「1205」のアノニマスな強い服--パウラ・ジェルバーゼデザイナー【INTERVIEW】
FASHION HEADLINE / 2014年5月8日 10時52分
ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DSMG)2階でのフィーチャーイベントのため来日した「1205」デザイナー、パウラ・ジェルバーゼ(Paula Gerbase)へのインタビューは、何とも哲学的論考のように始まった。「古くて新しい服を作っている」と話すパウラ。その服は、静謐で強い存在感を窺わせる。
パウラは、ロンドンの名門ファッションスクール・セントラル・セント・マーティンズ出身。ウィメンズ・クリエーティブ・コースを専攻しながら、紳士服の仕立てに興味を持ち、休学してサビルローで修行することを決意したという。
英国王室ご用達の老舗テーラー「キルガー(Kilgour)」での修行は、最初の3ヶ月は生地に触ることさえ許されず、職人との交流は1日2回お茶を出す時のみ。後は言葉を交わすこともなく、ひたすら作業を見続けるだけの日々だった。
「彼らの仕事のやり方は、古臭く見えるけど、実はそれが今一番モダン。しかも妥協することなく寡黙に仕事をする職人の強さや沈黙が支配するアトリエはパンクそのもの」とパウラは言う。テーラーで学んだウィメンズとはまるで違う服作りのアプローチは、その後の彼女の仕事を決定づけた。
そして「1205」を11-12AWシーズンよりローンチ。テーラーの厳格さをアップデイトしたモダンさと、抑制の利いた静けさは彼女の持ち味となり、デビュー後間もなく脚光を浴びる。素材とカッティングを重視した服はジェンダーレスな雰囲気。DSMGの他、ユナイテッドアローズなど日本での取り扱いが多い。「日本のバイヤーは、主張しない私の服をよく理解してくれた。いや、理解しようとしてくれたのかもしれない。新しいアイデアに対してとてもオープンマインドなの。それに時間を掛けて質を追求する日本人の感性が、私の服作りと共鳴するのも確かね」
当初メンズブランドとしてスタートしたが、サイズレンジが広いことで女性からも人気を得た。その後スカートやワンピースなどのアイテムを展開し、13-14AWからウィメンズコレクションを始めることになった。メンズ・ウィメンズ共に共通するアイテムがあり、テイストは一貫。これは数字のブランド名にもつながるものだ。
ブランド名「1205」は日本語で“イチニゼロゴ”、また英語で“ワンオートゥーファイブ””トゥエルブオーファイブ”など、どう読んでもいいらしい。数字にしたのは、誕生日や郵便番号、ラッキーナンバー(欧米で8は幸運の数字。1+2+0+5=8)と色々な意味付けができるようだが、最たる理由は「アノニマス(匿名)であろうとする自分の意思に最も近い表現法だったから」だという。“一つのフィロソフィー”が服にもブランド名にも貫かれている。
「pureness(純粋)、restraint(慎み)、substance(本質)。私のフィロソフィーはこの三つの言葉で構成されているの。ベルギーのプロダクトメーカー・ビューロ(Bulo)と家具を作る計画が進んでいるんだけど、発想の原点は服作りと何ら変わることはないわ」
慎み深く知的な話し方は、サビルローの職人仕込みなのか、久しぶりに硬派な女性デザイナーのメジャーデビューを体感した。
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