払ったはずの年金が未納に…! 納付を証明するには?
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月6日 23時0分
ねんきん定期便で、これまでの納付状況が判明することはよく知られているところですが、いざ自分の納付状況を確認したところ、払ったはずの年金が未納扱いになっているというケースももちろんあり得ます。 その際、その納付を証明するためにはどのような手続きが必要となるのでしょうか。
実際にある事務処理誤り
厚生労働省が発表している情報によると、2020(令和2)年度の公的年金業務の事務処理誤り件数は40件となっており、過去10年間を通じて最大の件数となっています。そしてその原因の半数を「確認・決定誤り」が占めていることからも、対応の甘さをうかがい知ることができます。
(参考:日本年金機構「事務処理誤り等(令和3年4月分)について」(※1))
証明するには訂正請求を
実際に年金記録が間違っているのであれば、それを証明する書類を用意し、年金事務所に対して「訂正請求」を行う必要があります。
■請求できる人
訂正請求は誰でもできるわけではなく、以下に当てはまる人が請求できます。
●年金加入者本人
●本人が死亡している場合はその遺族
■請求対象期間
訂正請求できる期間については以下のとおりです。
1.国民年金および厚生年金被保険者期間(国民年金の場合は昭和36年4月1日以降、厚生年金の場合は昭和17年6月1日以降)
2.旧船員保険など、厚生年金保険に統合される以前の被保険者期間
ただし、公務員の共済組合員加入期間などは訂正請求の対象外となることに注意が必要です。また、訂正請求に期限はありませんので、過去の記録に誤りがあると思われる場合はいつでも厚生労働省に対して請求を行うことが可能です。そして、訂正請求の手続きの際の手数料は不要となっています。
訂正請求の際に必要な書類
訂正請求を行う際には、以下の書類をそろえて年金事務所に提出する必要があります。
1.年金記録訂正請求書
2.同意書
3.請求の概要
4.請求内容の概要が分かる資料
請求内容の概要が分かる資料としては、具体的に以下のものが挙げられます。
「年金手帳」「預貯金通帳」「確定申告書(控)」
その他にも「給与明細書」「源泉徴収票」「勤務先の辞令や当時の履歴書」「国民年金手帳」「家計簿」「厚生年金基金加入員証」「厚生年金保険被保険者証」「源泉徴収票」「事業主や総務担当、同僚の名前」「勤務実態を示す当時の写真」があればなお良いといわれています。
しかし、過去のものをしっかり保存している方は少ないと思われますので、複数の資料があるとより安心です。
訂正請求は資料の準備が重要
訂正請求において、すぐに年金事務所で誤りが確認された場合は年金事務所にて訂正を行ってもらえますが、調査が必要な事例であれば年金事務所から厚生労働省の地方厚生局に送られ、そこで調査を行うこととなります。
その際には、関連資料のほか、周辺事情や証言が必要となる場合がありますので、できる限り周囲の人にも協力してもらうようにしましょう。
関連資料としては前述したものが当てはまります。そして、周辺事情としては事業主や関係部署の方の証言が必要となったり、納付方法などの確認が行われたりします。さらに、当時の勤務状況などについて覚えている人の証言が必要となることもあります。
訂正請求の流れ
(引用:厚生労働省「年金記録の訂正請求の流れ」(※2))
実際に訂正請求を行っている人はどのくらいいる?
厚生労働省が発表している資料によると、2021(令和3)年4月に訂正請求を受け付けた件数は370件で、そのうち処理件数は293件と2割程度の案件が未処理のまま翌月に持ち越されていることが分かります。また、平成27年からの累計を見てみると、受付件数3万2083件に対し、処理件数は3万329件と5%の案件が未処理のままであるようです。
また、厚生年金保険は日本年金機構での記録訂正の割合が圧倒的に多く、国民年金は厚生労働省にて調査を行っている割合が多いことが分かります。
(参考:厚生労働省「年金記録に係る訂正請求の受付・処理状況」(※3))
厚生労働省での調査には時間がかかる
年金事務所で対応できるものについてはすぐに訂正してもらえますが、厚生労働省にて調査を行う場合は、請求から地方厚生局長の決定まで5ヶ月間程度かかるといわれています。すでに年金を受け取っている場合、決定結果が受給額に反映されるまでに数ヶ月程度の処理期間が必要となります。
また、決定に不服がある場合は、決定があったことを知った日から3ヶ月以内に審査請求を行うことができます。
まとめ
年金記録に誤りがあり、それを訂正するには、年金事務所に対して訂正請求を行う必要がありますが、その際の資料集めがかなり大変です。できれば、給与明細や源泉徴収票などは保管しておくと安心です。
また、第1号被保険者であれば、納付したことを証明できる領収書や口座引き落としが確認できる通帳を保管しておくようにしましょう。
手続きが大変だからといって途中で心が折れてしまうことがないよう、「納めた保険料は正しく受給するという」気持ちをもって行動するようにしてください。
参考・引用
(※1)日本年金機構「事務処理誤り等(令和3年4月分)について」
(※2)厚生労働省「年金記録の訂正請求の流れ」
(※3)厚生労働省「年金記録に係る訂正請求の受付・処理状況」(令和3年5月25日付)
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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