4月~6月に働きすぎると損をする? 社会保険料の仕組みとは
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月8日 22時40分
会社の先輩や同僚などから「4月~6月に働きすぎると損になる」と聞いたことはありませんか? つまり、4月~6月はなるべく残業をしないで、早く帰ったほうが得になるという意見です。果たして本当にそうなのでしょうか?
その答えは、「必ずしも損にはならない」です。
たしかに、社会保険料は4月から6月の給与をベースに算定されるので、保険料を抑えられれば得になるように感じます。しかし、社会保険料が安くなると、厚生年金や介護保険などが減ることにつながりますので、その減額分を合算すると、一概には得とも損ともいえないということになります。
今回は、社会保険料の仕組みを確認することで、4月~6月に働きすぎることに関して、理解を深めてみたいと思います。
社会保険料とは?
社会保険料は、毎月会社員の給料から天引きされている「健康保険料」や「厚生年金保険料」「介護保険料」があります。冒頭説明しましたように、この保険料が、4月から6月の給与をベースに算定されます。
それぞれの保険料について、もう少し詳しく見ていきましょう。
1.健康保険料
健康保険としては、自営業者や非正規雇用者などが加入している国民健康保険や公務員が加入している共済組合、会社員であれば健康保険組合や協会けんぽ(旧政管健保)の保険があります。病気になり病院で受診したり、入院したりしたときに備えて保険料を支払うものです。
2.厚生年金保険料
厚生年金保険の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率をかけて計算され、事業主と被保険者とが半分ずつ負担します。
また、厚生年金保険の保険料率は、年金制度改正に基づき平成16年から段階的に引き上げられてきましたが、平成29年9月を最後に引き上げが終了し、厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。
(引用・一部抜粋:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(※1))
3.介護保険料
介護保険制度は、介護が必要な高齢者を社会全体で支える仕組みであり、公費(税金)や高齢者の介護保険料のほか、40歳から64歳までの健康保険の加入者(介護保険第2被保険者)の介護保険料(労使折半)等により支えられている制度です。
満40歳に達すると、介護保険料の徴収がスタートします。「満40歳に達する」とは、40歳の誕生日の前日のことをいいます。この日が属する月から第2号被保険者となります。
保険料はどうやって決まる?
会社員の場合、社会保険料は「標準報酬月額」で決まってきます。実は、この「標準報酬月額」が4月~6月の給与から算出されます。したがって、その期間に残業などをして給料が増えると、「標準報酬月額」が増えるため、それをベースに算出される社会保料が上がるという仕組みになっています。
■標準報酬月額とは?
健康保険・厚生年金保険では、事業主から被保険者へわたす毎月の給料などの報酬を、例えば「月額」というような区切りで分けた標準報酬月額と、税引前の賞与総額から1000円未満を切り捨てた標準賞与額(健康保険は年度の累計額573万円、厚生年金保険は1ヶ月あたり150万円が上限)を設定し、保険料の額や保険給付の額を計算します。
健康保険制度の標準報酬月額は、健康保険は第1級の5万8000円から第50級の139万円までの全50等級に分けられています。また、健康保険の場合、標準報酬月額の上限該当者が、3月31日現在で全被保険者の1.5%を超えたときは、政令により、標準報酬月額の上限を改定することができます(その年の9月1日から一定範囲となります)。
なお、介護保険料も、健康保険・厚生年金保険同様に、基本的に「標準報酬月額」に応じて、金額が増えます。
■報酬の範囲は?
標準報酬の対象となる報酬は、
●勤務地手当
●役付手当
●家族手当
●住宅手当
●通勤手当
●残業手当
などです。
労働の対償として支給される事業所からの現金、または現物を指します。また、年に4回以上支給される場合の賞与についても、標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。
(引用・一部抜粋:全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?」(※2))
(※1)日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
(※2)全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?」
(出典)
厚生労働省「我が国の医療保険について」
全国健康保険協会「茨城支部 介護保険制度と介護保険料について」
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
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