光で現実を問うリギョン展、銀座メゾンエルメスで開催中
FASHION HEADLINE / 2014年11月5日 21時0分
東京の銀座メゾンエルメス フォーラムにて10月31日、韓国人アーティスト・リギョンの個展「『逆転移』リギョン展」がスタートした。前日に行われた内覧会にはアーティスト本人が出席し、作品を解説してくれた。
彼女は初期作品より一貫して光を用い、視覚の限界に訴える作品を作ってきた。彼女の一貫したテーマは「目に見えるままを信じることの不安定性」だ。今回、同所にてこのミステリアスな主題を表現するのは「蛇の口づけ」「善悪の知恵の木」の二つのインスタレーション。
新作である「蛇の口づけ」は、銀座メゾンエルメスのガラスブロックの壁面から取り込まれる自然光と、時間と共に移り変わるスポットライトの光を用いた作品。フォーラムの空間に足を踏み入れた時、「太陽と影、涙」をリギョン氏は思ったという。床には螺鈿が敷き詰められ、光を受けてキラキラと輝く。涙の象徴だ。スポットライトが差す先からは「内面の声を聴いてほしい」と彼女が表現する曖昧な環境音のようなBGMが流れてくる。
インスピレーションとなったのは韓国の古い説話「無影塔」という。寺塔を造る石工の夫を追い、僧に塔の影の先端で待てば夫に会えるだろうと言われた妻が、まだ完成していない塔の影を探し続け、結局夫に会えず亡くなるという虚無的な物語だ。「実体の無いものを待ち続ける話。自分の姿につながるようだ」とリギョン氏。
作家はお気に入りの時間として12時、15時、19時を挙げている。空いた時間に煌めく床に寝そべり、妻の慕情に思いを巡らせ、ゆっくりした時にたゆたうのも一興だろう。
もう一方の「善悪の知恵の木」(2001年)は、アーティストが「方向性を失っていた頃の作品」という。強烈な光が空間を覆い、距離や方向、平衡感覚を失うほどの白光に、彼女の混乱・怒りなど当時の心象を感じる。空間を出ても網膜に残像が残る強烈な体験だ。
穏やかな光と峻烈な光、新旧対照的な作品からは、作家の一貫したテーマ「目に見えるすべてが真実か?」というテーマがヴィヴィッドに伝わってくる。SF小説で同じように「この世の不安定性」を問い続けたフィリップ・K・ディックと同様、“現実”というものを再考させてくれる。
【イベント情報】
「逆転移」リギョン展
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム
住所:東京都中央区銀座5-4-1
会期:10月31日から2015年1月7日
時間:11:00から20:00(日曜日は19:00まで)
休廊日:年末年始
入場無料
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