障害年金ヒント集(16) 「速やかに」それとも「じっくりと」
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月14日 12時0分
![障害年金ヒント集(16) 「速やかに」それとも「じっくりと」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_110765_0-small.jpg)
年金の相談を受けていると、「障害年金をもらいたい。でも、ハードルが高くて……」と悩んでいらっしゃる人がたくさんいることが分かります。 確かに、障害年金を受給するには、いくつものハードルがあります。しかし、取り組み方をちょっと変えると、うまくハードルを越えられる場合もあります。悩んでいる人たちへの受給のためのヒント集です。 第16回は「『速やかに』それとも『じっくりと』」です。
多くの場合は「速やかに取り組む」
裁定請求をすると決めた場合、通常は、できるだけ速やかに取り組むようにします。しかし、急ぐ必要がない場合もあります。
この場合は、落ち着いて自身のペースで取り組めますから、それだけストレスも減り、好都合です。速やかに取り組むべき場合と、じっくりと構えて取り組めばよい場合を考えてみましょう。
65歳が間近に迫っている場合など
まず、速やかに取り組むべき場合です。主に、受給資格と受給総額が関係します。次のとおりです。
【1】65歳が間近に迫っている場合
65歳は、年金制度にとって大きな節目の年齢です。
障害認定日当時には障害等級に該当していなかったけれども、その後に重症化した場合や、障害認定日当時の障害の程度を証明できずに行う事後重症請求は、65歳になると、裁定請求そのものができなくなります。
また、従前の障害と併せて2級以上の障害等級に該当する場合に可能な「初めて2級」の請求も、65歳になる前に2級以上に該当していたことを証明する診断書が必要ですので、受診しておかなければなりません。
いずれも65歳の誕生日の前々日までに対処しなければなりません。
事後重症請求の場合も
【2】余命わずかとみられる場合
遺族年金との関係です。
一般的に、遺族年金を受給するには、亡くなった人の保険料納付要件などが問われますが、亡くなった人が障害等級2級以上の障害厚生(共済)年金の受給権者であった場合は、保険料納付要件が問われませんから、遺族が助かる場合があります。
【3】事後重症請求の場合
事後重症請求で受給が認められると、障害年金は請求月の翌月分から支給されます。
このため、請求月が1ヶ月後になると、受給総額が1ヶ月分だけ少なくなるわけです。月末の31日に請求するのと翌月の1日に請求するのとでは、日数は1日の違いですが、受給総額は1ヶ月分違ってきます。
時効が発生する場合も
【4】時効が発生する場合
障害認定日にさかのぼって請求する遡及(そきゅう)請求で障害年金の受給が認められても、時効の制度によって、受給できるのは直近の5年分だけです。
つまり、5年以上前にさかのぼる遡及請求では、請求月が1ヶ月後になると、受給総額が1ヶ月分少なくなります。
【5】初診日から年月がたっている場合
初診日から年月がたつと、請求作業はそれだけ難しくなりがちです。病院が閉鎖されたり、カルテが廃棄されたり、当時の主治医等が亡くなったり、というように請求者には不利になります。
裁定請求をすると決めたら、当時の病院等に早めに連絡を取り、カルテの保存等を依頼するのが賢明です。
【6】診断書が期限切れになる場合
請求時の診断書には「現症日が請求日前3ヶ月以内」という条件があります。このため、すでに診断書を取得している場合は、その診断書が有効な期間内に裁定請求をする必要があります。
じっくりと取り組めばよい場合
では、じっくりと取り組めばよいのは、どんな場合でしょうか。次の場合です。
【1】障害認定日から1年以内の場合
障害認定日請求の場合、障害認定日から1年以内の裁定請求であれば、診断書は障害認定日当時の1通だけで請求ができます。
これに対して、障害認定日から1年以上たつと、請求時の診断書も必要になります。1年間で障害の状態が変化しているかもしれないからです。
障害認定日当時の診断書は、現症日が認定日以後3ヶ月以内(20歳前障害の場合は、現症日が認定日前後各3ヶ月以内、つまり、認定日を真ん中にして6ヶ月以内)という条件があります。
裁定請求が1ヶ月遅れになっても
【2】遡及が確実で、時効までに年月がある場合
障害認定日請求で遡及して受給権を得ることが傷病の種類などから確実な場合は、慌てる必要がありません。
ただし、上記の「速やかに取り組む」場合の【4】で説明した時効の制度がありますから、5年以上前にさかのぼる遡及請求でない場合に限ります。
【3】診断書等の内容に問題がある場合
裁定請求をいくら急ぐからといって、事実と違う内容の不完全な診断書をそのまま提出するのは、避けたいものです。当然、裁定結果も好ましいものにならないでしょう。
また、そのような診断書を提出すると、日本年金機構に記録として残りますから、例えば、再請求をする場合にも支障になりがちです。
診断書の内容が事実と違う場合は、診断書を作成してくれた医師としっかり話し合い、正しい内容の診断書に書き改めてもらうべきです。たとえ、裁定請求が1ヶ月遅れになっても、やむを得ないと思います。
個々のケースによって異なる
速やかに取り組むべき場合と、じっくりと構えて取り組めばよい場合のどちらに該当するかは、個々のケースによって異なります。
ご自身で判断するのに不安がある場合は、お近くの年金事務所や社会保険労務士など専門家におたずねください。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
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