子や孫への非課税贈与制度。条件が厳しくなる?
ファイナンシャルフィールド / 2021年4月7日 23時30分
![子や孫への非課税贈与制度。条件が厳しくなる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_102518_0-small.jpg)
相続対策の手段ともなる、子どもや孫への非課税で一括贈与できる制度が、2021年3月で終了する予定でしたが、条件を厳しくしたうえで継続されました。
主なものは、教育資金、結婚・子育て資金、住宅取得資金の3種類ですが、非課税一括贈与については、富裕層に対する優遇措置との批判もあり、今後も議論になりそうです。
教育資金贈与の改正点
教育資金の非課税贈与は2013年から始まり、29歳以下の孫や子を対象に1500万円まで無償で贈与できる制度で、専用口座をつくり、教育資金に限定してその口座から支払うことが義務づけられています。
資金を使い切ると何度でも口座をつくり贈与できます。高校・大学などの入学金・授業料や、学習塾の費用などに利用できますが、生活費などはもちろん、お稽古ごとには原則使うことはできません。この1500万円という金額には、一切贈与税がかかりません。
例えば、4人の孫がいるケースを考えると、1人につき教育資金として1500万円、合計で6000万円を非課税で贈与できる計算です。もし孫の人数が多ければ、1億円以上を非課税で贈与することも可能になります。
教育目的とはいえ、所有財産の多くを、贈与税を払うことなく次世代へ移転できます。このため、これだけの財産をもっているのは富裕層に限られるため、彼らへの優遇措置だ、という不公平感を抱く人も多かったはずです。
2021年4月以降は、
(1)この制度の適用期間を2023年3月まで2年延長する
(2)未使用段階で贈与者が死亡した場合は、使い残しの金額は相続財産に加算する
(3)すでに孫に贈与し教育資金として利用中に贈与者が死亡した場合、残金にかかる相続税率は2割増とする
という内容に改正されました。
今後2年間、継続する一方で、未就学児が教育資金として利用する前に贈与者が亡くなった場合や、実際に教育資金として支払い中に贈与者が亡くなり、使い残しがある場合は、相続税課税対象になります。運用に関しては、これまでより厳しい条件になりました。
結婚・子育て資金、住宅取得資金の贈与
結婚・子育て資金の非課税贈与は、教育資金の贈与より遅れて2015年から始まりました。20歳以上の子や孫に対して、結婚式の費用や出産費用として、1000万円まで非課税で贈与できる仕組みです。教育資金の非課税利用と同様、専用の口座をつくり、そこから支払う仕組みです。
今回の改正では、
(1)制度の適用期限を2023年3月まで2年間延長する(教育資金と同じ)
(2)贈与者の死亡時に使い残しがある場合は、残った金額に対する相続税額を2割増とする
の2点です。
結婚などの予定がない人へ、資金の贈与はできませんので、教育資金の(2)に該当する項目はありません。教育資金同様、条件が厳しくなっています。
住宅取得資金の非課税贈与は、2015年から始まりました。1500万円までを上限に、子や孫の住宅取得を手助けする制度で、次の点が改正されました。
具体的には、
(1)制度の適用期限を2021年12月まで延長する
(2)4月からの非課税限度額の上限を最終変更し1500万円以下に据え置く
(3)購入物件の床面積を50平方メートル以上から40平方メートル以上に緩和する
(4)40平方メートルの住宅を取得する人の要件は、年間所得が1000万円以下とする
の4点です。
住宅取得資金の贈与に関しての主な変更点は、これまでは床面積50平方メートル以上の住宅で、贈与を受ける人の年間所得3000万円以下だったものを、床面積40平方メートルと狭い住宅にも適用した半面、この住宅の贈与を受ける人の年間所得を1000万円以下にしました。
また、非課税となる金額は、当初案は1200万円でしたが、最終的に1500万円に据え置きとなりました。対象となる住宅が、省エネ機能を備えているかなど、住宅の質によって、非課税となる金額が変わってきます。
非課税特例は継続し条件は厳しく
教育資金の非課税贈与などに関しては、相続財産を非課税で次の世代へ移転できる仕組みです。この制度により、教育や子育てといった若い世代が高齢者から贈与を受け、資金として利用したため、眠っている金融資産を市場で動かすという効果はありました。
贈与を受けた人が、その目的に沿って消費するため、贈与された資金を、そのまま貯蓄として貯めこむことはできないからです。世代間の資金移動が進み、高齢者に集中し停滞しがちな金融資産を、若い世代が消費しました。
しかし一方で、1500万円以上、場合によっては1億円を超える金額を、相続税を支払うことなく子や孫の世代へ移転できる仕組みを利用できる層は、かなり限られます。
相続税の控除額が減らされる中で、相続税の支払いで苦労する人も出ています。1億円を超える金額でさえも非課税で移転できるため、相続税逃れに利用されやすい、富裕層に対する優遇策で不公平だ、との批判も多くあったと思います。
これまでは未就学児に対しても、将来利用することを前提に非課税贈与ができました。相続が近くなって時点で、この制度を利用し未就学児への贈与も行われていました。
今回の改正では、贈与者が亡くなった時点で、使い残しがあった分については、相続財産にカウントされ、なおかつその分については通常の相続より高い税率が課せられることになりました。このため、とくに相続の時期が近いと考えた駆け込みの非課税贈与や、利用期間がかなり長くなる非課税贈与に関しては、かなりの歯止めがかかることになりました。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
子どものお年玉「200万円」を親名義の口座で貯金していました。就職祝いで渡すと「税金」を取られてしまいますか? お年玉なら“対象外”でしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月21日 2時10分
-
父から毎年「100万円」を相続税対策として受け取っています。来年は子どもの大学費用として「400万円」援助してくれるそうなのですが、非課税の制度を利用すれば、100万円も受け取って大丈夫ですよね…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月20日 5時0分
-
孫、父母、祖父母みんなが喜ぶ! 「教育資金の一括贈与の非課税制度」を知っておこう!
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月14日 12時30分
-
相続税の生前贈与の加算期間の延長は実質「増税」!? 65歳の「定年前」に備えておくべきことはありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月8日 22時50分
-
口座に残っている「学資保険」の残りを子どもに渡したい。「贈与税」の対象になるケースとは?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月8日 2時20分
ランキング
-
1マクドナルドで行列は当たり前…は昔の話。「一切並ばず食事する方法」使わないのはあまりに損
女子SPA! / 2024年7月28日 8時45分
-
2「大谷翔平の新居バレ報道」は誰の責任なのか…アナウンサーに「謝罪係」を背負わせるテレビ局の特殊体質
プレジデントオンライン / 2024年7月25日 10時30分
-
3「ダブルクリックがわからん!」コールセンターに“高圧的な態度”を取り続けた50代男性の末路
日刊SPA! / 2024年7月27日 8時54分
-
4妻への「別にいいけど」はケンカの火種でしかない 夏休みは「家庭内の不適切発言」を回避する機会
東洋経済オンライン / 2024年7月29日 8時0分
-
5「キウイ」実はあまり知られていない最強の食べ方 「栄養素充足率スコアNo.1」強みを享受するには
東洋経済オンライン / 2024年7月28日 15時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)