上手な「株主優待」銘柄の見つけ方・買い方
ファイナンシャルフィールド / 2021年4月22日 3時10分
個人投資家にとって、株を持つ楽しみの1つが、その企業が実施している「株主優待」です。その企業の商品を無償で手に入れる、あるいは経営する店舗を安く利用できます。
しかしこの「優待」に眼を奪われていると、業績不振により、株価が大きく下落し、思わぬ損失を招きかねません。株主優待をうまく使いこなすには、どうしたらよいでしょうか。
権利確定日前に買うことだが
その企業が実施している「株主優待」を受けるためには、優待の権利が確定する日には、株式を持っている必要があります。株主優待を実施している多くの企業は、決算時期と優待とを連動していることが多く、決算と関係のない時期に株式を購入したとしても、すぐに優待は受けられません。そのため決算月に合わせて、いつまでに株式を購入すると優待が受けられるかが問題です。
通常は土日を除く優待月の月末から2日前に買わなければなりません。6月末が優待期限だとすると、6月30日が権利確定日となるため、権利が行使できる2日前の28日までに買う必要があります。29日の購入では権利落ちとなり、株主優待は受けられません。
しかしここで問題となるのは、人気の高い株主優待ほど、権利が確定する直前に株価が上がり、権利確定後に株価が値下がりする傾向にあります。株主優待の権利は得られたとしても、確定日直前に購入し、確定後に売却したのでは損失が出ることが多いのです。株主優待の恩恵よりも損失額が大きくなると、株主優待を受ける意味が薄れてしまいます。
株主優待を受けるために必要な最低持ち株数、保有期間についても確認しておきます。最低単位の100株所有では株主優待を受けられない、1年以上保有していないと優待を受けられない、という企業もあるので注意しましょう。権利確定後に売却されることを嫌い、株式を長期保有する株主に対し、優待内容をグレードアップする企業もあります。
優待内容の選択肢は多種多様
株主に対して提供される優待内容も多種多様です。自分に合った優待に狙いを定めましょう。比較的人気の高い優待は、食品メーカーによる自社製品の提供です。
例えば、極洋(1301・3月=銘柄コードと優待月)、日本水産(1332・3月)、マルハニチロ(1333・3月)など水産加工メーカーは、魚貝の缶詰類を、サッポロHD(2501・12月)、アサヒグループHD(2502・12月)、キリンHD(2503・12月)など飲料メーカーは、自社製のビール類などを、日本ハム(2282・3、9月)、滝沢ハム(2293・3月)などは、ハム製品の詰め合わせを、日清食品HD(2897・3、9月)、東洋水産(2875・3月)などは、カップ麺などの詰め合わせを提供しています。
また、ファンケル(4921・3月)、ポーラ・オルビスHD(4927・12月)、シーボン(4926・3月)など化粧品メーカーは自社化粧品を提供しています。さらにオリックス(8591・3、9月)、KDDI(9433・3月)、大和証券G本社(8601・3、9月)などは、カタログギフトから食品を含め自由に商品を選択できます。
食事券や買い物券も人気があります。日本マクドナルドHD(2702・6、12月)、すかいらーくHD(3197・6、12月)、コロワイド(7616・3、9月)、木曽路(8160・3、9月)など外食チェーンは、自社店舗で飲食可能な食事券を、ビックカメラ(3048・2、8月)、ヤマダHD(9831・3、9月)、ノジマ(7419・3、9月)など家電量販店は、自社店舗で利用できる買い物券を提供しています。
三越伊勢丹HD(3099・3、9月)、高島屋(8233・2、8月)、松屋(8237・2、8月)など百貨店は、割引が受けられる買い物カードを発行しています。
オリエンタルランド(4661・3、9月)、サンリオ(8136・3、9月)、ホンダ(7267・3、9、12月)などは、自社の遊戯施設の入場券を、DIC(4631・6、12月)、うかい(7621・9月)などは、自社所有美術館の入場券を提供しています。商品提供ではなく、社会貢献活動への寄付を行える企業もあります。
優待銘柄を選ぶ際のポイント
優待品に魅力があるからといって、何も考えずに買ってはいけません。
まず第1のポイントは、買う時期の選択です。優待の確定日の直前は往々にして株価も高くなっています。通常の優待は年に1回または2回の企業が多く、また保有期間など優待に条件を付ける企業もあります。全体的な株価トレンドもありますが、少なくとも権利確定の1~2月前に買うことをお勧めします。
多くの場合、確定日が近づくにつれ株価は上昇しますので、その時点での購入は避けるのが賢明です。権利が確定したら、その後の値下がりが緩やかであれば売却という選択肢もありますし、継続保有し、半年後や1年後にも株主優待を再度受ける選択肢もあります。
第2のポイントは、優待を希望する企業の業績チェックです。優待に目がいくあまり、業績を見ていない失敗することになります。売上高や経常利益率、株価収益率などをチェックし、企業業績が好調で安心感をもてるかを確認しましょう。
コロナ禍で企業業績が低迷している企業も多く、特に航空や外食関連の企業では業績が悪化し、株主優待の内容を急に縮小または廃止する企業も増えています。優待内容の変更がないかを確認しましょう。
第3のポイントは、優待内容だけでなく配当の有無の確認です。長期間同額の配当を維持している企業には信頼感がありますが、直近に配当をゼロにした企業は要注意です。業績悪化により、株価が大きく下落する、優待自体が廃止される、といった不安もあるからです。
一方で、人気の優待を実施してきた企業の中には、コロナ禍で配当をゼロにしても優待は継続している企業もあります。優待が魅力的ならば、企業を応援するつもりで、優待廃止という最悪も覚悟し、業績回復を待つ選択肢もあるかもしれません。
第4のポイントは、優待内容が本当に欲しいものかを考えて購入したいものです。例えば、優待のある人気外食チェーンの株式を購入してみたものの、自宅の近辺にその店舗がなく、ほとんど利用しないうちに有効期限が過ぎてしまった。優待品が届いたが、その商品はあまりにも魅力がなく無駄になってしまった、といった例は結構多くあります。
情報誌などで「優待ランキング第1位」だからといって、必要度の低いものは手を出さないことです。事前に優待を本当に受けたいのかを調べて購入したいものです。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
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