公的年金における「カラ期間」。受給額にどう影響する?
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月24日 23時30分
![公的年金における「カラ期間」。受給額にどう影響する?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_108829_0-small.jpg)
公的年金の「カラ期間」。なかなか聞きなれないことばですが、「カラ期間」は自身が将来受け取る年金額に影響をおよぼす可能性がありますので、正しく理解しておく必要があります。今回はこの「カラ期間」の意味、そして年金受給額への影響について解説します。
公的年金における「カラ期間」とは?
「カラ期間」とは合算対象期間ともいわれ、公的年金への加入資格があったにもかかわらず加入していなかった時期のことをいいます。現在では、公的年金への加入は強制となっていますが、1986年(昭和61年)に制度が改正されるまでは、公的年金への加入は任意となっていました。そのため、専業主婦や学生などの多くが、あえて加入することを選択せずにいたという背景があります。
とはいえ、任意加入だったからこそ保険料を払わなかったわけで、そのために公的年金の受給資格を得られないということになると、「話が違う」と思う方もいらっしゃることでしょう。したがって、制度改正後は、任意加入だった期間についても加入期間とみなし、その期間を合算することで公的年金の受給資格期間を満たせることになりました。
合算対象期間
ただし、合算できる期間については任意加入だった時期によって異なります。
■昭和36年3月31日以前の期間
この期間については、厚生年金や共済年金などに加入していた人が対象となり、合算できる期間は厚生年金および共済年金などに加入していた期間となります。
■昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間
この期間においては、厚生年金や共済年金に加入していた人や、その配偶者が合算対象者に含まれます。ほかにも学生であった期間で国民年金に加入していなかったなどの期間も該当します。
(参考:日本年金機構「合算対象期間」(※))
公的年金の受給要件とは?
公的年金を受けるためには、その受給要件を満たす必要があり、一定の期間加入することが必要となっています。現在では加入期間が10年以上あれば公的年金の受給資格を満たしますが、2017年7月までは、加入期間が25年あることが要件となっていました。合算対象期間は、この差を埋めるために設けられた制度ということができます。
要件を満たしても満額もらえるわけではない
ここで気を付けなければならないのは、合算対象期間については加入期間とみなされますが、年金受給額には反映されません。そのため、年金受給額を増やすための措置として以下の制度が用意されています。
■任意加入制度
国民年金への加入は20歳から60歳までですが、希望すれば65歳まで。さらに受給資格期間が10年に満たない場合は70歳まで加入できます。任意加入制度を利用するには、要件を満たす必要がありますが、要件を満たすことで任意加入ができ、その間保険料を払うことによって、受給開始年齢に達した際の年金受給額を増やすことができます。
■追納制度
国民年金には追納の制度が設けられています。この追納の制度を利用することによって、10年前までさかのぼって保険料を納付できます。そうすることによって、将来受給できる老齢基礎年金額を満額まで近づけることができるわけですが、残念ながら「カラ期間」の保険料については追納できません。
後納することはできる?
現在の国民年金の制度には後納の制度はありません。ただ、以前は後納の制度が存在し、過去5年間にさかのぼって後納できる「後納制度」や、専業主婦(夫)などの手続き漏れを解消するため、最大10年分の保険料を納めることができる「特定期間該当届」の制度が設けられていました。しかし、いずれも2018年(平成30年)で終了しています。
まとめ
国民年金が強制加入となったのは1986年ですので、もう35年も前です。ただ、老齢基礎年金を満額もらうためには、20歳から60歳までの40年間分の保険料を納める必要があります。したがって、受給資格はあるものの、満額受給することができないという人はまだ存在するでしょう。
もし、60歳になった時点で自分にカラ期間があることが分かっている場合は、ぜひ任意加入制度の利用を検討するのも1つです。任意加入制度を利用できる要件には、保険料納付期間が40年(480ヶ月)未満であることが挙げられています。
そのほか、繰り上げ受給を受けていないことや、厚生年金に加入していないこと、そして年齢の要件がありますが、それらをすべて満たせば65歳まで加入できます。
毎年送られてくるねんきん定期便などでカラ期間がないか、このまま保険料を納付することで満額受給できるのかどうかを確認し、満額受給できないことが分かった場合は、60歳以降も保険料を納付し受給額を満額に近づけるように検討するのもよいのではないでしょうか。
出典
(※)日本年金機構「合算対象期間」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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