年収3000万円以上でも住宅ローン控除を受けられるって聞いたのですが、本当ですか?
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月17日 10時10分
住宅ローン控除の適用要件に「合計所得金額が3000万円以下であること」とあります。したがって、年収が3000万円以上の方は住宅ローン控除を受けることができないと思われがちですが、そうではありません。 今回は年収と所得の違い、そして年収3000万円以上でも住宅ローン控除を受けることができるケースについて解説します。
住宅ローン控除を受けるための年収制限とは?
住宅ローン控除の適用要件の中に、「控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であること」と記載されているとおり、「合計所得=年収」ではない点に注意が必要です。
合計所得に含まれる所得の内容
では、どのような所得が合計所得に含まれるのでしょうか。具体的には以下の所得が挙げられます。
1.給料などの総所得金額
2.株式の配当に関わる利子所得や配当所得
3.株式の譲渡所得
4.先物取引の雑所得
5.不動産の譲渡所得(特別控除前の金額)
6.山林所得
7.退職金所得
(参考:国税庁「合計所得金額3000万円の判定」(※))
収入と所得とは違う? 所得金額の計算方法
「年収」と「所得」は違います。例えば、給与収入が3000万円だった場合、所得税や住民税などの計算を行う際には「給与所得控除」が差し引かれます。この収入から控除額を差し引いた額が所得となります。では、上で挙げた所得金額を計算する方法について説明します。
■給与所得
収入金額から、給与所得控除額および特定支出控除額を差し引いたものが給与所得額です。
■利子所得や配当所得
利子所得は、利子による収入がそのまま利子所得として扱われます。配当所得については、収入金額から株式などの元本取得のために要した、負債の利子を差し引いたものが所得額です。
■株式や不動産の譲渡所得
株式の譲渡所得は、収入金額からその株式の取得価額などの経費を差し引き、さらに特別控除額を引いたものが所得金額です。
■先物取引の雑所得
先物取引は、その取引で得た収入から経費を差し引いたものが所得額です。
■山林所得
山林所得は、収入金額から必要経費を差し引き、さらに特別控除額を引いたものが所得額です。
■退職所得
退職金を受け取った場合、その金額から退職所得控除額を差し引き、さらにその金額の2分の1が退職所得です。
■事業所得および不動産所得
自営業者や不動産の貸し付けなどによって収入を得ている場合は、それによって得た収入から経費を差し引き、さらに適用がある場合は事業専従者控除額などを差し引いた金額が所得金額です。
もしも、純損失や雑損失の繰越控除、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除、特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除、上場株式等の譲渡損失の繰越控除などの適用がある場合には、その適用前の金額が所得金額です。
給与所得が3000万円以下になる基準とは?
給与収入が3000万円以上となった場合に、給与所得が3000万円以下になる基準とはどのくらいなのでしょうか。
給与所得控除の額は、給与収入の額によって異なります。2021年からは年収が850万円を超えた場合は一律195万円となっています。したがって、年収3195万円以下であれば、給与所得控除適用した結果の給与所得額が3000万円以下となり、住宅ローン控除を受けることができます。
対象となるのは住宅ローン控除を受けようとする年のみ
また、よく誤解されがちなのが、3000万円を超えた場合、それから後の住宅ローン控除は受けられないのでは、という不安です。しかし、あくまでも基準は「住宅ローン控除を受けようとする年の所得」です。したがって、翌年に何らかの理由で収入が減った場合は、住宅ローン控除を受けることができる可能性も十分にあります。
まとめ
給与所得のみの方は、年末調整で所得税の計算が自動的に行われることから、実際の所得額がどのくらいなのか、詳しく把握していない方もいらっしゃるかもしれません。自営業者の方や個人事業主の方であれば、ご自身で確定申告を行っているケースが多く、収入から経費を引いた額を所得金額として、最終的な税額を計算する流れは身についているかもしれません。
給与所得者の場合は、源泉徴収票の内容を確認し、自分の収入額、そしてそれから給与所得控除がいくら引かれているのかを確認してみましょう。2年目以降の住宅ローン控除は年末調整で行うことができますので、はっきりした年収額が分からない場合は、年末調整で申告して確認を行うことをお勧めします。
(※)国税庁「合計所得金額3000万円の判定」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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