相続の基本 「相続放棄」、「相続欠格」、「相続廃除」
ファイナンシャルフィールド / 2021年3月24日 11時40分
相続は往々にして、予期しない時ときに突然に訪れます。
つまり、十分に準備をしていないケースや相続に関する正しい知識がない場合も多くあります。身近に信頼して相談できる方や税理士などの専門家がいる場合には、是非とも活用すべきでしょう。
ここでは、一見すると似たような用語に見える「相続放棄」、「相続欠格」、「相続廃除」という相続に関する3つの用語の違いを中心に確認してみたいと思います。
相続放棄とは?
相続放棄とは、各相続人が「自らの意思」によって、全ての財産の相続を承継しないことをいいます。つまり、本来は被相続人の財産を相続できるはずの相続人が、自分の意思で「私は一切の相続を放棄します」と宣言することです。
相続放棄をする場合には、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行います。そして、申し立てが受理されると、その方は最初から相続人でなかったものと見なされます。
また、全ての財産には現預金、有価証券、不動産などのプラス財産だけではなく、被相続人の借金などの負債であるマイナス財産も含まれます。そのため、相続放棄を選択する場合は、プラス財産よりマイナス財産があるようなケースが多いのも事実です。
相続欠格とは?
相続欠格とは、相続人が相続を自らに有利になるように違法行為を行った場合、「自動的に相続人である地位が剥奪される」ことをいいます。
違法行為として例えば、被相続人の生命を奪う行為、遺言書を脅迫により自分に有利となるよう作成させる行為、遺言書を破棄・隠匿する行為などが挙げられます。つまり、違法行為に対して、法律に基づき自動的に相続権を剥奪する制度です。
相続廃除とは?
相続廃除とは、相続人から虐待や侮辱行為を受けた「被相続人」が、家庭裁判所に申し立てを行うことで相続人から相続権を剥奪することです。つまり、被相続人の意思と申し立てにより、特定の相続人の相続権が剥奪されることになります。なお、相続廃除は遺言によって行うことも可能です。
上記の点から3つの用語の違いは、相続しない、できないという意思決定を誰が行うかが大きなキーポイントとなります。つまり、「自らの意思=相続放棄」、「法律で自動的に=相続欠格」、「被相続人が剥奪=相続廃除」となります。
代襲相続では?
代襲相続とは被相続人が死亡したとき、本来相続人となるはずだった人が既に死亡していた場合などに、その子や孫が代わって相続することをいいます。代襲相続において3つの用語は、その取り扱いが異なる点に注意しましょう。
「相続欠格」と「相続廃除」は、法律や被相続人の意思によって、相続人が相続権を剥奪されることになります。このとき、相続人は本人の意思とは関係ない事情によって相続権が剥奪されることになります。
そのため取り扱いとしては、相続人が死亡した場合と同様に扱われます。つまり、代襲相続が発生した場合には、その相続人の子や孫が代襲相続人となります。
一方で「相続放棄」は、相続人自らの意思によって相続しないことを宣言することになるため、代襲相続は発生しません。最初から、その相続人が存在しなかったものとして取り扱われます。
相続税の計算への影響は?
相続税の計算では、3つの違いによって「法定相続人の数」に影響を及ぼします。「法定相続人の数」が相続税の計算上で使われるのは以下の3つです。
(1)相続税の基礎控除額 3000万円+(600万円×法定相続人の数)
(2)死亡保険金の非課税枠 500万円×法定相続人の数
(3)死亡退職金の非課税枠 500万円×法定相続人の数
上記3つの算式において、前述のとおり、「相続欠格」と「相続廃除」は死亡した場合と同様に扱われるため、「法定相続人の数」にカウントされません。その一方、「相続放棄」の場合は「法定相続人の数」にカウントされます。
つまり、相続人の意思によって基礎控除額や非課税枠の金額などが大きく変動することは、課税の公平性の見地から望ましくないという考えがあります。
まとめ
今回説明した「相続放棄」、「相続欠格」、「相続廃除」の3つの違いは、相続しない、できないという意思決定を誰が行うかという点です。それによって、相続税の計算上についてもそれぞれの違いがあり、税額にも影響を及ぼすことになります。
それぞれのケースでの取り扱いについて、しっかりと確認しておきましょう。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
配偶者への不動産相続が“非課税”になる〈特例〉とは?…「相続税」の基本的な節税テクニック5選【相続の専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月14日 11時15分
-
夫が亡くなり、相続の手続きを進めています。配偶者だと相続税がかからないと聞いたのですが、本当ですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月11日 5時40分
-
長年疎遠でも「元配偶者との子供」の相続権は消えない…「遺産を渡したくない」ときの有効な対策と遺言書に潜む“意外な落とし穴”
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月9日 10時45分
-
相続財産が少額でも注意…相続争いに発展する「3つの典型トラブル」【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月2日 11時45分
-
義理の父の遺品整理をしていたところ、大量の「500円玉」貯金が見つかりました。所有権は誰にあるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年8月25日 3時20分
ランキング
-
1効果的な腸活には「野菜よりお米」が欠かせない 日本人の遺伝子はご飯を食べるのに適している
東洋経済オンライン / 2024年9月21日 19時0分
-
2朝コレを飲んでブランチをとると「長寿遺伝子」が活性化する…簡単にできる「プチ断食」のやり方
プレジデントオンライン / 2024年9月21日 15時15分
-
3ペーパードライバーの “迷惑運転行為”に、走行距離30万km超のゴールド免許所持者が怒りの告発
日刊SPA! / 2024年9月15日 15時52分
-
4「赤ちゃん」の場面どうすんの? 実写化に賛否入り混じる話題作たち
マグミクス / 2024年9月21日 20時25分
-
5「絶対に無理」「何か菌がついているのでは」 学校や病院の「共用スリッパ」にSNSで“拒否反応”続出
オトナンサー / 2024年9月21日 22時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください