【博多ストーカー殺人】男が法廷で語ったこと 被告人質問の内容を詳しく②「愛していました」「別れるなんて納得できない」
FBS福岡放送ニュース / 2024年6月25日 20時37分
JR博多駅近くで元交際相手の女性をストーカー行為の末、包丁で何度も刺し殺害した罪に問われた男の裁判員裁判は検察が懲役30年を求刑して24日、結審しました。判決は28日に言い渡されます。男は法廷で何を語ったのか。これまでの被告人質問でのやりとりを詳しくお伝えする2回目です。
殺人とストーカー規制法違反などの罪に問われているのは、住居不定、無職の寺内進被告(32)です。
起訴状などによりますと、寺内被告は2023年1月16日午後6時すぎ、博多駅近くで、勤務先から帰宅中の福岡県那珂川市の当時38歳の会社員の女性を待ち伏せし、胸や背中、頭や首を刃渡りおよそ24センチの包丁で10数か所刺して殺害した罪に問われています。
18日午前10時、福岡地方裁判所で寺内被告の裁判員裁判の2日目の審理が始まりました。寺内被告は前日と同じ、紺色のジャージーに灰色のデニム姿、白いマスクをつけて法廷に現れました。
初めに裁判長が「寺内さん、体調は変わりありませんか」「きのうはくたびれたと思います。語尾が聞こえにくくなったので気をつけてください」と話しかけると寺内被告は「はい」と答えました。
この日は、前日の続きとなる弁護側の被告人質問から始まり、寺内被告は2023年1月16日、事件当日の行動について話し始めました。
弁護側「事件当日は仕事がありましたか。」
寺内被告「はい、ミーティング、午後8時から。」
弁護側「どこで。」
寺内被告「焼き肉屋さん、中洲です。」
弁護側「その前に起きて用意して、携帯代を払いに行きましたか。」
寺内被告「その前にパチンコ行きました、春吉の。」
事件当日、寺内被告はパチンコに行った後、滞納していたスマートフォンの料金を支払うため、博多駅に向かったと説明しました。
弁護側「携帯ショップはどこですか。」
寺内被告「博多駅のバスターミナルのビル。」
弁護側「何月分の支払い?」
寺内被告「2か月分前の11月のですね。」
弁護側「なぜ、この日に払いに行ったんですか。」
寺内被告「携帯が止まるから。毎月15日か16日に払っていた。」
弁護側「携帯ショップは自宅からどのくらいかかりますか。」
寺内被告「10分くらい。」
弁護側「大通りではなく、1本裏の道を通っていったのはなぜですか。」
寺内被告「会わないように、被害者と。」
弁護側「防犯カメラの映像によれば、被害者の会社の前を通っていますが、歩いた通りは会社側?」
寺内被告「(通りを挟んで)反対側です。」
弁護側「被害者の会社を意識していましたか。」
寺内被告「してないです。」
弁護側「携帯ショップには行きましたか。」
寺内被告「行ってないです。」
弁護側「なぜ。」
寺内被告「Wi-Fiが飛んでるので、(料金は)来月払おうと。」
弁護側「検察はあなたのスマートフォンのヘルスケアアプリで、午後6時3分から午後6時6分は歩数がカウントされていないと言っていましたが、歩いていない記憶はありますか。」
寺内被告「はあ。」
弁護側「何をしていましたか。」
寺内被告「タバコを吸ってた。」
弁護側「何か考えていましたか。」
寺内被告「特に何も。携帯料金を払おうか払わんか考えてました。」
寺内被告が立ち止まっていたのは女性が働く会社のすぐそばでした。女性が午後6時ごろ仕事を終えて博多駅に向かって歩いていたところ、寺内被告が声をかけました。
弁護側「被害者と会ってどうしましたか。」
寺内被告「傘当てて、何してんねんと言いました。」
弁護側「被害者と会うのを予測していた?」
寺内被告「してないです。」
弁護側「待ち伏せしましたか。」
寺内被告「してない。」
一方、検察の被告人質問では、女性への当時の感情が語られました。
検察「あなたが被害者と交際し始めたのは、令和4(2022)年4月ごろですか。」
寺内被告「はい。」
検察「被害者のことは好きでしたか。」
寺内被告「そうですね。」
検察「どんなところが好きでしたか。」
寺内被告「一緒におって、同じタイミングで笑う。気が合いました。」
検察「あなたにとって、被害者はどんなふうに違う女性でしたか。」
寺内被告:(短い沈黙)「一緒にいて変えてくれた人ですかね。」
検察「自分自身を?」
寺内被告「はい。」
検察「結婚は考えていましたか。」
寺内被告「考えていました。」
検察「被害者は優しかったですか。」
寺内被告「だと思います。」
検察「理解してくれると思いましたか。」
寺内被告「はい。」
検察「交際中、被害者をどう位置づけていましたか。」
寺内被告「愛していましたね。」
検察「愛してしまった女性を殺害したことをどう思っていますか。」
寺内被告「ショックと後悔と申し訳ないっていう気持ちです。」
検察「事件後、いろいろ考えてどうすれば良かったと思いますか。」
寺内被告「正直、あの時、包丁を持って行かんかったらとか、包丁持たんかったらよかったなと。」
寺内被告はこの裁判で初めて後悔の言葉を口にしました。女性が初めて寺内被告について警察に相談した2022年10月21日のことも語られました。
検察「お互いにGPSのアプリをインストールして、どこにいるか分かるようにしていましたか。」
寺内被告「はい。」
検察「アンインストールされていたことはありますか。」
寺内被告「あります。」
検察「ストーカーと言われた10月22日以降ですか。」
寺内被告「はい。」
検察「携帯を取り上げて、被害者が警察に相談しにきたと捜査記録にありました。なんで取り上げたんですか。」
寺内被告「浮気してるんじゃないかって。携帯を見せてって。」
検察「浮気をしていると携帯を取り上げたんですか。」
寺内被告「そうですね。」
検察「携帯を取り上げて、被害者はどんな反応でしたか。」
寺内被告「携帯を返してくださいと、でかい声で言われた。」
検察「どういった場所で携帯を取り上げましたか。」
寺内被告「博多駅、構内です。」
検察「被害者とその後、どうしましたか。」
寺内被告「(被害者が)交番に行くと言って、行ってこいやと。」
検察「あなた自身は交番に行きましたか。」
寺内被告「行ってはないです。」
当時の一方的な言動を淡々と語りました。寺内被告は次の日、女性にスマートフォンを返しましたが、その時、別れ話を切り出されたといいます。
検察「あなたとの関係は無理だからと言われましたか。」
寺内被告「言ってたと思う。」
検察「被害者から無理だから、関係続けられないと言われて仕方ないと思ったか、それとも納得できないと思いましたか。」
寺内被告「別れるなんて納得できないというのはあったと思う。」
検察「(2022年)10月24日に警告を受けた時、ストーカー行為だと納得しましたか。」
寺内被告「あの時は思ってなかったと思う。」
検察「その時はということですか。今現在は?」
寺内被告:(沈黙)
検察「当時、あなたはストーカー行為がどういったことだと思っていましたか。」
寺内被告「ついて行ったり、無理矢理しゃべったり、向こうの嫌なことをしゃべったり。」
検察「被害者にとって嫌なことをしていると考えていましたか。」
寺内被告:(沈黙)
検察「被害者が警察に相談したことについて、あなた自身、被害者をどう思いましたか。」
寺内被告「むかついていました。」
検察「復縁したいという気持ちはありましたか。」
寺内被告「最初言われた時はしたいと思っていた。」
検察「10月24日に警告受けて(交際は)終わったけど。」
寺内被告「そうなんすかね。」
検察「前と同じような関係に戻りたいという気持ちはありましたか。」
寺内被告「あったと思います。」
ここで30分ほど休廷し、午前11時20分から検察による被告人質問が再開されました。寺内被告は10月24日に警察から警告を受け、被害者に近づかないようにと言われていましたが、11月10日に被害者の勤務先に行ったことが分かっています。
検察「(11月10日に)被害者に何で自分がストーカーなんだと言いましたか。」
寺内被告「はい、言ったと思う。」
検察「ストーカーの加害者とされた理由や、被害者の気持ちを知りたかったんですか。」
寺内被告「はい。」
検察「会って話した時に復縁したいと話しましたか。」
寺内被告「覚えてないです。」
検察「この当時も復縁したい気持ちはありましたか。」
寺内被告「あったと思いますね。」
検察「11月26日に禁止命令を受けましたが、あなたは自分が被害者にしてきたことがストーカー行為に当たると思っていましたか。」
寺内被告「そのときは思っていなかった、納得できてないと思います。」
当時していた行為について今はどう思うか聞かれると、言葉に詰まる場面が多く見られました。
この日の午後は検察が証拠調べを行い、被害者が少なくとも17か所包丁で刺され、体を貫通する傷があったことが明らかにされたほか、寺内被告が包丁を振り下ろす様子を遠目から捉えたものを含む、現場周辺の防犯カメラの映像4本も公開されました。
(次回に続きます)
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