育児休業中は夫の扶養に入ったほうが良いの?
ファイナンシャルフィールド / 2021年5月20日 3時10分
近々産休に入る予定の、妊娠8ヶ月のA子さん。産休・育休を取得した後、職場復帰する予定です。友人から「詳しいことはよく分からないけど、産休・育休中は夫の扶養に入ったほうがいいんじゃない?」と言われ、気になっています。
そもそも、産休・育休中に夫の扶養に入ることはできるのでしょうか。また、扶養に入ることでどのようなことが起こるのでしょうか。
産前産後の休業に出産手当金
子育てしながら働き続けられる環境は、ひと昔前に比べると随分整ってきました。現在、産休・育休中は、どのような支援を受けられるのでしょうか。
出産したとき(妊娠4ヶ月以上)は、出産育児一時金を子ども1人につき42万円を受けられます(被扶養者の出産でも受けられます。産科医療保障制度に加入されていない医療機関での出産の場合は、40万4000円です)。
出産のため仕事を休み、事業者から報酬が受けられない場合、出産手当金を受けられます。
1日分の手当額=支給開始前12ヶ月間の標準報酬月額の返金÷30×2/3
休業期間分の給与がある場合、手当金より上回ると手当金は停止、手当金より少ない場合は手当金との差額が支給されます。支給期間は、出産の日以前42日(多胎妊娠の場合、翌日以降56日目)までの範囲内で会社を休んだときに支給されます。出産が予定日より遅れたら、その分も支給されます。
育児休業給付金
育児休業を取得すると、雇用保険より育児休業給付金を受け取ります。支給開始6ヶ月間は育児休業前の給与の67%、その後50%を1歳の誕生日の前々日まで受け取れます。
母親は、出生日と産後休業育児休業を合わせて1年間の育児休業を取得できますが、
●1歳の誕生日の翌日から保育所等に入所するよう申し込みがしてあっても入れない場合
●養育者の死亡や負傷・疾病により養育が困難になった場合
●離婚等で配偶者が子どもと同居しなくなった場合
●6週間以内に出産または産後8週間を経過しないため働けない場合
上記のような場合には、1歳6ヶ月まで延長ができます。1歳6ヶ月に達する日についても同様の場合に、2歳まで育児休業給付金の延長ができます。
父親も育休を取得することで、出産8週間以内の期間内に父親が育休を取得した場合でも父親が再度育児休暇を取得できる「パパ休暇」や、子どもが1歳2ヶ月になるまでそれぞれ6ヶ月ずつ67%給付を受け取れる「パパママ育休プラス」を利用できます。
一時金・給付金・手当金は非課税、社会保険料免除、財形非課税貯蓄の特例も
出産育児一時金、出産手当金、育児休業給付金は非課税です。所得税はかかりません。翌年の住民税の算定にも含まれません。よって、控除対象配偶者に該当するかどうかの判定の合計所得にも含まれません。その年の産休に入るまでの収入が150万円以下であれば控除対象配偶者です。
さらに、産前産後休業・育児休業等期間中の社会保険料は免除されます。免除されても健康保険証は使えます。免除された期間も、産休前の報酬月額が将来の年金に反映されます。育休明けに時短勤務をする場合、3ヶ月間の報酬の平均により保険料の再計算をしますが、子どもが3歳になるまで、将来の年金には産休前の報酬月額が反映されます。
雇用保険についても、勤務先から給与が支給されない場合は負担がありません。つまり、社会保険料・雇用保険料をまったく支払わなくても払っている以上の待遇を受けられます。
また、財形非課税貯蓄をしている場合、2年間の中断で課税扱いされてしまいますが、特例措置により休業開始から3歳まで中断しても非課税の継続ができます。
出産手当金、育児休業給付金、その他の制度や特例を利用するには、会社の担当者に申し出て、必要な書類や手続きを取ってもらいます。
扶養に入ったほうが良い?
ところで、もしA子さんが扶養に入ったらどうなるのでしょうか。
現在、社会保険加入していますが、扶養配偶者になるために退職することになります。
出産を機に退職して扶養に入る場合、被扶養者の出産育児一時金の42万円は受け取ることができますが、退職後の出産手当金については、以下の2点を満たさないと継続して受けられません(協会けんぽホームページより)。
●退職日までに継続して1年以上健康保険に加入(任意加入は除く)
●退職時に出産手当金を受けているか、受ける条件を満たしている
ただし、退職日に出勤した場合、継続給付を受ける条件を満たさないため、退職日の翌日からの出産手当金は受け取れません。育児休業の途中で退職した場合、支給単位期間(育児休業から起算した1ヶ月ごと)での支払いを受けることができますが、最初から復帰の予定がなければ育児休業給付金は受け取れません。
さらに、社会保険の加入から外れた期間は第3号被保険者となり、将来の厚生年金に反映がされなくなります。受ける給付金・手当金が少なくなるうえに、将来の年金まで少なくなってしまいます。
仕事を続けられないのであれば退職もやむをえないのですが、手厚い支援がある産前産後休業・育児休業期間中に、わざわざ退職してまで配偶者の扶養となるメリットはありません。
(参考・引用)
協会けんぽ「出産に関する給付」
厚生労働省「育児・介護休業法について」
日本年金機構「育児休業や介護休業をする方を経済的に支援します」
日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
国税庁「№1191 配偶者控除」
国税庁「№2672 年末調整で配偶者控除又は配偶特別控除の適用を受けるとき」
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者
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