住宅ローンがある家を賃貸に出せる? 意外と知らない住宅ローンの知識
ファイナンシャルフィールド / 2021年3月28日 11時10分
住宅を買うときに、将来設計を考えることは非常に重要です。特に考えておきたいのが、転勤について。住宅ローンが残る家を空けなければならないとなると、自分にかかる負担も大きくなります。
転勤になったときに賃貸に出せばよい、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、住宅ローンの残る家を賃貸に出すのは可能なのでしょうか? 今回は、住宅ローンを借りたままで賃貸に出せるのかどうか解説します。
住宅ローンが残る家を賃貸に出せるのか?
住宅ローンを組んで自宅を手に入れても、転勤やその他の環境の変化で自宅を離れなければならないケースがあります。
ローンを払い続けている家をそのままにしておくのはもったいない、と賃貸に出すことを考えるかもしれません。しかし住宅ローンの残る家を賃貸に出して、家賃を返済に充てることは可能なのでしょうか? 詳しく解説していきます。
基本的には住宅ローンの残る家は賃貸に出せない
基本的には、住宅ローンの残っている自宅を賃貸に出すことはできません。住宅ローンの契約書には「資金使途」という条項があり、その中で「契約者の居住用の不動産の取得資金に用いる」という内容が書いてあることがほとんどです。このため、賃貸に出す場合には居住用の不動産ではなくなります。このような理由から住宅ローンを利用する上で問題となることがあります。
住宅ローンの契約に違反している状態になると、期限の利益を喪失したとして銀行側から残債を一括で返済することを求められる場合があります。転勤が決まったから、と賃貸に出す前に、まずは自分の住宅ローンの契約書を確認してみましょう。
賃貸に出していると、住宅ローン控除を受けることができない
住宅ローンが残る家を賃貸に出して自分が住んでいない場合には、大きなデメリットがあります。そのデメリットとは、住宅ローン控除の適用を受けることができない、ということです。
住宅ローン控除は、自分の居住用の家を取得した場合に一定の要件を満たす、ということが適用の条件になっています。つまり、住宅ローン控除は申請者自身が控除を受けようとする家に住んでいることが大前提の控除なのです。
自分が住んでいない家の場合は、賃貸に出していなくても控除を受けることはできません。住宅ローン控除は10年から15年もの間、住宅ローンの年末残高の0.4%から1%の金額を所得税から控除してもらえるものです。例えば年末残高が2000万円だった場合は、所得税から20万円程度控除されます。
この控除が受けられない、というのは金額的に非常に大きなものです。もちろん自宅に戻ってきた時点でまだ控除期間が終わっていない場合は、控除を再開することができます。しかし居住していなかった期間の控除については、再度受けることはできず、さかのぼって受けることもできません。
転勤などで住宅ローンの残る家から離れなくてはいけなくなったら
住宅ローンの残る家からどうしても離れなければならなくなったとき、いきなり賃貸に出すのは契約上からも得策ではありません。住宅ローン控除を受けられないのも、金銭的に非常に大きな問題です。
いきなり賃貸に出す前にまずはどうしたらいいのか、取れる対策を考えるべきです。自宅を離れることになったときにどんな対策が取れるのか、解説していきます。
対策1:家族がいる場合は単身赴任を検討する
住宅ローンの契約では、契約者またはその家族が住んでいることが条件になっていることが多いのですが、単身赴任でも家族が住んでいるなら、契約上の問題はありません。
ただし、生活拠点が2つになるために、自分の勤める会社の福利厚生や制度次第では家計への負担が増える可能性があります。会社によっては単身赴任手当などがない、というところもあるかもしれませんので、会社の制度もよく確認しておきましょう。
対策2:不動産担保ローンへの借り換えを検討する
住宅ローンから不動産担保ローンへ借り換えをする、というのも対策のひとつです。すでに説明したように、住宅ローンは契約者、またはその家族は居住することが条件となります。そのため、自宅を離れる場合は借り続けることが難しくなります。
そこで住宅ローンではなく「不動産担保ローン」への借り換えをします。不動産担保ローンとは、文字通り自己の不動産を担保として借り入れるローンで、居住の有無は基本的に問われません。
不動産担保ローンには、デメリットもいくつかあります。まず、金利が住宅ローンよりも高くなることです。住宅ローンは、使途が自分の住む家のローンに限定されているため、非常に低い金利で貸し出しているのに対し、不動産担保ローンは使途は基本的に自由ですが、金利が高くなる傾向があります。
また住宅ローンは最長35年の借り入れですが、不動産担保ローンはそれより短くなる可能性があります。金融機関によっては、借入期間が最長20年となっている不動産担保ローンもあります。
金利が高くなり、かつ返済期間も短くなることから、毎月支払う返済額は住宅ローンのときよりも高くなるのです。ただし不動産担保ローンであれば、ローンが残っていても賃貸に出せます。
賃貸に出して借り手がつけば、家賃収入で返済額を相殺できる可能性が出てきまし、もし相殺できなかったとしても、負担は小さくて済む可能性も高くなります。気をつけなければいけないのは、家賃設定です。利益を出そうとして相場に合わない高い家賃をつけてしまうと、借り手がつかずに負担が大きくなってしまった、ということもあり得ます。
不動産担保ローンに借り換えて賃貸に出すなら、不動産会社に相談するなどして相場をしっかり把握しておいてください。
対策:借り入れしている金融機関に相談する
自分が住宅ローンを借りている金融機関に相談するのもとても大事なことです。金融機関によって対応は異なりますが、事情によっては賃貸に出すことを認めてくれることもあります。
金融機関としてはできるだけ長く借りてもらって、金利を払ってもらう方がよいのです。残債を一括返済されてしまったら、その時点でそれ以降の利益が出なくなることが確定してしまい、利益を失うことになります。そういった意味でも、相談する価値はあるといえるでしょう。
不動産担保ローンに借り換えるには、審査をやり直す必要があり、手間もかかってしまいます。そのため、まずは金融機関に相談をして、事情を素直に話してみましょう。
金融機関に相談してから対応を決めよう
住宅ローンの残る家を賃貸に出すのは、契約書上は認められていないことがほとんどで、無断で行うことは極めてリスクの高い行為です。もしも明るみに出たら、住宅ローンの残債を一括返済しなければならない、という可能性すらあります。
そのため、まずは借り入れしている金融機関に相談をすることが大切です。本来は契約上認められていない行為ではありますが、賃貸に出すことを認めてくれることもあります。その後の対策については、金融機関からの回答によって検討しましょう。
もしも住宅ローンを借りたまま賃貸に出せるのであれば出して、無理なようであれば単身赴任や借り換えなどを検討してみてください。まずは相談、これが第一です。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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