給付奨学金の条件が変更される? 注意すべきことは?
ファイナンシャルフィールド / 2021年4月19日 11時30分
2020年4月から「高等教育の修学支援新制度」が始まり、給付型奨学金についても大きな変更がありました。給付型奨学金は2017年に始まった制度ですが、当時は対象となる学生の選考基準が厳しく、給付額も多くありませんでした。
2020年4月からは給付型奨学金の選考基準や支給額がどのように変わったのか、また、給付型奨学金を利用するときに注意すべきことについて紹介します。
2020年4月から始まった新制度
2020年4月から始まった「高等教育の修学支援新制度」では、意欲のある学生が経済的な理由で進学をあきらめたりしないよう支援するため、給付型奨学金などの大幅な拡充がありました。
1つ目は、給付型奨学金の対象となる要件が見直されました。それまでは住民税非課税世帯の学生に限られ、学習成績が優秀な学生から選考される仕組みでした。
新制度では住民税非課税世帯のほか、それに準ずる世帯に広がりました。また、学力についても大学などにおける学修意欲が確認できれば対象となり、成績だけで対象外になることはなくなりました。その他の要件として資産基準があり、学生本人と生計維持者の資産が2000万円未満(生計維持者が1人の場合は1250万円未満)となっています。
2つ目は、支給額の見直しです。住民税非課税世帯で私立大学(自宅通学)の学生の場合、それまでの支給額は月3万円でしたが、新制度では月3万8300円、年額約46万円に増額されました。
3つ目は、別途申し込みをすることで、入学金と授業料の減免を受けられるようになりました。住民税非課税世帯で私立大学の学生の場合、入学金で約26万円、授業料で年額約70万円の減免を受けられます。
また、世帯構成や収入によって3つの区分があり、給付型奨学金の支給額や授業料などの減免の金額が異なります。住民税非課税世帯を第I区分として、第II区分の場合は基準となる第I区分の3分の2、第III区分の場合は3分の1になります。
なお、大学、短大、高等専門学校、国公立や私立、自宅通学、自宅外通学など、それぞれの条件によっても奨学金の支給額や授業料などの減免額が異なります。
全ての学校が対象ではない
高等教育の修学支援新制度について、対象となる大学などについても要件があり、全ての学校が対象になっているわけではありません。
まず、自分の進学したい大学や通っている大学などが、制度の対象に該当するかを確認しましょう。対象の大学などについては、文部科学省のウェブサイトで検索または一覧で確認ができます。
奨学金が振り込まれるのは入学後
給付型奨学金の支給の時期にも注意しましょう。
大学などに進学を希望する高校生の場合、高校3年生のときに通っている学校に必要書類を提出して申し込みをし、10月頃に支援の対象になった人に通知がされます。その後、大学などに進学ができたら「進学届」を提出し、初めて奨学金を受け取ることができます。
奨学金が振り込まれるのは早くても4月後半、進学届の提出時期によっては5月以降になります。進学先の入学金や授業料の支払いをする時点では、まだ奨学金を受け取ることができませんので、その分のお金は用意しておく必要があります。
入学金や授業料をいったん支払う必要がある場合は、減免された金額を後で返してもらうことになります。また、進学前に給付型奨学金の対象の通知を受けている場合、初めから入学金と授業料の減免を受けられる場合があります。詳しくは進学先の大学などに確認しましょう。
毎年の適格認定で区分が変わることがある
給付型奨学金の対象になったとしても、例えば大学なら4年間について、その状況が確定するわけではありません。毎年、奨学金を受けるための確認があります。
まず、年3回(4月、7月、10月)の在籍確認があります。また、10月に家計に関する適格認定があり、本人および生計維持者(父母など)の経済状況に応じて給付型奨学金の対象かどうか、対象の場合は3つのどの区分になるかが判定され、1年間の支給額が決まります。世帯構成や収入が変わると、給付型奨学金の対象外になることや支給額が変わることがあります。
また、親の死亡や病気など予期しない理由により家計が急に苦しくなった場合には、適格認定の時期に関係なく区分の見直しを申請できる制度もあります。
新制度になり、給付型奨学金を利用しやすくなりましたが、支給を受けるための要件がいくつかあります。申し込む前に、支給の時期や継続の条件についてもよく確認しておきましょう。
出典
文部科学省 高等教育の修学支援新制度
文部科学省 支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧
独立行政法人 日本学生支援機構 奨学金の制度(給付型)
独立行政法人 日本学生支援機構 支給中の手続き
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
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