「“空気を読む”を超えて」Kitri:音色が映す新時代vol.3【interview】

FASHION HEADLINE / 2019年7月17日 12時0分

姉妹ピアノ連弾ヴォーカルユニット、Kitriがメジャー第2弾作品となる『Secondo』を7月24日にリリースする。

姉のMonaと妹のHinaからなるKitriは、あの坂本龍一がデビュー作を発表したことでも知られる伝説的レーベル、BETTER DAYSからのニューカマーとして、今年1月に1st EP『Primo』でメジャーデビューを飾った。以降、Spotify 「Spotify Early Noise Artist 2019」やYouTube「Artists to Watch」などに選出。また、大橋トリオがその才能に惚れ、メジャーデビュー前からプロデュースを手掛けるなど、本人らの穏やかなキャラクターとは裏腹に、話題に事欠かない新進気鋭のアーティストと言えるだろう。



目まぐるしく移り変わる新時代を築くアーティストたちの、現代を生きるスタンスやマインドに迫るインタビュー連載第3弾として、今回は彼女らにインタビューを敢行。ふたりが音楽活動をスタートさせるに至った経緯や、新作『Secondo』に込められた想い、そして今日の社会についてどう思っているかなどを語ってもらった。(編集部)



――話し方や雰囲気もすごく似ているんですね。

Mona:よく言われます(笑)。双子に間違われることも多いです。

Hina:姉のほうが少し身長が高いので、立っていたらそこで見分けてもらいます。

Mona:Hinaのほうが堂々としているんですよ。私が落ち込んだときも「大丈夫、大丈夫」と言ってくれる感じで。

Hina:姉は繊細なタイプで、マジメで努力家なんです。そこは見習わなきゃなと思いますね。性格はけっこう反対でも、価値観はぴったり合っています。

――Monaさんは4歳でピアノを始めたそうですが、きっかけというのは?

Mona:もともと母が趣味でピアノを習っていてレッスンについて行ったり、家では教育番組を観ながらいっしょに歌ったりしていた中で、音楽に興味がある子なんだとわかったのがきっかけかなと。生まれて初めて歌えるようになった曲が岡本真夜さんの「TOMORROW」で、2歳のときに歌っていたらしいです(笑)。

――Hinaさんは?

Hina:6歳で始めました。なんでも姉といっしょにやる感じだったので、「私もピアノ弾いてみたい」って。中学・高校は合唱部に入って、ピアノを一度お休みするんですけど、そこでハーモニーを奏でる面白みを覚えたんです。あとはYUIさんに憧れて、父にギターを教わったり。でも、姉とユニットを組むなんて想像もしていなかったです。

Mona:お互い好きな音楽をやっていたよね。私は帰宅部で、家に帰ったらひたすらピアノを弾く生活でした。両親が厳しかったわけじゃなく、音楽で将来生きていきたいって漠然と思っていたんですよね。友達が楽しそうに遊んでいるときも「いつか自分のためになるんだ」と信じて。青春時代を楽しまずにいた劣等感はあったけど、それをエネルギーにしてがんばっていました。

Hina:私はそこまでできなかったけど、2人で連弾をする機会が何度かあって。それはすごく楽しかったんですよ。

Mona:ピアノの先生に「勉強になるから」と勧められて。1人とは違って発表会も心細くないし、本番がすごく楽しかったんですよね。そのとき演奏したのは「サーカス組曲」「公園であそぼう」という曲だったんですけど、20本の指を使った連弾だけでしか表現できない音楽を2人で奏でて、息を合わせる喜びがKitriの結成に繋がっています。


――両親も含めて、大橋トリオさんが好きなんでしたっけ?

Mona:はい。10年前くらいに家族で喫茶店に行ってオムライスを食べていたらBGMで流れてきて、全員が思わず手を止めたんですよ。「この曲と歌声、めっちゃいいね! 誰なんやろ? 」ってなって、食べ終わったあとに急いで店員さんに聞いたら大橋トリオさんで。家族全員が同時にハッとして出会うなんてたぶん最初で最後なので、鮮明に覚えていますね。今プロデュースしていただけているのも本当に不思議です。

――音楽以外で、今の自分たちを形作っている要素はありますか?

Mona:私、昔から絵を描くのも好きで、3歳の頃には1人で早起きして黙々と描いていたらしいんです。小学生のときは魔法学校のファンタジーみたいな話とか、学校の誰かが主人公の話とか、物語をノートに書いていたり。そうやって自分で思いついた世界を作るのは、Kitriの表現に通じているかもしれません。




Hina:私は読書が好きなので、それが歌詞に反映されているところがあると思います。あとは手話の勉強が今楽しくて、表現力がすごく付くというか。表情や手だけじゃなく身体全部を使うことの大切さは、ライブパフォーマンスを考えるヒントになっていますね。




――Kitriはおそろいの赤のワンピース姿など、ビジュアル面も印象的です。


Mona:バレエの『ドン・キホーテ』という物語に出てくる少女、キトリから取ったユニット名なんですよ。

Hina:キトリのクラシックバレエの衣装が赤と黒でそろえられていることが多いので、私たちもその色をモチーフにしています。新作に合わせてバージョンが違う洋服をまた作っていただいたんですけど、姉と私のとでは袖ひだのデザインが左右逆になっていて、2人が並んだときに映える鍵盤っぽいものにしてもらったんです。

Mona:私たちは少し謎めいた、すべてを明かさないような音楽性なのかなと思っていて、そういう点もアーティスト写真では意識していますね。



――クラシックピアノ出身だとインストゥルメンタルに向かいそうですけど、ピアノ連弾ヴォーカルユニットという形になりましたね。

Mona:連弾だけ、歌だけならいくらでも上手な方はいるので、誰もやっていなさそうな連弾と歌の発想が浮かびました。作曲家の意図を正しく再現するのがクラシックですが、自分で創作するのがやっぱり好きでしたし、培ってきたピアノの演奏やクラシックの影響を活かして、姉妹の似た声でハーモニーを伝えたら、面白い音楽が作れるんじゃないかと思って。

Hina:姉にユニットをやりたいと言われたときは「すごく面白い! やろうやろう」って感じでした。人と違うことをしてみたい気持ちも2人の中にあったから。

――Kitriの曲には、抑え切れない衝動みたいなものを感じる瞬間があります。

Mona:Kitriを始めるきっかけもそんな感じです。ピアノ専攻を目指して大学の受験勉強をしている頃、クラシックの曲を朝から晩まで練習する生活だったんですけど、受験のための音楽をやっている感覚になり、「私がやりたい音楽は本当にこれなのか? 」と悩んでしまって。そんなときに自分で歌詞を書いて、曲にして歌うことが心の支えになっていたんです。受験前だから家族にもバレないようにこっそり録音していたんですが、パソコンのごみ箱に捨てておいたのを母に見つかってしまい……。

Hina:親も使っていたパソコンだったんだよね。母は整理整頓が得意で、いつもきれいにしているから、何気なく見つけたんだと思います(笑)。

Mona:「受験生なのにごめんなさい」って謝ったら、むしろ「聴いたけど、すごくよかったよ」と褒めてくれて。そこで「私、これがやりたいのかも」って堂々と思えるようになりました。家族が初めてのリスナーなんです。

Hina:母は「Monaちゃんが面白い曲を作ったのよ! 」と喜んで、私にも聴かせてくれました。「リズム」という曲で、今まで聴いたことがない感じだったし、いっしょに興奮したのを覚えています。


――時代が移り変わるタイミングでメジャーデビューされましたが、今の世の中を見ていて何か感じることはありますか?

Mona:SNSの発達は大きいですよね。誰かの一言が好意的に広まることがある一方で、誰かを傷付けてしまうこともあったり。自由に発信できるから一見なんでも言いやすそうなんだけど、実際はお互いがお互いを気にして言いにくい社会なのかなとか。2nd EP『Secondo』の「目醒」にはそんな生きづらさみたいなものが反映されていると思います。

Hina:音楽の中では、「空気を読む」を超えて自分たちらしさを出したいですね。SNSの難しさとかもあるんですけど、面と向かって話せば分かち合えることが案外たくさんあるなと私は感じてもいます。

――新作EP『Secondo』はどんな仕上がりになりましたか?

Mona:まったく違う個性の曲が並んで、上手くまとまるか心配だったんですけど、自分たちが歌って演奏すればKitriの音楽になるんだなというのが再確認できました。

Hina:3曲目の「Dear」で初めて作詞に挑戦したのが、個人的には大変だったポイントですね。自分らしい歌詞が書けたので、姉の歌詞と合わせて楽しんでもらえたらと思います。

Mona:リード曲の「矛盾律」はインストでも説得力がある曲にしたくて、ピアノのアレンジから作っているんです。そこに歌を乗せて、未知の国のお祭りみたいなイメージで仕上げました。「見慣れたルール手放し」と歌っているとおり、先入観に囚われず、何か新しい視点を探したり視野を広げたりしたいという思いも込めています。




――今後やってみたいことを聞かせてください。

Mona:全国各地でライブがしたいです。海外も行ってみたいですね。私たちのスタイルがどんな反応をされるのかが気になる。Spotifyではアメリカや台湾、韓国の方とかも聴いてくださっているらしいので。

Hina:私は楽器のレパートリーを増やしたい。アレンジの勉強もしてみたいですね。

――海外に行けるとしたら、どんな場所に憧れがありますか?

Mona:どの国も嬉しいですけど、クラシックに影響を受けているので、いつかヨーロッパの古いお城とかで演奏してみたいです。




Kitriの2nd EP『Secondo』が7月24日にリリース!

Kitri『Secondo』
Release Date:2019年7月24日(水)
Label:日本コロムビア / BETTER DAYS
Price:1,800円
Cat.No.:COCB-54286


Tracklist:
1. 矛盾律
2. 目醒
3. Dear
4. 終わりのつづき
5. 矛盾律 -naked-

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