65歳以降も働く場合の年金って? 満額受け取りたいならどのぐらいまで働ける?
ファイナンシャルフィールド / 2021年5月25日 9時0分
セカンドキャリアは「第2の人生における職業」ともいわれ、中高年の早期リタイア、定年後のキャリア、出産・育児後の女性の社会復帰、プロスポーツ選手の引退後のキャリアをなど、さまざまな人生の転機を迎えるときに選択をすることになります。
今回は定年後のセカンドキャリアの選択に関連して、高年齢者雇用安定法の一部が改正の内容と在職老齢年金について解説します。
セカンドキャリアに関する国のサポート
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されています。
従来の65歳までの雇用確保の義務化から、今回の改正では70歳までの就業機会の確保が努力義務となりました。多様な選択肢を国として法制度上整え、事業主はいずれかの措置を制度化する努力義務を設けるものです。
(図表1:筆者作成)
(1) 70歳までの定年引き上げ
(2) 定年制の廃止
(3) 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(4) 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5) 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
(出典:厚生労働省「改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されます」(※))
少子高齢化による生産年齢人口(15歳以上65歳未満の生産活動の中心にいる人口)の低下による経済活動への影響ならびに社会保険制度への影響が、今回の改正の背景にあります。
上記(4)(5)のように、業務委託契約や社会貢献事業への従事など多様な選択肢が加わりました。シニアにとってセカンドキャリアの幅が広がっています。
在職老齢年金
在職老齢年金についても確認しておきましょう。働きながら厚生年金を受け取る人に対して、収入額によって受給額を調整するものです。
【65歳以後の在職老齢年金】
65歳以上70歳未満の方が厚生年金保険の被保険者であるときに、65歳から支給される老齢厚生年金は、受給されている老齢厚生年金と給与等の月額の合計額に応じて年金額が一部支給停止となります。
また、平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務されている場合、厚生年金保険の被保険者とはなりませんが、65歳以上の方と同様の在職中による支給停止が行われますので注意が必要です。
【支給停止の額】 (注)65歳以降の方の場合
(イ)基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合
→ 支給停止にはなりません(全額支給)
(ロ)基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合
→ 47万円を超えた額の2分の1が支給停止
※支給額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
(図表2:筆者作成)
- ◆基本月額
- ◆総報酬月額相当額
老齢厚生年金額(加給年金額を除く)×1/12
(注)老齢基礎年金は含めません
その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の総額×1/12
(注)通勤手当や残業手当も標準報酬月額に含まれます
(注)不動産や株取引、業務委託等のフリーランスでの収入は対象外となります
年金を満額受け取りたい、どのぐらいまで働けるか
厚生年金保険の被保険者として働きつつ、年金を満額受け取りたい場合にはどのぐらいまで働けるのでしょうか。目安になる金額が知りたくなりますよね。
例えば、公的年金額が190万円(老齢基礎年金73万円、老齢厚生年金117万円)の方の場合で試算してみます。
(a)老齢厚生年金を月額換算して基本月額を計算します 117万円×1/12 = 9.75万円
(b)基準となる47万円から9.75万円を引いて総報酬月額相当額の上限を算出します 47万円-9.75万円 = 37.25万円
総報酬月額相当額の上限は37.5万円になりました。この額には給与以外に「残業手当」「通勤手当」「その月以前の1年間の賞与の総額を12等分した額」も含まれます。年収に換算すると通勤手当を含めて年収447万円です。
なお、支給停止期間は、月単位で判断し、支給停止額の変更時期は総報酬月額相当額が変わった月または退職日の翌月です。
まとめ
高年齢者雇用安定法の一部の改正により、定年後も働く機会や選択肢が増えることになるでしょう。それに伴って、年金の存在も無視できなくなってきます。
今回ご紹介した在職老齢年金に関する基本的な知識をおさえて、定年後のセカンドキャリアを描いていきましょう。
(※)
厚生労働省「改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されます」
(参考・引用・抜粋・一部抜粋)
厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正 〜70歳までの就業機会確保〜」
日本年金機構「在職中の年金(在職老齢年金)」
執筆者:仁木康尋
日本FP協会CFP(R)認定者、国家資格キャリアコンサルタント
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