【FP相談】扶養内と扶養外、どちらが良いですか?
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月1日 11時0分
結婚や出産、配偶者の転勤などのライフイベントは働き方に大きな影響を与えます。その中でも、出産を機に家事・育児と仕事の両立のために働き方を見直す人は多いと思います。 今回は次の事例を元に、妻の出産後の働き方について考えてみます。 新婚のA子さん(28歳)は、現在会社員です。今の会社には大学卒業後から勤めています。子どもが2人以上ほしいA子さんは、複数回産休・育休を取得すること、子育てしながら正社員として働き続けることに、精神的・体力的に少し不安があります。 しかし、ゆくゆくは子どもの教育資金や住宅ローンなどが必要になることから、経済的な意味で専業主婦になることにもためらいがあります。 そこで、A子さんが出産後に正社員を続ける場合のメリット・デメリット、夫の扶養内でパート等をする場合のメリット・デメリットを考えてみましょう。
「扶養の範囲内」って?
そもそも「扶養」とは何でしょうか?扶養とは、独立して生計を営めない家族を経済的に援助することをいいます。そして、扶養には税制上の扶養と、社会保険上の扶養の2種類があります。
税制上の扶養は、妻(夫)のパート収入に対する所得税や住民税の非課税、夫(妻)の収入に対する配偶者控除、配偶者特別控除に関するものをいい、社会保険上の扶養は、健康保険と年金に関するものをいいます。
そして、妻(夫)がいくら以上収入を得ると扶養から外れるのかを表すものとして使われるのが「〇〇円の壁」ということばです。
100万円、103万円、106万円、130万円、150万円、201.6万円というさまざまな壁がありますが、家計への影響が最も大きいのが130万円の壁です。
妻(夫)の収入が130万円(※)を超えると社会保険上の扶養から外れ、自分で社会保険料を負担しなければならなくなります。
※一定の要件を満たす場合は、妻(夫)の収入が106万円を超えると社会保険上の扶養から外れます。
今回の事例では、この130万円以下を扶養内として考えます。
正社員を続けるメリット・デメリット
正社員を続ける1番のメリットは、収入が多い点です。
時短勤務などを利用すれば妊娠前より収入は減りますが、収入は安定しており、ボーナスや残業代、各種手当が支給される点や、退職金が出ることも多い(出ない企業もあります)など、収入面のメリットは大きいといえます。
また、厚生年金に加入するため、老後に受け取る年金額を増やすことができます。さらに昇給や昇進などの機会もあり、キャリア形成がしやすい点、研修制度、福利厚生などが充実している点も大きな魅力です。
一方、正社員を続ける上でのデメリットは、残業や休日出勤の必要がある場合は応じなくてはならない点や、異動や転勤の可能性があるなど勤務形態によるもののほかに、仕事が残っているのに他の社員より先に退社する申し訳なさといった精神面、家事・育児と仕事との両立の難しさなどの時間面、体力面の負担を挙げる人が多いようです。
A子さんのように複数の子どもを望む場合、産休・育休を複数回取得することへの精神的な負担を感じる人も少なくありません。
また、金銭面では、世帯の所得が増えることにより保育料が高くなる点(満3歳になった後の4月以降無料)や、延長保育、病児保育などの利用、家事・育児と仕事の両立のための時短家電の購入、総菜や定期食材宅配サービスなどの利用により支出が増える点などに注意が必要です。
パートとして扶養内で働くメリット・デメリット
パートで働くメリットには、自宅近くで働きやすい、短時間からでも働きやすい、定時で帰りやすい、休みを取りやすいなど、生活に合わせやすい点が挙げられます。
また、求人数が多く、未経験者歓迎の仕事もあることから、新しいことにチャレンジしやすい点も特徴です。さらに、夫(妻)の勤務先によっては妻(夫)を扶養している場合には、家族手当などが支給される場合があります。
パートで働くデメリットは、仕事で成果を上げても時給に反映されにくい点や、ボーナスや退職金がもらえない場合が多い点、働きたくてもシフトを減らされてしまうことがある点など、収入に関するものが多いです。
その他、大きな仕事を任せてもらいにくい点や、福利厚生や研修制度が正社員と比べて劣る点など、やりがいやキャリア形成についても正社員との差が大きいです。
出産後の働き方は将来を見据えて選んで
出産後の働き方を考えるにはまず、どのような生活をしたいか、生活の中で何を重視したいかを考え、家族とよく話し合うことが大切です。
また、教育資金や住宅購入資金、老後資金など、これから必要になる金額を考えてみると、目指す収入の目安になります。
一般的には、収入やキャリア、福利厚生などを優先したいなら正社員、時間の融通を利かせたいならパートを選択する場合が多いです。しかし、育児はいつまでも続くわけではありません。
5年後、あるいは10年後、子どもの手が離れたらどうしたいのかもイメージしてみましょう。出産・育児をしていると、右肩上がりでキャリアアップを目指すのは難しいのが現状です。
キャリアチェンジや時にはキャリアダウン・キャリアの中断もありえます。一方で、会社で働くことだけがキャリアにつながるわけではなく、さまざまな経験を次のキャリアに生かすことも可能です。
パートとして未経験の仕事に就き、次の仕事に生かすことはもちろん、町内会やPTA活動、ボランティアや習い事、ママ友との関わりの中からも将来の仕事で生かせるものが見つかるかもしれません。
生活の中で重視したいことや仕事に求めるものは個人によって違いますし、ライフステージとともに変わっていきます。現状だけでなく、将来を見据えて理想の働き方を考えましょう。
執筆者:宮野真弓
FPオフィスみのりあ代表、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
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