相続のキホン。遺言書の作成ってどうする?
ファイナンシャルフィールド / 2021年5月25日 12時10分
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相続法が改正されて2019年1月には自筆証書遺言の作成方式が緩和され、2020年7月には自筆証書遺言を法務局で保管する制度が新たに始まりました。これを受け、一部の信託銀行でも自筆証書遺言の作成支援サービスを開始しています。
これにより、今後、遺言書を書いてみよう思う人が増えるかもしれません。遺言書には大きく分けて、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。それぞれのメリット、デメリットを解説します。
自筆証書遺言の作成方法
遺言は、自分が死亡した後に、自らの財産を相続人などに対して、どのように分配するのか等について自己の最終意思を明らかにするものです。
自筆証書遺言は、15歳以上の遺言者が、紙に、自ら、遺言の内容の全文を自署(手書き)し、かつ、日付、氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成します。
ただし、財産目録は2019年1月13日以降自署以外でも作成できます。例えば、パソコンで作成したものや通帳などのコピーでも構いません。ただし、目録にも署名、押印は必要です。
公正証書遺言と違って、証人や立会人はいりませんので、遺言者が単独で作成でき、費用もかかりません。なお、誤りを訂正する場合、訂正した箇所に押印をし、どこをどのように訂正したかということを付記して、そこにも署名しなければなりません。
(一部抜粋:日本公証人連合会「公証事務」(※))
自筆証書遺言のメリット・デメリット
自筆証書遺言は、いつでもどこでも作成でき、証人も不要、自分で書けばよいので、費用もかかりません。また、遺言の作成や内容について秘密で作成できます。
自筆証書遺言の作成時に弁護士などの専門家の関与がないのが通常なので、内容が簡単でない場合には、法律的に見て不備な内容になるリスクがあり、方式不備や内容不備で無効になってしまう可能性が高くなります。
自署しなければならないので、字の書けない方は利用できません。自筆証書遺言を発見した者が、自分に不利なことが書いてあると思ったときなどには、破棄したり、隠匿や改ざんをしたりしてしまうリスクもあります。
遺言書を発見した者が、遅滞なく、家庭裁判所にこれを持参し、その遺言書を検認するための手続きを経なければなりませんので手間がかかります。
ちなみに、検認は、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
(引用・一部抜粋:日本公証人連合会「公証事務」(※))
自筆証書遺言保管制度
自筆証書遺言には、「本人が原本を保管しなければならない」「検認手続きが必要である」といったデメリットがありました。これを補完するのが自筆証書遺言保管制度です。手数料は1件につき3900円かかります。
自筆証書遺言保管制度は、自筆証書遺言書を作成した本人自身が、法務局(本局・支局等)に遺言書の保管を申請することができる制度です。保管できる自筆証書遺言は、用紙の大きさや、様式が決まっているので留意しましょう。
この制度を利用することで、遺言書の紛失・亡失を防ぐことができますし、他人に遺言書を見られることもありません。
また、遺言者の死亡後,家庭裁判所での検認手続きは不要のため、相続人や受遺者等は、速やかに「遺言書保管事実証明書」の交付請求(1通800円)や「遺言書情報証明書」の交付請求(1通1400円)、遺言書の閲覧請求(1通1400円、1700円)といった手続きができます。
公正証書遺言の作成方法
公正証書遺言は、遺言者が公証人の面前で、遺言の内容を口授し、それに基づいて公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめ、遺言者および証人に読み聞かせ、作成します。2人以上の証人の立ち合いが必要です。
なお、適当な証人が見当たらない場合には、公証役場で紹介してもらうことが可能です。遺言者および公証人は、筆記が正確であることを承認して各自署名押印します。公証人は、方式が適正であることを付記して署名押印します。
費用について、遺言の目的たる財産の価額に対応する形で、基準の手数料が定められています。例えば、目的の価額が5000万円を超え1億円以下の場合、基準となる手数料は4万3000円です。
公正証書遺言のメリット・デメリット
法律の専門家である公証人が作成するので、複雑な内容であっても、方式の不備で遺言が無効になるおそれがありません。
また、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続きを経る必要がありませんし、原本が必ず公証役場に保管されますので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配もありません。
署名することができなくなった場合でも、公証人が遺言者の署名を代書できます。公証役場に出向くことが困難な場合には、公証人が遺言者の自宅または病院等へ出張して遺言書を作成することもできます。
作成には証人が2人以上必要で、財産の価額に応じた手数料が必要です。手続きが面倒で手間がかかります。遺言の内容を秘密にはできないなどのデメリットがあります。
まれに、公証人が遺言者の意思能力の欠如を看過して公正証書遺言を作成してしまい、無効になるケースもあります。
(引用・一部抜粋:日本公証人連合会「公証事務」(※))
(※)日本公証人連合会「公証事務」
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
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