労災保険の改正で副業・兼業がやりやすくなる?
ファイナンシャルフィールド / 2021年4月28日 22時40分
![労災保険の改正で副業・兼業がやりやすくなる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_104028_0-small.jpg)
コロナ禍で副業・兼業を認める企業が増えてきました。企業で働いている方の中にも、空いた時間で副業を始めてみようと思っている方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
しかし、今までの労災保険(労働者災害補償保険)では副業・兼業をした場合、守られていない労働時間帯が多かったのをご存じでしたか。2020年9月に労災保険が改正されて、従来より安心して副業・兼業ができるようになりました。どう改正されたのか確認してみましょう。
従来の労災保険
企業は労働者を1人でも雇用していれば、労災保険に加入しなければなりません。たとえ副業・兼業であっても、労働時間が短くても、労災保険に加入する必要があります。
しかし、副業・兼業をしている企業で労災保険事故が発生してしまった場合は、副業・兼業先の収入のみを労災保険を支払う算定の基礎(算定基礎)とするため、補償が少なくなってしまいます。
例えば、会社Aで月に20万円収入がある労働者が、会社Bで月に15万円の副業を始めたケースを考えてみましょう。
会社Bで仕事中に事故があった場合、会社Bの月15万円が算定基礎となって補償されます(該当補償:休業補償・障害補償・遺族補償など)。この場合、会社Aの20万円はまったく考慮されません。これでは心配で、兼業・副業ができませんね。
改正後の労災保険
令和2年9月1日以降は、けがをした労働者や病気になった労働者がいる場合、すべての勤務先の賃金額を合算した額を基礎に、給付額等が決定することになりました。
上記の例で考えてみると、会社Bで仕事中に事故があった場合、会社Bの月15万円と会社Aの20万円が合算された35万円が算定基礎になります。
※原則、けがなどをした時点で、複数の会社で働いている労働者が対象です。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2021/04/75e53d4448e1e2458319d198b7c42715-16.jpg)
(出典:厚生労働省「「労働者災害補償保険法」が改正されました」(※))
さらによいこと
従来の制度では、それぞれの勤務先ごとの負荷(労働時間やストレス等。以下同)を個別に評価して、労災認定できるかどうかを判断していました。今回の制度改正では、それぞれの勤務先ごとの負荷を、おのおの評価を行い、労災認定が不可のときは、すべての勤務先の負荷を総合的に評価して労災認定できるかどうかを判断することになりました。
今回の制度改正では、病気になったりけがをしたりしたときなどに、2つ以上の会社等に雇用されている労働者や、病気になったりけがをしたりしたとき、1つの会社等でのみ雇用されている場合(またはすべての会社等を退職後の場合)であっても、そのけがや病気などの原因・要因となるもの(例:長時間労働、強いストレスなど)が、2つ以上の会社等で雇用されている際に存在していたならば、対象となります。
※特別加入者の方も、今回の制度改正の対象です。
![](https://financial-field.com/wp/wp-content/uploads/2021/04/b21aa6e7a5229bdbdbdb6524b66d20f0-7.jpg)
(出典:厚生労働省「「労働者災害補償保険法」が改正されました」(※))
留意すること
複数の企業で働くということは、当然労働時間が長くなるということです。自分自身による就業時間の管理や健康の管理がとても大事になります。
労災保険についてはだいぶ改善されましたが、雇用保険はまだ十分とはいえないかもしれません。1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることになります。雇用保険の改正はまだ65歳以上が対象です。また、社会保険にも十分留意する必要があります。
そして副業・兼業をする場合、次の3点にも常に留意することが大事です。
(1)職務専念義務:仕事中は職務に専念しなければならない
(2)秘密保持義務:企業に業務上の秘密を漏らしてはならない
(3)競合避止義務:企業と同じ業務を行い、競争的取引をしてはならない
(※)厚生労働省「「労働者災害補償保険法」が改正されました」
(参考資料)厚生労働省「複数の会社等に雇用されている労働者の方々へ 労災給付が変わります」
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント
この記事に関連するニュース
-
【労災認定の壁】深夜労働6連勤…働くシニアを苦しめる労災、認められない過酷労働
週刊女性PRIME / 2024年7月27日 16時0分
-
友人から病院への交通費が公的保険から受け取れたと聞きました。そんなことってあるんでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月26日 23時30分
-
「通勤がつらい」会社からの独立目指す人の"盲点" 法的な「労働者」として扱われないこれだけのリスク
東洋経済オンライン / 2024年7月24日 17時0分
-
氷河期世代の暗黒「正規で働きたいのに…」→「年金をもらうのすら厳しい」老後破産の現実味
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月12日 17時0分
-
廃止のデマが流れた「遺族年金」。夫の死後「年60万円」を受け取っていますが、今後も安泰でしょうか? 将来的に“年金額が減る”可能性もあるのですか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月10日 2時20分
ランキング
-
1「大谷翔平の新居バレ報道」は誰の責任なのか…アナウンサーに「謝罪係」を背負わせるテレビ局の特殊体質
プレジデントオンライン / 2024年7月25日 10時30分
-
2妻への「別にいいけど」はケンカの火種でしかない 夏休みは「家庭内の不適切発言」を回避する機会
東洋経済オンライン / 2024年7月29日 8時0分
-
3マクドナルドで行列は当たり前…は昔の話。「一切並ばず食事する方法」使わないのはあまりに損
女子SPA! / 2024年7月28日 8時45分
-
4トランプ氏がもし撃たれていたら? AR-15銃の恐怖の殺傷力(シェリーめぐみ)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月29日 9時26分
-
5「1人で食事が常態化」現役世代の孤食という問題 コミュニティーディナーを始めた会社の意図
東洋経済オンライン / 2024年7月29日 14時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)