【日本モード誌クロニクル:横井由利】世界で最も歴史のあるモード誌ハーパース・バザー--9/12後編
FASHION HEADLINE / 2014年2月21日 12時0分
新しいミレニアム(千年紀)を間近にひかえた、2000年8月28日、『ハーパース・バザー日本版』(以降バザー)は創刊した。
アメリカの雑誌ではオーソドックスなサイズなのだが、日本のモード誌と比べると小さい版型(本のサイズ)、慣れ親しんでいた明朝系のBAZAARとは違うゴシック系フォントのバザーはいかにも、ニューヨークのモダニティーを表現していた。新世紀の女達へとメッセージされた表紙には、新ミレニアムを生きる5人のモデルが颯爽と並んだ。
創刊編集長の田上美幸は、1930年代から1950年代のバザーを輝かせたカーメル・スノー編集長の“the well-dressed woman and the well-dressed the mind "という言葉を引用して、目に見えるもの、見えないものすべてに高い美意識を持つ女性を、バザー日本は描き出すと語っている。
ちなみに、カーメル・スノー編集長は、クリスチャン・ディオールのデビューコレクションが終わると「これこそ、ニュー・ルックだわ!」と叫び、その言葉はすぐさま世界中に配信され、一夜にしてディオールを時の人にした名物編集長だ。
Harper's BAZAARは、1867年に創刊した世界で最も歴史のあるモード雑誌だ。いつの時代も、VOGUE誌とはバーサス関係にあり、コレクション会場では火花をちらす場面も多々見受けられる。
現在の米VOGUE編集長のアナ・ウィンターとは英VOGUE時代同僚でもあり、良きライバルとしてHarper's BAZAARを牽引した編集長のリズ・ティルベリスが病に倒れたときは、広告を含む各ページにリズへの追悼文が掲載されるという、異例の追悼号が出た。編集長を失ったバザーに新しくやって来たのは、米VOGUEのファッション・フィーチャー・ディレクターを務めていたケイト・ベッツだった。
ケイト・ベッツ編集長は、雑誌の顔ともいえるタイトルの書体を変え、若々しいスタイルにリニューアルさせ、新進気鋭のフォトグラファーを起用してモダンなファッションを提案、それは新しいミレニアムに向けた決意さえ感じさせた。そのタイミングに合わせるように、日本版は創刊した。
編集長を引き受けるにあたって田上美幸は、このケイト・ベッツ(当時30代)の若さに運命を感じ、自身を奮い立たせ挑戦することにしたという。ADの瀬田裕司と共に、NYにあるハースト社に出掛けインターナショナル部門の担当者とのミーティングはフレンドリーに進んだ。ところが、創刊に向けデザインのひな形を作るあたりから、雲行きがあやしくなりアプルーブがなかなか取れなくなった。
「日本の文化を理解せず、アメリカのロジックだけで本作りが始まるんですよ。ヨーロッパの人達は、互いの文化を知ることからスタートするので、その違いに当初はとても戸惑いました」と田上さんは言う。
世界的に知名度のあるHarper's BAZAARだったが、1年早く創刊したヴォーグ ニッポンとの認知度の差は大きかった。アメリカでも見慣れないゴシック系書体タイトルのBAZAARは支持されず、1年余りで編集長が交代することになり、それと同時に日本での体制も再編成されることになった。
10/12に続く。
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