お葬式のかたちはどう変わる? オンライン葬儀ってどんなもの?
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月8日 12時10分
コロナ禍は、大事な人との別れの場にも新しい変化をもたらし、私たちの価値観を揺さぶっています。葬儀事情について、コロナ前からの傾向と現状を見ていきましょう。
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葬儀業者に過去5年間の葬儀種類の増減を聞いた、平成29年の調査結果を見てみましょう。
葬儀の種類ごとに、増加か減少かを聞いたものです(複数回答)。一般葬が増加傾向との回答は5.4%で、68.8%の業者が減少傾向と回答しています。反対に、家族葬は大きく増加しています。著者自身も、家族葬にごく親しい知人・友人が少数参列するケースを最近多く目にします。
一般葬の減少には、高齢化が進み故人を知る人が少ない、遠方居住や健康の理由で参列できないといった事情のほか、核家族化や高齢独居の増加などの社会構造の変化も影響していると考えられます。では、このような傾向にコロナ禍はどのような影響を与えたのでしょうか。
コロナ禍での葬儀のかたち
2020年春にコロナ感染が拡大して以降、葬儀での密状態を避けるため、直葬(または火葬)が増えたとのニュースをしばしば見聞きしました。直葬とは、通夜・告別式を行わず、親族や親しい友人が出席して火葬のみを執り行う葬儀を指します。次のグラフをご覧ください。
2019年10~12月を100とした場合の、葬儀の売上高と取扱件数の推移です。件数に比べて売上高の落ち込みが大きくなっています。社葬など大規模葬儀の中止もありますが、費用の安価な直葬や一日葬(通夜を行わず親族や友人などで小規模に執り行う葬儀)への急激なシフトが大きな要因です。
ここで気になるのが1年後の状況です。2020年10月~12月には、件数はコロナ禍以前に回復していますが、売上高は追いついていませんね。
2020年度前半は、「やむをえず」直葬にしたご遺族が多かったのですが、最初の緊急事態宣言が明けて以降、「お別れの場」を設ける葬儀へと次第に戻ってきました。ただ同時に、従来から続く一般葬離れが、コロナ対応でより確かな潮流になり、その受け皿が家族葬になっていることが、この売上高の鈍い回復に現れているといえます。
今後のお葬式は、参列する機会がさらに減ってしまうかもしれません。
オンライン葬儀はあくまで緊急措置なのか?
コロナ禍で葬儀への参列が困難になって以降、オンライン葬儀を提供する葬儀場が増えてきました。オンライン葬儀とは、斎場での葬儀の模様(読経、焼香他)をZOOMやSkypeといったウェブ会議アプリで自宅の参列者に配信するものです。双方向の会話機能でご遺族にお悔やみを伝えることも可能です。
高齢化や遠方在住の理由で参列できない状況は、もともと一定割合存在していましたから、そこへコロナ禍がサービス展開に拍車を掛けたといえます。
自宅で喪服を着て、葬儀の様子をパソコンで見ながら、焼香の際は線香を上げて手のひらを合わせる、という参列方法が多いようです。施設の整った葬儀場はまだ少ないですが、提供各社のホームページ(※)を見ると、おおむね次のように分類できます。
(1)数台のスマホをカメラにし、固定撮影をベースに持ち歩いて近影を組み合わせるなど比較的簡易的な方法
(2)多数の場所や角度から映し、本格的な操作機材を導入して演出効果も考えた提供方法
(3)葬儀場に誰もいない完全オンライン葬儀。生前のスライド上映や寺からの読経ライブ配信等の工夫
費用は、通常の葬儀費用に含め無料のものから、人手やサービス内容で数万~数十万円まで多岐にわたります。葬儀だけでなく、葬家専用ホームページの開設、訃報案内状や芳名帳のウェブ化、香典・供花・弔電・返礼品のオンライン決済や記録動画の編集・配付と、葬儀を取り巻くさまざまな事柄がオンライン化対象になっています。
一方で、映される側の遺族や参列者への配慮の問題や、撮影場所などの法的・道義的なトラブル、高齢者のIT機器の操作不慣れなど課題は多くありますし、心情的に抵抗を持つ方が多いであろうことも想像に難くありません。
しかし、「選べるようになった」ことは、肯定的に受け止めても良いのではないでしょうか。
最後に、故人の側もエンディングノートに”オンライン葬儀の希望有無”を意思表示することが、今後は必要になるかもしれません。
(※)
日比谷花壇のお葬式「リモート葬儀」
東京博善「オンライン葬儀」
(出典)
公正取引委員会「葬儀の取引に関する実態調査報告書」平成29年3月22日
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。
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