ビットコインはどこへ行くのか? 急騰後の急落と今後の行方
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月14日 9時10分
ビットコインの価格が下がっています。2021年4月12日に1ビットコイン当たり700万円を超えたと思ったら、5月17日には一時340万円台まで下がり、記事執筆時点の6月4日現在は400万円を少し超えたところで推移しています。 ビットコインの急落をもたらした原因はいくつか挙げられますが、その原因を説明するとともに、今後のビットコインの行方を占ってみたいと思います。
ビットコイン下落のきっかけ
ビットコイン価格の下落のきっかけとなったのは、電気自動車の開発で注目されていたテスラの社長のイーロン・マスク氏のツイッターです。
同氏は、電気自動車を推進するだけでなく、ビットコインは未来の通貨であるといって、ビットコインへの投資を推奨してきました。
ところが、2021年5月13日のツイッターで、「テスラは自動車購入代金のビットコインによる決済を停止する。ビットコインのマイニングや取引が石炭をはじめとする化石燃料の消費量を急増させている。環境に大きな負担をかけるようでは未来の通貨にはなりえない」と宣言し、ビットコインがいかに電力を消費しているかを示すグラフを載せました。
その後、「テスラは保持しているビットコインを売却しない」とも宣言しましたが、インフルエンサーであるイーロン・マスク氏がストップをかけたと市場は受け止め、5月17日にはビットコインは一時340万円台と最高値の約半値まで売り込まれました。
イーロン・マスク氏の発言とほぼ同時期に、各国政府もビットコインの規制に動き出しました。5月20日には、米国財務省は 1万ドル(約110万円)以上の仮想通貨資産の送金をIRSに報告することを義務付けることを発表しました。
また、5月21日には世界最大のビットコイン生産国である中国政府が、ビットコインのマイニング(採掘)や取引を取り締まる方針を公表しました。
ビットコインはマイニング(採掘)によって生産されます。マイニングに規制をかけるということは、中国政府も環境重視の政策に転換したのかといわれています。
2020年末からのビットコイン急騰の背景とその問題点
2020年末から2021年4月までのビットコイン高騰の背景は次のとおりです。
1. コロナ禍による金融緩和マネーがビットコイン市場にも流れ込んだこと
2. ビットコインが改ざん不能のITの世界における「金」として注目されだし、「コロナ禍における高騰市場」という不安定な状況下で、金と同様、価値の変わらないものを求める人たちが高騰の後押しをしたこと
3. ビットコインが主要な金融資産の1つとして市場から見なされるようになり、十分な流動性を確保するようになったこと
4. これらの動きを受けた機関投資家やヘッジファンドなどのプロの投資家がビットコインの市場に参入したこと
5. PayPalなどの主要な決済業者がビットコインを決済手段として使用することを表明したこと
ただし、それらの動きはポジティブな要素とともに、バブル的な要素および本質的な問題点も含んでいました。問題点を列挙すると次のとおりです。
1. 価格が乱高下するビットコインは決済手段としては向かない。
2. ビットコインのマイニングには大量の電力を使い、環境負荷が大きい。
米国はバイデン政権に代わってから、環境重視に方向転換しており、電力を大量消費するビットコインは環境負荷が大きいものとしてネガティブにとらえられる傾向にある。
3. ビットコインなどの仮想通貨はマネーロンダリングの温床になる危険があるので、米国をはじめとする世界の主要国政府は以前からビットコインへの規制の強化を考えていたが、今回の価格の急騰でその動きが強くなった。それが米国財務省の仮想通貨の送金規制に表れている。
ビットコインの行方
それではビットコインはこれらからどこへ行くのでしょうか?
今回の下落では、決済手段に使うというバブル的な要素がはじけ、電力消費増加とマネーロンダリングの手段になりやすいという本質的な問題が浮き彫りにされました。
電力消費については必ずしも化石燃料だけでなく、水力も含めた再生エネルギーの使用も可能です。最大の問題は仮想通貨を否定的にとらえる各国政府の動きでしょうが、ある程度の規制を受けながら、ビットコインは将来的には徐々に伸びていくかもしれません。
いずれにせよ、悪材料は全て出し尽くしたのが現在の状況ということができます。ビットコインの行方を占うのには、長期的な視点が欠かせないといえるでしょう。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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