相続登記の義務化は いつから始まる?
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月30日 23時0分
![相続登記の義務化は いつから始まる?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_108594_0-small.jpg)
皆さんは、ご実家の土地、建物がどのように登記されているかをご存じでしょうか? 現実的には、過去に相続が発生していても相続登記がなされないまま放置され、はるか昔に亡くなった故人の名義のままとなっているケースも多くあるようです。 なぜ、相続登記が放置されてしまうのかを一言でいえば「特に困らないから」との回答となるでしょう。このような問題を契機として、相続登記の義務化に関する法改正が成立しました。 今回は、相続登記の義務化の内容や意義について確認してみたいと思います。
身近な事例で考える
例えば、ご両親が地方で先祖から承継した土地に家を建てて、2人だけで住んでいたとします。
あなたは就職を契機に東京に引っ越され、その後結婚し、東京で新たな家庭を築いています。あなたには兄が1人おり、兄も同様に大阪で家庭を築いているとしましょう。
数年前に父が他界し、その後は母が実家を相続して1人で住んでいました。その際に、母は相続登記の手続きは一切せず、土地と建物は父の名義のままとなっていました。そして数年後に母が亡くなり、子への相続が発生しました。実家の不動産は兄が相続することとなりましたが、この時点で父名義のまま相続登記がなされていなかった事実に初めて気づきました。
この時点で、相続人である兄に登記名義を移すためには、過去にさかのぼって問題を解決していく必要があります。つまり、父から母へ、母から兄への相続の事実を確認する必要があります。
例えば、相続登記には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要となりますが、この場合には直近の母の戸籍謄本とともに、父の戸籍謄本も必要となるのです。
上記の事例は、最もシンプルな例といえるでしょう。
現実の世界では、相続登記がなされないまま長期間放置されてきたことで、相続人自身がすでに他界していたり、代襲相続の発生など、所有権者が多数となり、より複雑化しているケースが多くあります。
相続登記が放置されることによる影響
現在、問題となっているのは「所有者不明土地」の増加が挙げられます。その発端となった理由として最も多いのが、相続登記をしないまま放置されたことと いわれています。
つまり、不動産登記簿や固定資産課税台帳などの所有者の情報が正しく更新されていないため、台帳ごとに所有者が違うなど、真の所有者を容易に特定することが困難となっていることが原因となっています。
また、所有者が特定できたとしても、所有者の現在の転居先の住所などが分からないため、連絡が取れないなどの問題も発生しています。
このような状況で「所有者不明土地」が増加し続けると、所有者が分からないままでは売却や賃貸など取引することができないため、放置されることになります。
また、その土地の上に建っている建物も放置されていることで老朽化が進み、近隣への悪影響が出るなどの問題も顕在化してきています。
相続登記が義務化へ
2021年4月に所有者不明土地に関係する法改正が国会で成立し、2024年(公布から3年以内)に施行となる予定です。不動産登記法を中心とする主な改正点は以下のとおりです。
(1)相続登記の義務化
不動産を所有する相続人に対して、その取得を知ってから3年以内の相続登記が義務化されます。遺贈を受けた場合も同様です。
また、正当な理由なく相続登記を怠った場合には、10万円以下の過料を科すとされました。
(2)相続人申告登記の新設
相続人が法定相続人であることを申し出る制度として新設されます。この申請により、いったん相続登記の義務は免れますが、その後に遺産分割が行われると登記義務が発生します。
(3)住所・氏名変更登記の義務化
住所や氏名が変更となった場合、2年以内に変更登記することが義務化されます。また、正当な理由なく変更登記を怠った場合、5万円以下の過料を科すとされました。
まとめ
その他にも、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が2021年4月に成立しています。
これにより、相続または遺贈によって取得した土地を手放して、国庫に帰属させることができるようになります。この制度では、審査手数料のほか、10年分の土地管理相当額が負担金として徴収されることになります。
将来的に多数の方が直面するであろう不動産相続について、相続登記が義務化されることで所有者不明土地の問題が解消され、より円滑に管理、利用されていくことが望まれます。
これを契機に、皆さんも実家の不動産の登記の記載内容について関心を持たれることをお勧めいたします。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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