年金受給年齢の変遷 昔は何歳から受給できた?
ファイナンシャルフィールド / 2021年3月29日 23時0分
金融庁の「老後2000万円問題」や少子高齢化、長寿命化など、老後資金に対し関心や不安を持たれる方は少なくありません。老後資金の中心となる公的年金制度については、その在り方について議論されることもあります。
現在、公的年金は原則として65歳から受給できますが、昔は何歳から受給できたのでしょうか。そもそも、公的年金制度はいつから存在しているのでしょうか。
年金制度の歴史
総務省「第1回年金記録問題検証委員会提出資料(平成19年6月14日)」および厚生労働省「公的年金制度の歩みとこれまでの主な制度改正」によると、年金制度の歴史は、以下の5段階に分けることができます。
昭和16年 「労働者年金保険法」制定
昭和19年 「厚生年金保険法」と改称
昭和29年 「厚生年金保険法」全面改正
昭和33年 「国家公務員共済組合法」制定
昭和34年 「国民年金法」制定
昭和36年 「拠出制国民年金」発足、「国民皆年金」体制スタート
昭和37年 「地方公務員共済組合法」制定
昭和40年 「1万円年金」
昭和44年 「2万円年金」
昭和48年 「5万円年金」
昭和51年 「9万円年金」
昭和60年 基礎年金の導入、給付水準の適正化、女性の年金権の確立など
平成元年 完全自動物価スライド制の導入、学生の国民年金制度への強制加入など
平成6年 厚生年金の定額部分の支給開始年齢引き上げ、雇用保険給付との調整など
平成8年 旧公共企業体3共済(JR、JT、NTT)の厚生年金への統合
平成12年 報酬比例部分の支給開始年齢の引き上げ、総報酬制の導入など
平成13年 農林共済の厚生年金への統合
平成16年 保険料水準固定方式の導入、マクロ経済スライドの導入など
年金の受給開始年齢の変遷
昭和16年に制定された「労働者年金保険法」により、初めて年金というものができました。このとき、被保険者は男性のみであり、受給開始年齢は55歳でした。
昭和19年に名称が厚生年金保険法と改称され、被保険者の範囲が女性へと拡大されています。このとき、受給開始年齢は男女ともに55歳でした。
昭和29年に厚生年金保険法が全面改正され、男性の受給開始年齢が55歳から60歳に変更されました。とはいえ、いちどきに変更されたのではなく、4年に1歳ずつ、昭和32年度から16年かけて引き上げられました。女性の受給開始年齢は引き上げられず55歳のままでした。
このとき、「定額部分+報酬比例部分」という仕組みも採用されました。
昭和36年には国民年金法が施行され、国民皆年金体制が整いました。国民年金の受給開始年齢は65歳であり、現在まで変更はありません。
昭和60年の改正で、男性の受給開始年齢は60歳から65歳に、女性の受給開始年齢は55歳から60歳に変更されました。ただし、男性については60歳から65歳まで特別支給の老齢厚生年金を受給できるものであり、女性については3年に1歳ずつ、昭和62年度から12年かけて引き上げられるというものでした。
平成6年の改正では、老齢厚生年金の定額部分についての引き上げが行われています。受給開始年齢は、男女ともに60歳から65歳に引き上げられましたが、男性の場合は3年に1歳ずつ、平成13年度から12年かけて、女性の場合は3年に1歳ずつ、平成18年度から12年かけて引き上げられました。
平成12年の改正では、老齢厚生年金の報酬比例部分についての引き上げが行われています。受給開始年齢は、男女ともに60歳から65歳に引き上げられましたが、男性の場合は3年に1歳ずつ、平成25年度から12年かけて、女性の場合は3年に1歳ずつ、平成30年度から12年かけて引き上げられるということになっています。
まとめ
年金制度は、今の厚生年金が最初ということになります。創設当初は男性にしか適用されず、受給開始年齢は55歳でした。その後、適用範囲が女性にまで広がり、時代の変遷とともに、受給開始年齢も少しずつ引き上げられてきました。
公的年金の受給開始年齢は、その時代の平均寿命が大きく関わっており、平均寿命の伸長により、受給開始年齢が引き上げられてきたといえます。人生100年時代といわれる現在、働き方にも変化が必要とされています。
どのように働いて、どのような老後を過ごしたいのか、ライフプランも大事ですし、ファイナンシャルプランも大事です。公的年金の受給開始年齢は、老後の生活設計を考えた上で、とても大事な要素です。今後の動向に注目していきましょう。
出典
総務省 「年金制度の歴史」
厚生労働省 「公的年金制度の歩みとこれまでの主な制度改正」
厚生労働省 「支給開始年齢について」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
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