老後を考えたらフリーランスには必須? 小規模企業共済とは
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月13日 9時10分
「老後2000万円問題」とは、金融庁の金融審議会が、老後は公的年金以外に2000万円が必要だという報告書を発表したことが発端となり、大きな議論を呼び起こした問題です。 すでに皆さんご存じかと思いますが、2000万円が必要というのはあくまでモデル的なもので、人によって老後の必要な額は異なります。ぜいたくをする人、節約生活をする人、老後も働き続ける人など、個人の暮らし方で違ってきますので、すべての人が老後に2000万円が必要というのは乱暴な結論でした。 しかし、老後に向けてそれなりの準備をすることは必要でしょう。特に、フリーランスや個人事業主は一般的な会社員のように退職金制度を企業が準備してくれることはありませんので、退職金を自分で準備するか、退職金がないことを前提に働き続けることが必要になります。 ただし、健康でいつまでも働き続けられるとは限りません。したがって、フリーランスや個人事業主といえども、老後資金の準備は検討必須のことと考えます。 今回は、そういった方々のための退職金制度ともいえる「小規模企業共済」について紹介します。
小規模企業共済とは?
1.小規模企業共済とは
小規模企業共済制度は、国の機関である独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が運営しています。小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。
現在、全国で約147万人(2020年3月現在)の方が加入されています。掛金は全額を所得控除できるので、節税効果もある制度です。
2.設立の趣旨は?
主に2つあります。
1つは、小規模企業の経営者や個人事業主が廃業や退職の事態に陥った際に、その後の生活を安定させたり、事業の再建に備えたりできるようにすることです。もう1つは、小規模企業経営者や個人事業主は一般の労働者・従業員と比べ、社会保険や労働保険など各種制度の恩恵を受けることが少なかったため、社会保障政策の不備を補充する機能を果たすことでした。
同制度は、小規模企業の健全な発達を促すとともに、その従事者の生活が一般の労働者・従業員の生活と均衡するための手がかりの1つとして生み出され、時代や社会の変化とともに制度の内容が拡充され、現在に至ります。
(引用・抜粋:中小機構「小規模企業共済 沿革」(※1))
3.どんな人が加入できるの?
次のいずれかに該当する場合に加入できます。
(1)建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員。
(2)商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員。
(3)事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員。
(4)常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員。
(5)常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員。
(6)上記(1)と(2)に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)。
(引用・抜粋:TKC企業共済会「小規模企業共済Q&A」(※2))
小規模企業共済のメリットとデメリットは?
<メリット>
(1)掛金は加入後も増減可能
月々の掛金は1000円~7万円まで500円単位で自由に設定が可能ですので、ご自分のライフプランや支払い可能な範囲で自由に選択ができます。また、加入後も増額・減額できるので、フレキシブルに活用することができます。
(2)節税効果がある
確定申告を行う際に、掛金の全額を小規模企業共済金控除として、課税対象となる所得から控除できるため、高い節税効果があります。
(3)共済金の受け取りは一括・分割どちらでも可能で、税制メリットがある
共済金は、満期や満額はありませんが、事業を廃業した場合、退職した場合などの請求事由が発生した際に受け取ることができます。その受取方法は、「一括受け取り」「分割受け取り」「一括受け取りと分割受け取りの併用」の3つの方法から選択することが可能です。
なお、一括受け取りの場合は退職所得扱いとなり、分割受け取りの場合は公的年金等の雑所得扱いとなり、それぞれ税制メリットもあります。
(4)低金利の貸付制度を利用できる
契約者の方は、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用できます。低金利で、即日貸付けも可能です。もしものときに、迅速に事業資金を借り入れできる一般貸付制度、疾病・負傷で被害を受けた際に借り入れできる傷病災害時貸付など、さまざまな貸付制度がありますので、いざという時には有効です。
<デメリット>
(1)納付月数が要件を満たさないと掛金合計を下回る
掛金納付月数が6ヶ月未満の場合は、共済金を受け取ることができません。また、12ヶ月未満の場合は、準共済金、解約手当金は受け取ることができません。
(2)事業規模は大きいと加入できない
前述のとおり、小規模企業者を対象にしているので、従業員数が一定数を超えるなど事業規模が大きいと加入できません。加入条件の確認が必要です。
(引用・一部抜粋:中小機構「小規模企業共済」(※3))
(※1)中小機構「小規模企業共済 沿革」
(※2)TKC企業共済会「小規模企業共済Q&A」
(※3/その他出典・参考)
中小機構「小規模企業共済」
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
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