

■今のファッションに足りないのはつくること

そうしたファッションの業界構造を変えたいという考えを抱きながら、西田氏が最も興味を持ったのは、“つくること”だった。
「影響を受けたのは、『シアタープロダクツ(THEATRE PRODUCTS)』の『シアターユアーズ(THEATRE,yours)』というプロジェクトです。これは型紙や生地を販売し、服づくりのプロセスをワークショップで体験しながら、洋服のつくり方を知ってもらおうという試み。デザイナー武内昭さんの『食べものはファーストフードから高級レストランまで、色々な楽しみ方があって、自分で料理をしていれば、それぞれの価値がわかる。けれども、今のファッションはただ消費するだけで、自分の手を動かさないので、なぜこの値段なのか、洋服の価値が分からなくなってしまった。自分でつくることによって、また別の楽しみ方が生まれるのでは』という話に共感しました」

最新機器をそろえたものづくり工房は、先例の「ファブラボ」や「テックショップ」などのように、メイカーズブームを後押ししているエコシステムの一つだ。本来、こうした工房に集うアマチュアクリエーター達はハンドメイドマーケット「エッツィー」などに代表されるオンラインの販路と結びつくことで、顧客を獲得して来た。しかし現在、「coromoza 」はオンライン展開には消極的で、リアルに人と人がつながる場としての機能を強化したいと考えている。その第一弾として、昨秋には初の展示会「WORKS」を開催した。また、実際の服づくりのためのパターン講習会も定期的に行っている。

「このままだと日本のファッション産業は国内生産ができなくなるという危機感を感じています。地方の工場の深刻な人手不足など、惨状には目を覆うものがあります。ゆくゆくは若手デザイナーとそうした工場を結びつけ、ファッションの多様なあり方をつくりだしたい」

西田氏の志は高く、挑戦はまだ始まったばかりだ。「coromoza」を拠点に、新しいファッションの価値を提案するブランドが育っていくのを期待したい。

(合同展示会「WORKS」の模様は後編で特集する。)

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