帳簿や書類を電子保存する方法とは?
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月16日 11時0分
法人であればもちろんのこと、個人事業主であっても請求書や領収書などの書類、総勘定元帳や仕訳帳などの帳簿を紙で保管する場合には、保管スペースの確保やその整理に要する作業負担に悩まされているケースも多いでしょう。 このような状況を踏まえ、以前から「電子帳簿保存法」という法律により、一定の要件を満たせば「紙ではなく、データで保存・管理することを特例として認める」という制度がありました。 2022年1月1日から適用開始となっている電子帳簿保存法の改正では、一部の要件が緩和され、利用しやすくなっています。
電子帳簿保存法とは?
前述のとおり、電子帳簿保存法は、帳簿や書類について紙による保存を不要とすることで保管スペースや什器などをなくすことができたり、ファイリングなどの作業負担の軽減につなげることを目的に1998年に制定された法律です。
しかし、その運用ルールが厳しいなどの理由から導入が思うように進まない状況もありましたが、何度かの法改正を経て、現在は多くの企業、事業者に導入されつつあります。
昨今では、地震や火災、水害などの災害に対する備えのほか、新型コロナウイルスの影響によるテレワークなど在宅勤務へのシフト(勤務形態の変化)といった社会の変化にもマッチした制度であるといえるでしょう。
帳簿・書類の保存方法
電子帳簿保存法では、「電子データ保存」と「スキャナー保存」の2つの保存方法が認められています。
電子データ保存は、国税関係帳簿である仕訳帳、総勘定元帳、その他の帳簿や国税関係書類である貸借対照表、損益計算書、自己が作成する契約書、請求書、領収書などの取引関係書類、さらにはEDI取引やインターネット取引などの電子取引について認められています。
具体的には、法律が求める真実性の確保や可視性の確保の要件を満たした会計ソフト(電子帳簿保存法対応ソフト)などでデータ保存を行います。
スキャナー保存は、相手方から受け取った領収書、請求書、契約書などの取引関係書類を一定の要件の下に電子データに変換して保存する方法です。要件には、入力時間の制限やタイムスタンプの付与、見読可能装置の備え付けなどが定められています。また、解像度などの要件を満たせば、スマートフォンやデジタルカメラでの撮影も認められています。
2022年からの改正点
さらなる経理業務の生産性向上やテレワークなどによる勤務形態の変化を踏まえ、電子帳簿保存法の内容の見直しが図られ、いくつかの要件の緩和がなされています。主な改正点は以下のとおりです。
(1)税務署長による事前承認制度の廃止
これまでは電子帳簿保存法の適用を受けるために、電子データ保存とスキャナー保存のそれぞれについて、所轄の税務署長による事前承認が必要とされていました。改正後は、2021年1月1日以後に備え付けを開始する帳簿や書類については、事前承認は不要となります。
(2)適正事務処理要件の廃止
これまでスキャナー保存については、相互けん制(別人による原本との照合など)や定期検査(社内でのデータと原本の突き合わせなど)といった事務処理を経た後でないと原本の廃棄ができませんでしたが、スキャナー保存後にタイムスタンプ(電子データの日時を証明するスタンプ)を付与することにより、原本の即時廃棄が可能となりました。
(3)重加算税の加重措置
スキャナー保存された電磁的記録に仮装、隠蔽などの不正があった場合の重加算税の加重措置が整備され、10%加重されることとなりました。
まとめ
電子帳簿保存法の適用は、法人のみならず個人事業者にも影響があります。2020年分の所得税の確定申告から基礎控除と青色申告特別控除額が変わりました。
青色申告特別控除を55万円ではなく、これまでどおりの65万円控除として受けるための要件は、「電子申告(e-Taxによる申告)」または「電子帳簿保存」となっています。多くの方が前者の電子申告の利用によって要件を満たしているものと思いますが、電子帳簿保存も要件の選択肢の1つです。10万円の所得控除額の差とはいえ、節税につながる大きな変更点といえます。
個人事業者の方でも、年数を経るごとにその分量が増加する紙の帳簿・書類の保管スペースの確保や、紙の劣化などに悩まされているケースも多いと思います。税務署長への事前承認制度が廃止されたこの機会に、電子帳簿保存を検討されてみてはいかがでしょうか。
出典
国税庁 電子帳簿保存法関係
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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