働きすぎると年金停止も? シニア世代が選択するべき働き方とは
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月1日 23時30分
![働きすぎると年金停止も? シニア世代が選択するべき働き方とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_109600_0-small.jpg)
現在の老齢年金制度において、仕事をしており収入がある場合には、その収入額に応じて支給停止の措置が取られています。 これは老齢厚生年金に当てはまる措置ですが、高齢者雇用を促進する時代において、内容がそぐわない点も多いことから、支給停止の基準が見直され始めています。
老齢厚生年金の支給停止基準とは?
老齢厚生年金を受給しており、なおかつ仕事をして収入がある方については、その収入に応じて支給停止の措置が取られます。そしてその基準は年齢によって区分されています。
■60歳から64歳
60歳から65歳未満で企業に勤めて収入がある方(厚生年金被保険者)については、総報酬月額相当額と年金の基本月額の合計が28万円を超えると全額支給停止の対象となります。
この場合の基本月額とは、特別支給の老齢厚生年金月額のことで、また、総報酬月額とは(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12です。
■65歳以上
65歳以上で収入がある場合は、総報酬月額相当額と年金の基本月額の合計が47万円を超える場合に支給停止となります。
したがって、老齢厚生年金を受給しながら働く場合は、年金額と報酬月額によって受け取れる年金額が少なくなる、もしくは受給できないということになります。
(出典:日本年金機構「在職老齢年金の支給停止基準額」(※1))
改正によって支給停止の範囲が変わる
2020年(令和2)年に成立した改正年金法により、今後は仕事をしていて年金を受け取る際の、受給できる年金の額が増加することになりました。
■60歳から64歳
60歳から64歳までの収入がある方については、改正前だと基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超えると全額支給停止となっていましたが、今回の改正により、その基準が47万円まで引き上げられることになりました。
■65歳以上
厚生年金の適用事業所で働いていれば、原則70歳まで厚生年金保険の加入義務があります。そして加入した期間と給与の額が、受け取る年金額に反映されます。
現在の制度では、すでに老齢厚生年金の受給を開始している場合、65歳以降に働いた分が年金額に反映されるのは退職時または70歳到達時となっており、65歳で厚生年金の受給を開始して70歳まで厚生年金の保険料を支払いながら働いていても、70歳になるまでの5年間年金の額は変わらないことになっています。
しかし今回の改正により、年金額が毎年見直されることとなったため、納めた保険料が在職中に年金額に反映されることになり、年金を受給しながら働く人においては、毎年少しずつ受け取る年金額が増えていくことになります。
ちなみにこれらの改正内容の施行時期は2022年4月からとなっています。
(出典:厚生労働省「年金制度改正法」(※2))
変わる高齢者の雇用方法
また、高齢者雇用安定法の改正により、高齢者の雇用方法も見直されることとなりました。
■定年が65歳から70歳に
現在の高齢者雇用安定法では、企業に対して65歳までの雇用を義務付けています。しかし、今回の改正により、企業に対しては70歳まで雇用の機会を与える努力を行うこととしました。
65歳から70歳までの雇用形態については、今までのスキルを生かして独立・開業し、社員として行っていた仕事の一部を、業務委託契約を結んで請け負うというようなケースも認められることになりました。
したがって、雇用関係はなくなりますが、企業から業務を請け負って仕事をする、つまりフリーランス的な働き方に移行することも、現在では可能となっています。
フリーランスのような働き方であれば、時間の自由も増すことから、体への負担も考慮しながら働くことができるかもしれません。
また、社会貢献事業への従事の機会も確保されることが予定されていますので、そのような働き方を選ぶこともできます。
(出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正」(※3))
まとめ
これまでは60歳の定年まで、できれば65歳まで再雇用で働いて、あとは年金収入を柱に貯蓄を少しずつ取り崩しながら暮らす、というのが一般的なシニア世代の多くの考え方だったかもしれません。
老後資金対策として資産運用への関心が高まっていますが、最も確実で効果的な対策は長く働くことです。したがって、今回の改正は法律面でそれがバックアップされるともいえるでしょう。
年金の面では、在職老齢年金制度によるデメリットが軽減されるとともに、企業型確定拠出年金やiDeCoも含めた年金受取時期の自由度も増します。
老後のライフプランを考える上での幅が広がったことで、フリーランスのような働き方や、事業主が提供する社会貢献事業に従事する働き方などを含め、今まで以上に、いつまでどのように働くかを考えるきっかけになっているといえるのではないでしょうか。
出典
(※1)日本年金機構「在職老齢年金の支給停止基準額が平成31年4月1日より変更になりました」
(※2)厚生労働省「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要」(令和2年6月5日公布)
(※3)厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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