認知症保険、入ったほうがいい?
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月4日 10時0分
昨今、「認知症保険」が増えてきています。認知症になった際にさまざまな意味で助けになるであろうこの認知症保険、やはり入っておいたほうが良いのでしょうか。 認知症を発症しやすい年齢や今後の認知症患者の推移、症状の特徴などを確認し、認知症保険が必要であるかどうかを考えてみましょう。
認知症とは
認知症は、記憶力や認識力、判断力などに障害を受け、社会生活に支障をきたす状態のことをいいます。超高齢化社会を迎え、認知症はもはや誰でも発症する可能性があります。
日本では、65歳以上の高齢者のうち7人に1人が発症するとされています(平成24年度時点)(※1)。認知症の前段階の軽度認知障害(MCI(※2))の人も加えると、4人に1人が発症することになります(※1)。
今後、高齢化社会が加速すればますます認知症は身近にものになっていくと考えられます。
また65歳未満で認知症にかかった場合を、「若年性(じゃくねんせい)認知症」といいますが、全国における若年性認知症の有病者数は約3万8000人です。そのうち50歳以上が8割超を占めるとされています(※3)。
認知症の疾患として代表的なものは、
(1)アルツハイマー型認知症
(2)脳血管性認知症
(3)レビー小体型認知症
(4)前頭側頭型認知症
などがあります。
認知症の代表的な症状としては、
(1)記憶障害:新しいことを記憶できず、ついさっき聞いたことさえ思い出せなくなります。さらに、病気が進行すれば、以前覚えていたはずの記憶も失われていきます。
(2)見当識(けんとうしき)障害:現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど基本的な状況を把握できなくなります。
そのため今日が何月何日かを1日に何回も聞いたり、道に迷ったりします。さらに症状が進むと自分の年齢や家族がわからなくなったりします。
(3)理解・判断力の障害:思考スピードが低下して、2つ以上のことが重なると話している相手が誰だかわからなくなったり、ささいな変化やいつもと違うできごとで混乱をきたしたりするなどの症状が起こりやすくなります。
(4)実行機能障害:同じものを購入してしまう、料理を並行して進められないなど、自分で計画を立てられない、予想外の変化に柔軟に対応できないなど、物事がスムーズに進められなくなります。
(5)感情表現の変化:その場の状況がうまく認識できなくなるため、周りの人が予測しない、思いがけない感情の反応を示すようになります。
(政府広報オンラインより引用(※1))。
認知症は一度発症すると(進行を遅らせる薬は販売されていますが)、現在のところ完全に治す治療方法や薬はないといわれています。
認知症保険
2016年に民間で初めて認知症に対する保険に特化した「認知症保険」が発売されたのを皮切りに各保険会社が競って商品を販売しています。
各社、特色をもった保障内容の保険商品を販売していて、骨折や入院の一時金を付加できる商品や軽度認知障害(MCI)と認定された場合に一時金が給付されるタイプ、また認知症にならないための「予防」のサポートに特化している商品等、さまざまです。
契約年齢も若いうちから予防目的で加入できるタイプから、加入年齢上限が85歳まで幅広いラインアップがあります。
まとめ
「認知症保険」は、入ったほうが良いのでしょうか。
公的な「介護保険」は、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどさまざまなサービスが受けられますが、現金は給付されません。この点、民間の「認知症保険」は現金が給付されます。
認知症を患うと、介護費用、医療費、認知症高齢者見守りサービスなどの経済的な費用負担が重くなります。
例えば、公的介護保険の要介護2・3の場合、1ヶ月の介護費用の平均は、認知症を患っていない場合は3万円ですが、重度の場合は7万5000円になります(※4)。
そのため現金で給付される「認知症保険」は、いざ認知症になったときに大きな助けになる可能性があります。とはいえ、「認知症保険」を数十年も支払い続けることにより現在の家計を圧迫するようでは、本末転倒といえるでしょう。
解約払戻金の有無や、終身認知症保険の場合であれば、支払いがされずに死亡した場合は、死亡給付金が支払われるかなども含めて各保険商品をじっくり比較検討した上で、自分や家族の「認知症保険」加入した場合のメリット・デメリットを判断するのがよいでしょう。
(※1)政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン」
(※2)MCI=Mild Cognitive Impairment 正常と認知症の中間ともいえる状態。MCIの人のうち年間で10~15%が認知症に移行するとされています。
(※3)厚生労働省「若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について(平成21年)」
(※4)家庭経済研究所「認知症の状態別にみた費用」
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、第一種証券外務員、内部管理責任者
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