夢のマイホームが悪夢の“負”動産に! 離婚時の財産分与でもめる家
ファイナンシャルフィールド / 2021年3月9日 11時10分
![夢のマイホームが悪夢の“負”動産に! 離婚時の財産分与でもめる家](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_100261_0-small.jpg)
夫婦問題ではよくあることですが、夢のマイホームを手に入れたとたんに夫婦問題が表面化し、離婚をすることになるカップルが実に多いのです。ついこの間まで、自宅の計画・家具選び・引っ越し作業に事務手続きで大変だったのに。ひと段落してほっとしたのもつかの間、今度は夫婦問題の悩みが始まります。
忙しさも、楽しかった数年の家計の苦労も、泡のように消えてしまいます。この「負動産」処分のハードルはとても高く、ひと筋縄ではいかないことがほとんどなのです。
離婚後自宅はどうするのか?
相続による財産分与でも、物理的に分けることがしづらい不動産でもめることは多く、離婚も同様のことがいえます。理想的なのは、売却をしてお金を分けること。しかし、そう簡単にはいかないので悩む方も多いのです。その理由の1つに、子どもの通学問題があります。自宅を購入する際の決め手に、「子どもの通学に便利な場所」を挙げる親御さんはとても多いのですが、離婚時にはそれがネックになってしまいます。
また、思春期の子どもは、ただでさえ離婚により、別居親と離ればなれに暮らさないといけないのですから「せめて友だちとは離ればなれにさせたくない」と願うのが親心でしょう。そうすると必然的に母子が自宅に、夫は小さな部屋へ引っ越すこととなります。
厚生労働省の人口動態統計によると、2019年度離婚し、20歳未満の子どものいるカップルにおいて、母親が親権をもつケースは84%でした。親権と同居は別問題ですが、母親と一緒に暮らすケースはこの数字同様に考えて良いかと思います。
夫のむなしさはエスカレートするばかり
小さな子どもがいる場合、すぐに離婚とはならないケースも多いことでしょう。別居時はなおさら夫が出ていくケースが多くなります。しかし、小さな子どもがいるイコール、ローンをまだ支払っているもの。そうすると「ローン支払い+夫の家賃」で二重支出となってしまいます。
そもそも、給与の低い人にはできない方法なので、この「二重支払い」ができること自体、ある程度の世帯収入がある家庭になるのですが、支払いができるといっても「無駄」な支出であることは変わりません。
しかし、離婚をすることは簡単ではなく、中にはこの別居生活の上にあぐらをかいてしまう妻もいます。うるさい夫はいない、夫がいないスペースでより広々と家を使うことはできる、生活費は支払ってもらえる。一石二鳥以上のベネフィットを感じている場合もあるのです。
そうすると、たまったものでないのは夫でしょう。いくら高収入といえども、大きな部屋に住めるほどの家賃も払えるのは、ごくわずかな人。多くの方は、大学生の時に住んでいたワンルーム程度のマンションかアパート暮らしを余儀なくされています。
中には、法人の代表で23区内の一等地に住んでいた夫が自宅を出て、都外のアパートに暮らしているケースもあります。ストレスフルに働き、近所の定食屋かお弁当を片手に帰宅。食後、そして風呂を沸かすという毎日。翌日も簡単な食事で済ませた生活をしているのです。何より、かわいい子どもに簡単に会えないのですから、頑張る気力も湧きません。働き盛りの男性にとっては「むなしい」気持ちに歯止めはかかりません。
金銭的に売却できなことも
夫婦の意志が「売却」でも売れないこともあります。それは「オーバーローン」のケースです。ここでのオーバーローンとは「売却金額<ローン残高」のこと。要は、売却しても借金が残ってしまうケースとなります。私も年間2〜3ケースは、不動産業者と一緒に離婚不動産の対応をさせていただくのですが、容易ではありません。
このケースにおいては、差額(ローン残高-売却金額)を、夫婦の資産でまかなえば良いのですが、難しいことです。まず、自宅購入後即離婚になった場合、すでに預貯金は、不動産購入の頭金や諸経費、家具の購入費に充ててしまっています。
次にお願いするのは親や家族親戚です。しかし、老後資金不足が問題になっている今、援助を簡単にできる人も少ないと思います。この対処方法はいくつかあるのですが、個別事情が多様化しているので、今回は割愛します。
まずは専門家に相談をするのが無難です。大手の不動産業者では、なかなか対応してくれないので、根気強く、信用できるサポーターをみつけてください。
ペアローンの大きな落とし穴
それにしても、そう簡単に自宅を手放してまで離婚をしてしまう背景とは、どこにあるのでしょうか? そこには共働きというスタイルがあるのではないでしょうか。ペアローンで1つの物件に対して、夫婦それぞれが住宅ローンを組むため、融資枠が増えます。それにより、予算の大きな物件を購入することができるのです。
自宅を購入するまでに、協力や話し合い、苦労が少ないため、一度亀裂の入った夫婦問題を修復する努力をすることもなく、夫婦関係にピリオドを打ってしまう。共同で「債務」を負うほどの、信頼関係がなかったにも関わらず、夫婦というだけでペアローンを組んでしまう恐ろしさが潜んでいます。
言い過ぎかもしれませんが、筆者はコロナ離婚も似ていると思います。2020年初頭までは、夫婦といえども共働きで、夜夕食時間帯と休日のみの関係が、四六時中密になることで負担となり、ヒビが入った夫婦も数多くいらっしゃいました。
共働きは、依存関係は薄いのですが、協力したり頼ったりすることも少なく、やや利己的な関係になっているのかもしれません。本来夫婦は「密」な関係で良いはずなのに。
離婚は事前に防げるものではありません。しかし、大きな買い物をし、別居や離婚と同時に自宅を失う前に、「この人と一緒に買っても大丈夫なのか」を厳しく見つめ、考えてみていただきたいと思います。
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
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