障害年金ヒント集(12) 「病歴・就労状況等申立書」の書き方
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月2日 10時30分
年金の相談を受けていると、「障害年金をもらいたい。でも、ハードルが高くて……」と悩んでいらっしゃる人がたくさんいることがわかります。確かに、障害年金を受給するには、いくつものハードルがあります。
しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。
悩んでいる人たちへの受給のためのヒント集です。第12回は「病歴・就労状況等申立書の書き方」です。
最も重視されるとみられるのは診断書だが……
障害年金の裁定請求では、日本年金機構(以下、「機構」と表記します)にさまざまな書類を提出します。それらの書類のうち、機構が審査の際に最も重視するとみられるのが診断書です。
障害年金を受給できるかどうかやその障害等級は「診断書で9割がた決まる」と言われるほどです。もちろん、機構が公式に表明しているわけではありませんが、これまでの裁定結果から、そのように見られているのです。
しかし、そのほかの書類の中にも、作成する際にかなり注意を払うべきものがあります。「病歴・就労状況等申立書」(以下、「申立書」と表記します)です。
診断書との食い違いをできるだけ避ける
申立書は、請求者が作成します(親などが代筆できます)。表裏各1ページの書類で、表面には、発病時以降の治療歴、就労状況、日常生活状況などの履歴を日付順に記入します。
治療歴が長かったり、通院した病院が多かったりして、記入欄が足りないときは、「続紙」を使って2ページ、3ページ、と増やします。裏面には、障害認定日ごろと請求日ごろの就労状況、日常生活状況などを記入します。
申立書を作成するときは、診断書の記載内容との食い違いをできるだけ避けるようにします。診断書が医師の見解を表したものである一方、申立書は請求者の記憶や見方を表したものですから、細かいところで食い違いがあるのは当然ですが、初診日が違っていたり、障害認定日ごろや請求日ごろの症状が食い違っていたりすると、不支給や下位等級での決定につながりかねません。
診断書と申立書に対する機構の姿勢
これまでの裁定結果からうかがえることがあります。診断書と申立書に対する機構の姿勢です。診断書で見ると「軽症」、申立書で見ると「重症」の場合は、診断書の「軽症」が採用されることが多いようです。一方、診断書で見ると「重症」、申立書で見ると「軽症」の場合は、申立書の「軽症」が採用されることが多いようです。
機構ができるだけ障害年金を支給したくないものだから、そうしているのではないかと見る人もいますが、それは、疑い過ぎかもしれません。
医師は障害年金の受給に関しては直接には利害関係のない第三者ですから、その見解は、請求者の見方より客観的なものになるでしょうし、障害年金を請求する人が、わざわざ、障害年金を受給しにくくなるように申立書を書くはずがないとも考えられるからです。
「履歴」を書くときに注意すること
このため、申立書を作成する際は、次のような点に注意を払う必要があるでしょう。
【1】表面の「履歴」に関して
▽医療機関に変更がない場合や受診しなかった期間が長い場合も、5年間を超えないように期間を区切ります。ただし、20歳前障害の場合は、記入の簡素化が認められています。詳細は、年金事務所などにお問い合わせください。
▽「発病日から初診日までの期間」「障害認定日ごろ」「請求日以前数ヶ月間」に関しては、審査のうえで大切なところですから、他の期間より詳しく書きます。
▽傷病が治っていないのに受診しなかった期間に関しては、受診しなかった理由を書きます。
▽日常生活にあまり変化がない場合は、その当時のエピソードを一例として簡潔に書くと、わかりやすくなります。もちろん、「上欄に同じ」でも構いません。
▽ありのままに書くというのが大前提ですが、体調が良かった日のことや症状が軽かった時期のことをあえて書く必要はありません。特に、障害のある子の親が代筆をする場合は、注意が必要です。
日ごろ、子ができるようになったことや成長が感じられる面を探すようにしていると、つい、そうした前向きな部分を書きたくなります。しかし、この申立書は目的が違います。冷徹な目で子の就労状況や日常生活状況を見つめて記入することが大切です。
「就労状況」などを書くときに注意すること
【2】裏面の「就労状況」「日常生活状況」に関して
▽「職種(仕事の内容)」を記入する欄には、仕事の内容をできるだけ具体的に書きます。1日当たりの就労時間も大切なデータですので書きます。
▽着替えや洗面などの「日常生活の制限」について該当する番号を選ぶ欄は、ひとり暮らしを想定して選択します。精神の診断書では、日常生活状況の記入欄がひとり暮らしを想定して選択するように指示されています。同じ趣旨です。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
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