老後の自分を守るために『年金未払い』はもったいない
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月1日 22時40分
![老後の自分を守るために『年金未払い』はもったいない](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_106909_0-small.jpg)
厚生労働省が4月30日に発表した2020年度平均の『有効求人倍率』は1.10倍で、前年を0.45ポイント下回わりました。下げ幅は46年ぶり(1974年石油ショック以来)の大きさとか。
総務省発表の『完全失業率』も2.9%と、前年度を0.6%上回り(リーマンショック以来11年ぶり)、コロナ渦雇用は厳しい現状が見られます。非正規の就業者数は2066万人と97万人も減り、特に女性は1407万人と65万人も少なくなったのです(減少の67%が女性)。
(出典:日本経済新聞「有効求人1.10倍、20年度46年ぶり下げ幅 失業率2.9%」(※))
このような状況下において、筆者の知人でも「派遣の契約が終了してしまった」と言っている方がいます。人生100年時代といわれている今、現在の生活資金だけでなく、老後の資金に関しても準備が求められています。そして、年金は老後の大切な収入減です。今回は、年金の未払いについて考えてみましょう。
派遣の現状は厳しい
2020年末、筆者の元に友人Aさん(女性)が相談に訪れました。「あと半年ほどで3年間の派遣契約満了だった会社から12月に、“1月末で契約終了”と連絡がきた。その後、短期の仕事は見つかったけど、その後仕事が見つからない」と。仕方なく、派遣会社を変えたところ、仕事をはじめるまでに1週間ほど空いてしまったそうですが、4月から新しい仕事が決まったそうです。
とはいえ、厳しい現状は変わらず「1ヶ月トライアル」からのスタート。このトライアル期間は、社会保険の加入はなし。Aさんは「仕事開始まで1週間も空いてしまったから出費はできる限り抑えようと思って」という理由で、個人で社会保険の加入をしないことにしたそうです。
今の経済の状況は、すぐに回復するとは限らないでしょう。しかし、「国民年金は高いから」という理由で支払わなかった場合、年金受給はどうなるのでしょうか?
年金の『未納』と『免除』の違い
日本国民は、国民年金を支払う義務があります。厚生年金も会社が「国民年金部分」を支払ってくれているので、加入しています。ですから20歳以上の国民は、学生でも無職でも「国民年金」を支払わなくてはいけないルールがあるのです。しかし、国民年金の保険料は安くありません(令和3年4月~令和4年3月:1万6610円)。
Aさんのように、手取り金額が低くなってしまった方にとっては痛い出費。しかし保険料の支払いをしないと、老後の生活費の柱となる国民基礎年金が減ってしまい、将来の痛手となるでしょう。
そんなとき、申請をすることで『未納』から『免除』や『猶予』となり、将来の「老齢基礎年金」や、障害・死亡などの不測の事態が生じたときの「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」を受け取ることができます。
『免除』申請をする2つのメリット
<メリット1>免除額の割合に応じて、一定の年金が保障される!
(筆者作成)
基礎年金受給額の半分は「税金」が原資となっています。ですから『免除』申請をすれば、税金部分は受給されるのです。なお、『猶予』は、追納することが前提なので、年金額には反映されません。
<メリット2>障害基礎年金・遺族基礎年金が受給できる!
保険料の『未納』では受給できませんが、「障害基礎年金」と「遺族基礎年金」が受給できます。ただし、下記の「保険料納付要件」がありますのでご注意ください。
〇障害年金の保険料納付要件
初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
〇遺族基礎年金給付要件
1:死亡した月の前々月までの国民年金加入期間の3分の2以上、保険料が納付または免除されていること
2:死亡した月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
例えば、20歳のフリーターである若者3人が旅行で事故にあったと仮定しましょう。そのとき3人の年金保険料の支払い状況が以下のような場合、年金を受け取れる状況が変わります。
A君:国民年金保険料を納付していた ⇒ ◎
B君:国民年金保険料は納付していないが『免除』申請をしていた ⇒ ◎
C君:国民年金保険料は納付していないし『免除』申請もしていない ⇒ ×
◎=障害年金受給できる
×=障害年金受給できない
免除には4つの種類がある
「お金がないから支払わない」という理由で『免除』や『猶予』にはなりません。条件がありますので注意をしてください。まず、免除には「全額免除」と「一部免除」の制度がありますが、この内訳はご本人だけでなく、世帯収入に関わってきますので確認をしましょう。
『免除』申請できる期間・承認方法
<申請>
『免除申請』は過去2年間までさかのぼることができます。(申請月の2年1ヶ月前の月分)
例:申請月令和3年5月 ⇒ 平成31年4月まで申請可能
〇「全額免除」の承認を受けた人が、翌年以降も引き続き「全額免除の」承認を受けたい場合には申請は不要。
〇失業等を理由とした特例による免除承認があった場合には、翌年度も申請が必要。
<条件>
本人・配偶者・世帯主それぞれの前年所得が基準値となります。
例:令和2年7月~令和3年6月の保険料は令和元年中の所得で審査
〇退職(失業)をされた場合は前年の所得がゼロとして審査されます。
〇新型コロナウイルス感染症の影響により仕事がなくなった場合
⇒所得見込み額が『免除』基準相当になることが予測される際は、仮計算で算定します。
相談者Aさんは、今後も派遣社員として勤務をしていく予定ですが、その都度間が空いたり、トライアル期間があったりすると、「老齢基礎年金」の受給金額・「障害基礎年金」・「遺族基礎年金」の受給にデメリットが生じます。
ですから、『免除』または『猶予』申請をして、自分の身を守りましょう。人生100年時代、終身保険である公的年金は、安心材料となります。備えあれば憂いなしですね。
(※)日本経済新聞「有効求人1.10倍、20年度46年ぶり下げ幅 失業率2.9%」
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
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