民事信託の活用法 〜民法をふまえた上での注意点とは〜
ファイナンシャルフィールド / 2021年5月12日 22時40分
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超高齢化が進む日本。長生きは良いことなのですが、長生きのリスクである病は、私たちを悩ませるものの1つです。団塊の世代が75歳を迎える2025年には、認知症の有病率は高齢人口の20%を超え、5人に1人が認知症になると危惧されています。
高齢期のリスクに備え、資産を活用しながら生活に困らないよう対策をたてておく必要があります。判断能力が低下した際でもご自身の資産を管理し、活用できると安心です。今回は、民事信託についてお伝えしていきます。
民事信託とは
「信託」と聞くと、以前からあった「商事信託」をイメージされる方もいらっしゃると思います。商事信託は、信託銀行や信託会社が商事(ビジネスとして)他人の財産を管理・運用等する仕組みです。
「民事信託」は商事信託とは異なり、営利を目的としないで他人の財産の管理・運用を引き受けることを意味しています。民事信託には3つの人物が登場します。
●委託者:財産の管理・運用を任せる側の人
●受託者:財産の管理・運用を引き受ける側の人
●受益者:信託された財産から生じた利益を受ける人
ご家族が受託者となるケースが多いため、民事信託を「家族信託」と呼ぶ場合もあります。民事信託の特徴として、財産の一部の管理・運用を任せることができる点があげられます。財産のすべてではなく、例えば家賃収入のある不動産のみの管理・運用を任せるなど限定することが可能です。
また、家族などに委託するため、商事信託のように高額な信託報酬などは発生しません。無料で行うことも双方が合意であればできますし、手間代程度で契約もできます。委託する財産、契約内容など自由に決められることがメリットでもあります。
民事信託の活用法
元気なうちは、資産の管理や運用もご自身でできるのですが、いざ介護状態になってしまったり、認知症を患ってしまったりした場合、これまでと同様に資産の管理や運用ができなくなるケースがあります。特に不動産などは、契約者本人でないと契約や売買などができないということがあります。
そこで、民事信託を活用して、資産の管理・運用を委託しておくことができます。
例えば、Aさん(75歳)が家賃収入のある不動産を所有していたとします。病気や介護になった場合、治療費や施設費用などを不動産収入で賄いたいと考えています。ご自身で手続きや資産管理ができなくなってしまった場合に備えて、民事信託で資産管理を息子のBさんに委託することにします。
この場合、委託者がAさん、受託者がBさんとなり、家賃を治療費や施設費用などで使うのは委託者のAさんとなりますので、受益者もAさんということになります。きちんと管理する資産を特定し、信託契約をしておくことで、BさんがAさんの代わりに不動産を管理・運用し、Aさんのその後の生活をサポートすることができるのです。
民法をふまえた注意点
民事信託は、遺言と併せて作成もできます。委託者が亡くなった場合、「信託財産については受託者へ相続する」などの内容を入れることができるのです。ここで注意したいのは、民事信託は信託法にもとづきますが、民法も考慮しておく必要があるという点です。
例えば、前述の例で受託者Bさんの他に息子さん(Cさん)がいたとします。民事信託で受託者をBさんとし、その信託財産をAさんが亡くなったあとはBさんへ相続すると遺したとしましょう。
Cさんは、受け取る権利のある財産がもらえないと不服申し立てをするかもしれません。そこで、あらかじめ民法や法定相続割合を想定して相続する財産などを決めておく必要があるのです。この例の場合、例えば信託財産はBさんに相続し、他の資産はCさんに相続するとしておく、などです。
民事信託は自由度が高いことから、近年、利用される方が増えてきていますが、民法なども考慮した上で検討されることをお勧めしています。
執筆者:藤井亜也
株式会社COCO PLAN (ココプラン) 代表取締役社長
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