株式投資を始める前に覚えておきたいこと(5) 株価は未来を見ている
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月8日 11時40分
「株式投資を始める前に覚えておきたいこと(4)」では、銘柄選びのヒントについてお伝えしました。また、株価・景気には波があるため、気になる銘柄があってもすぐに買ってはいけないともお伝えしました。
株式投資については多くのアナリスト、評論家がいます。いろいろな人の意見を聞くことは重要ですが、自分で身銭を切って得た経験は自分自身の大きな財産です。
今回は、株式投資を行う上で大切な「想像力」について考えます。
株価は未来を見ている
「株式投資を始める前に覚えておきたいこと(4)」でお伝えしたように、銘柄選びのヒントは身近にたくさんあります。
その中から気になる会社を見つけたら、しばらくはその会社のことを調べたり、株価の推移を見守ったりします。
株価が動く要因はさまざまです。その会社の業績はもちろんのこと、世の中の景気動向をはじめさまざまな要因で株価は変動します。ここで大切なのは「株価は未来を見ている」ということです。
それぞれの銘柄について「いまどうなのか」ではなく、「将来どうなるのか」という予測が株価に大きく影響します。そこには「想像力」が必要です。
現在、新型コロナウイルスによって、ほとんどの会社が少なからず影響を受けています。そんな中でも2021年2月に日経平均株価は一時3万円台の大台に乗せました。
その後3ヶ月余り経過していますが、その間2万7000円台後半から3万円の間でおおむね推移しています。
新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になり、株価が一時大きく下がったときには1万7000円を割り込む場面もあったことを考えれば「底堅い」といえそうです。
現在も新型コロナウイルスの影響は大きく、今後オリンピックを控える中で抱える不透明感はあります。
オリンピックが開催されたとしても、海外からの観光客は見込めないかもしれません。無観客開催の可能性もあり、そうなると国内観光客の需要も見込めなくなります。
株式市場がこうした状況をどのように織り込んでいるかはわかりません。しかし、平時に行うオリンピックのような景気刺激が期待できないことはすでに織り込まれていると考えられます。
オリンピックの開催方法が明らかになれば、短期的には少なからず株価も動くでしょう。しかし、株式市場が見ているのはすでにその先、アフターオリンピック、アフターコロナであるといえます。
アフターコロナの世界はどうなる?
遅れが指摘されているとはいえ、日本でもワクチンの接種が本格化してきました。海外の一部では、マスクが不要になり、飲食店の営業が正常化に向かい、普通に観客を入れたスポーツイベントが再開され始めているところもあります。
日本でもワクチンの効果が出始め、経済活動の再開が本格化するならば、その先にどんな世界があるのか。株式市場はそんなことを考え始めているといえます。
このところ急速に注目を集めているのはDX(デジタルトランスフォーメーション)、すなわち、デジタルを活用した業務の効率化や改革の成果です。
かねてから日本ではDXへの取り組みが遅れているといわれていましたが、新型コロナウイルスの感染が拡大し、テレワークなどへの取り組みを余儀なくされました。結果として、日本のDX対応は急速に進んだといわれています。
こうした取り組みを行った結果、業務効率が改善し、経済が正常化した後にはコロナ前を大きく超える業績が見込まれる企業が出てきています。
一方、こうした取り組みで後手にまわった企業については、株価の値上がりがあるかどうか、注意して見ておいたほうがよいでしょう。
二極化の勝ち組を見極める
よく、景気動向をそのグラフの形からアルファベットで表します。急速に回復する「V字回復」、少し低迷期間が長い「U字回復」などといいます。急速に業績が下がり回復できない「L字型」などもあります。
今、市場では「K字型」がキーワード。つまり、回復する企業とさらに落ち込む企業の二極化が進むと考えられています。
どの業種、どの企業が回復に向かうのかを見定めるとともに、今後も低迷が続く業種・企業には手を出さない判断が必要になります。景気や業績に影響するのはコロナだけではありません。
最近では急速に進歩しつつある自動車業界(EV=電気自動車関連)や、脱炭素化のための技術開発に取り組む企業など、今後の世界を大きく変えるであろう業種、企業も少なくありません。
身近な企業に着目するのに慣れてきたら、少し幅広く見渡してみると新たな発見があるでしょう。そして、あくまでも株価は未来を見ていることを忘れずに。株式投資では「その次はどうなる」という想像力を働かせることが重要です。
機会は短く、待つは長い
株式市場には、長年その世界に携わってきた人たちに伝わる「格言」があります。その中の1つに「機会は短く、待つは長い」というものがあります。
株式投資では絶好の「買い」のチャンスはそうそうありません。じっくりと待ち、その機会を見極めることができる人には、大きな成果を上げるチャンスが巡ってきます。
株式投資での「チャンス」といわれるのは、景気が最悪期を脱して株価が上昇に転じ始めた頃、景気も株価も低迷を続けている中での最も安い時期、景気回復期の上昇を始めてからその途中まで、などといわれます。
こうしたチャンスはそうあるものではありませんし、そのチャンスは短くもあります。最安値だと思ったらさらにその下があった、などということも珍しくありません。
しかし、いつまでも眺めているだけでは先に進めません。まず1つ、「この会社は将来性がある」「この会社が持つ技術や商品、資産はきっとこれから脚光を浴びる」そんな会社を見つけ、最初の一歩を踏み出してみてください。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役
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