相続のキホン 特定の人に財産を残す「遺贈」とは
ファイナンシャルフィールド / 2021年4月15日 0時10分
遺言がない場合、法定相続人や法定相続分については民法によって決まっています。
しかし、遺言を作成することによって、法定相続人以外にも財産を残すことができます。お世話になった方や支援したい団体に寄付できる「遺贈」について概要を説明します。
遺贈とは
遺贈(いぞう)とは、遺言によって、被相続人の財産を無償で与える行為をいいます。
例えば、遺言書を作成して、その中で、献身的な世話をしてくれた友人Aに「○○銀行××支店の私名義の預金(口座番号****)のうち300万円を東京都○○区○丁目○番○号居住、昭和〇〇年〇〇月〇〇日生のAに遺贈する」というようにします。また、活動内容に賛同する非営利団体に「死んだら財産をすべて寄付する」といった遺贈寄付もできます。
相続と違い、受遺者には法定相続人以外の人も指定することができるので、法定相続人以外の人に財産を残したい場合に活用できます。ただし、財産をもらう人は、財産をあげる人が内容を伝えてくれないとわからないので、財産をもらえることを伝えておくとよいでしょう。
遺贈には、大きく分けて「包括遺贈」と「特定遺贈」があります。
包括遺贈とは、相続財産の割合を指定して遺贈するものです。例えば「全財産の5分の1を○○にあげる」などです。この場合、遺産の割合で指定しているためマイナスの財産である債務なども引き継ぎます。相続放棄をする場合は、受遺者となることを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
これに対し特定遺贈とは、特定の財産を指定しその遺産を受遺者に遺贈するものです。放棄する場合はその意思を相続人等に表示すればよく、家庭裁判所への申述は不要です。
贈与との違い
財産を無償で与えるという点では贈与に似ています。しかし、贈与は贈る者ともらう者との契約(両者の合意)です。贈与契約は口頭でも成立します。ただし、書面によらない贈与については、約束が履行されるまでは、各当事者は契約を取り消すことができます。
これに対して、遺贈は契約ではありません。遺言者が遺言に一方的に書けば、もらう者(受遺者)の意思に関係なく効力が発生します。したがって受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができる、となっています。
税金について、生前に取得した財産は贈与税の課税対象ですが、遺贈により取得した財産は、相続税の課税対象になります。
死因贈与との違い
死因贈与は、「自分が死んだら○○をあげる」という契約です。死因贈与も遺贈も、法定相続人以外に財産を残せる点や死亡により効力が発生する点は同じですが、死因贈与が契約であるのに対して遺贈は契約ではない点が異なります。つまり、死因贈与では、もらう者の「もらいます」という受諾が必要になります。口頭で約束しても契約は成立します。
遺贈は15歳に達すれば単独で行えますが、死因贈与は契約なので、未成年者の場合は、原則、法定代理人の同意が必要です。遺贈では、遺言を書き直すことで何度も撤回が可能ですが、死因贈与では、撤回できない場合があります。
また、死因贈与は遺贈と異なり、不動産の仮登記ができますので、財産をもらう者にとっては財産の保全ができるというメリットがあります。税金に関しては、死因贈与は相続税の課税対象です。不動産取得税は一律4%、登録免許税は一律2%と遺贈に比べ不利です。
不動産を遺贈した場合
遺贈は相続税の課税対象ですが、不動産を遺贈した場合には、相続税のほか不動産取得税や登録免許税がかかる場合があります。
法定相続人に不動産を遺贈した場合、受遺者には不動産取得税がかかりません。登録免許税は0.4%です。一方、法定相続人以外に不動産を遺贈した場合、不動産取得税は特定遺贈にのみ課税(4%)されます。登録免許税は、特定遺贈、包括遺贈とも2%となります。
また、認定NPO法人などに遺贈寄付した場合は相続税が課税されません。財産を社会貢献に使いたい場合は、寄付先のホームページなどで調べてみましょう。
なお、不動産を法定相続人に相続させる、とした場合、法定相続人は単独で相続登記ができます。しかし、法定相続人に対して、不動産を遺贈する、とした場合、受遺者は他の法定相続人等と共同して相続登記をする必要がありますので文言に留意しましょう。
※この記事の情報は2021年3月時点のものです。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
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