老後の資産管理、銀行に相談する前に行う2つのこと
ファイナンシャルフィールド / 2021年3月16日 9時10分
高齢化が進む中、老後に向けた資産形成とともに課題とされているのは、高齢者の資産管理です。これまでの相続対策に加えて重要視されているのは、老後資金の運用と認知症対策です。コロナ禍で金融機関のオンライン相談の件数が延びているそうです。
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シニアにとって、お金に関する悩みごとは大きく3つあります。
(1)相続が争族にならないようにしたい
(2)寿命が延びているので老後資金が不足しないようにしたい
(3)認知症になった時に経済的に困らないようにしたい
これまで主に、(1)と(2)に重点を置いた終活が行われてきました。
(参考:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)(※1)」
ここで高齢者世帯(世帯主が60歳以上)の貯蓄現在高を見ると、2500万円以上の世帯が全体の約3分の1を占めています。この年代は、持ち家率が高いという特徴もあります。
「相続財産の中で不動産の占める割合が多いと争族になりやすい」ということで、相続対策として遺言書の作成が推奨されています。法務局で自筆遺言書の保管ができるようになったことも話題になりました。誰に何を相続させるかを考える時、やはり法定相続分が基本です。
とはいえ相続財産を均等に分けることは難しいので、“遺言書は「自分の死後も家族仲良く」のメッセージの役割を果たすもの”ともいわれています。
昨今は認知症に対する不安も高まり、認知症保険を取り扱う保険会社も増えています。厚生労働省老健局「認知症の人の将来推計について」(※2)によると、認知症の高齢者数は2025年には675~730万人になると推計されています。これは、やがて65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になる計算です。
認知症になると介護だけでなく、お金の管理も心配です。認知症になり「意思能力がない」と判断されると、自分の資産でありながら、自宅の売却もできなくなってしまいます。売却以外にも自宅を使った資金調達の方法として、リバースモーゲージやリースバックなどがありますが、契約することが困難ですから、それらの利用もできないことになります。
将来、老後資金が不足することも考えられます。「もし認知症になっていても自宅不動産を活用できるように」と思っている人は、家族信託の利用を検討されています。
(1)もし介護が必要になったらどうするか
家族信託の案件を多く取り扱っている司法書士の方から、興味深いお話を聞きました。家族信託を考えている方に状況をヒアリングする時、最初の質問は「もし介護が必要になったら、どうされますか?」だそうです。
ピンピンコロリが理想だといわれていますが、誰しもが徐々に衰えていくものです。「もしも介護が必要になったら」は“なるべく考えたくないこと”ですが、ストレートに質問されると考えざるを得ません。
「できるかぎり自宅で過ごしたい?」「どの段階で介護施設に入居する?」「介護が必要になった時に頼るのは誰?」等々、いろいろなシチュエーションが頭に浮かびます。“自分がどうしたいのか”も難しい問題ですが、“家族はその希望をどう思うか”はそれ以上にすり合わせが必要です。
「どのような介護を希望するか」は、老後資金の計画を大きく左右します。自宅で長く過ごすには、バリアフリーを充実させるなどのリフォームが必要かもしれません。介護施設はサービスによって入居一時金や月額料金に大きな違いがあります。
また「誰を頼りにするか」は、均等ではない相続財産の分け方にも大きく影響します。
(2)資産の棚卸をして全体を把握する
金融機関に老後資金の相談にいく場合、相談前にしておいてほしいことが2つあります。まずは、先に書いたように「介護が必要になった時どうするのか」について考えておくことです。起きるのは遠い将来かもしれませんが、ライフプランには欠かせないことです。
2つ目は、不動産なども含めてわが家の資産の棚卸をすることです。全体を知ることで、資産運用する必要度やリスク許容度についても確認ができます。
信託銀行などは、ワンストップでいろいろなサービスが受けられますので便利です。担当者から各種サービスの詳細の説明を受けることも、参考にすべき点は多々あると思います。ですが情報があり過ぎると、自分が何を金融機関に求めているのかが錯綜することもあります。目的をハッキリさせてから相談することで、より満足度が上がると思います。やはり事前の準備は必要だと思います。
(※1)総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯/Ⅲ 世帯属性別にみた貯蓄・負債の状況)
(※2)厚生労働省老健局「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
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