特集「キャッチ」学校ではない居場所を見つけた子どもたち 動画で伝えたかったこと 福岡
FBS福岡放送ニュース / 2024年11月23日 7時58分
特集「キャッチ」です。こちらのグラフは、文部科学省が調査した小・中学生の不登校の状況です。増加を続け、昨年度は過去最多の35万人近くに上っています。福岡県でも同じく、過去最多の1万8000人余りとなっています。
こうした中、自治体と民間の協力で、子どもたちが通える場所の選択肢も増えています。学校ではない「居場所」を見つけた子どもたちが、同じように苦しんでいる子に伝えたいメッセージがあります。
■OHANA 代表・只松佑海さん
「自分が生けたい花をいくつか選んで。」
■子ども
「咲いた。」
■只松さん
「かわいい。」
この日の活動はフラワーアレンジメントです。子どもたちは、思うままに生けていきます。
■只松さん
「完成。シンプルでいい。」
■子ども
「(誰にプレゼント?)お母さん。」
北九州市八幡西区の放課後等デイサービス「OHANA」には、小学2年生から中学2年生までの15人が通っています。
マット運動や、もちろん勉強もしています。バランスボールに乗っていても、うまく話せなくても大丈夫です。ここは集団に合わせることが苦手だったり、ストレスやプレッシャーで学校に行けなくなったりした子どもたちの“学びの場”です。
■きずなさん(中1)
「(学校は)楽しかったけど、きつい時もあったかなって。で、不登校になったって感じですね。(OHANAは)楽しく勉強できる場所。」
代表を務める只松佑海さん(46)は、3人の子どもを育てる母親です。不登校の親子と地域をつなぐ活動を始めたのは7年前、きっかけは自身の子どもたちでした。
■只松さん
「(二男が)小学2年生の時に、夏休みが終わって玄関でランドセルを背負ったままボロボロ泣いて、『どうした?』って聞いたら『学校行けない』と。もうその時に『行かんでいいよ』って言ったんですよね。」
3年前には「子どもたちが安心していられる場所」をと、フリースクールを開きます。さらに、ことし8月、支援の必要な子も受け入れられるように、保育士などが常駐する「放課後等デイサービス」に切り替えました。
■中学校教諭
「テストです。」
■只松さん
「ありがとうございます。」
届けられたのは、北九州市内の中学校の中間テストです。文部科学省は「不登校児」の勉強機会の確保として、民間の施設でも自立を助けるうえで適切と判断されれば「出席扱い」とすることを推奨しています。
「OHANA」では、学校の協力を得て、初めて「中間テスト」を実施しました。決して強制ではなく、子どもたちが自ら受けたいと言ったからです。
■きずなさん(中1)
「(教科は)英語。(手応えは)微妙。」
中学1年生のゆうたさんの将来の夢は、動画編集者です。この日、ある提案をしました。北九州市が主催する国際映画祭のショートムービーコンテストに参加しようというのです。
■ゆうたさん(中1)
「『こういうテーマがいいです』ってありますか。せっかくやけ『OHANA』のことも知ってもらいたいから、学校でいろいろあって、学校行かなくなって、不登校になって、そこから『OHANA』に行くことになって。」
びっくりしたのか、ほかの子どもたちの反応は今ひとつです。
動画のテーマは「不登校」で、ゆうたさん自身も小学5年生のころから学校に行けなくなりました。
■ゆうたさん(中1)
「行けなかった時期の記憶がない。嫌なこと全部消してるから。」
部屋から出られない日もあったといいます。
■ゆうたさんの母・登志子さん
「お友達とか学校の流れについていけないところがあって、怒られたりする機会も多かったので、自分はどうせダメな人間だから『生きていてもつまんない』みたいなことをよく言っていました。『どうして僕なんか産んだの、意味ないでしょう』と言われるとね、親としてはね。」
苦しんでいる我が子に、母も同じ痛みを感じていました。
「OHANA」は、定期的に保護者の集まりを開いています。
■保護者
「(私が)『何としても学校に行くのが正しい』みたいなのもあって、引きずってお互いけんかしながら(学校に)連れて行ってました。でも違うよな。」
「(親も)何で(学校に)行かないの、みたいな態度だから、やっぱり(子どもは)自分を責め出すんですよね。自分の頭をボコボコたたいて。部屋の隅でたたいたりとかして。 泣けてくるけど。」
サポートが必要なのは子どもだけではありません。保護者の気持ちも一緒に分かち合います。
■ゆうたさん(中1)
「撮るよ、今から。」
ショートムービーの撮影が始まりました。最初は消極的だった子どもたちも。
■子どもたち
「こっち、こっち。」
撮影・編集はスマートフォンで行います。
■只松さん
「この効果音は?」
■子ども
「もう、こんなん嫌だー。」
学校になじめず、行き場を見失った自分たちをネコの姿で表現した3分間のショートムービーは、さまよう中で受け入れてくれる友達と出会うというものです。
■ナレーション
「今、学校に行きづらい子どもたちが増えています。不登校になっても、いろいろな学びの場や居場所があって、僕たちの成長や可能性を開いていく場所があることを知ってください。」
■子どもたち
「みんな学校行ってないの?」
「僕たちみんな学校に行ってないニャン。」
「僕の夢はお花屋さんだニャン。」
「僕の夢は漁師ニャンだ。」
「僕の夢はまだないニャン。」
「そっか。僕はまだ分かんないニャン。でも、学校に行かなくても、この先真っ暗になるわけじゃないんだニャン。」
等身大の自分たちを表現したこの作品は、小中学生の部門で最優秀賞に輝きました。
■ゆうたさん(中1)
「みんなで一致団結して物を作ったというのは、すごい経験になると思います。学校に行かなくなったところで終わるわけじゃないから、自分のしたいことを精いっぱいしたらいいかなと思います。」
■只松さん
「学校に行かないことを選べたっていうか、自分の命を守っていることだと思うので、一歩踏み出してここに来て、自分らしくあることで、やりたいことが見つかったり、まだ見つかっていなくても、この瞬間楽しく過ごせているということが、きっと宝になっていると思うんです。」
放課後等デイサービス「OHANA」のOHANAとは、ハワイの言葉で「家族」という意味です。ここは、家族のようにありのままを受け入れてくれる、そんな場所です。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年11月20日午後5時すぎ放送
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