個人年金保険だけじゃない? 生命保険を老後の資産形成に活用する方法
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月19日 10時30分
お金の心配のない老後生活を送るには公的年金による収入に加え、ある程度の自己資産を準備する必要があります。 老後に備えた自己資産の形成方法として、投資信託などによる資産運用が注目されていますが、投資には元本が保障されないなどのリスクもあり、利用しにくいと感じてしまうこともあるかもしれません。 そこで保険を活用して資産形成を進めていく場合、どのようなポイントに注意していけばいいのかを解説していきます。
預貯金だけでは老後の資産形成が難しい
老後資金を準備するのに投資や保険といった特別な対応が必要な理由として、元本が保障された安全資産である預貯金の金利が近年ほぼゼロ金利状態となっており、利子収入により資産形成を後押しさせることが難しくなってきていることが挙げられます。
つまり、貯蓄によるだけの資産形成では準備額が不足してしまうリスクもあるため、投資信託や貯蓄性のある保険を活用した資産形成が必要とされているのです。
個人年金保険の特徴
保険を用いた老後の資産形成の手段の一つとして、個人年金保険料控除の適用を受けられる「個人年金保険」がよく用いられています。この個人年金保険の基本的な仕組みは、保険料を払い込む期間は死亡保障が受けられ、その後は年金として積み立てた保険料を受け取ることができるというものです。
個人年金保険の特徴として、年金の支払期間や運用方針によって保険の性質が大きく変化する点にあります。そこで、個人年金保険の各ポイントを把握しておきましょう。
【年金の支払期間:確定・有期・終身】
・確定年金:年金の支払期間が10年・15年など一定期間で確定しており、長生きした場合は年金の支払いが終了してしまい収入が不足してしまうおそれがあります。しかし、受取人が期間満了前に死亡した場合でも年金の支払いが継続されます。
・有期年金:確定年金と同様に年金の支払期間が確定していますが、受取人が死亡した場合はその時点で年金の支払いが終了するため、年金の支払開始後に早世した場合は支払った保険料を下回る額しか受け取ることができなくなってしまうおそれがあります。
・終身年金:受取人が生存している限り、期間の定めなく年金の支払いを受けることができます。長生きのリスクには対応できますが、年金の支払開始直後に早世した場合は有期年金と同様に支払った保険料を下回る額しか受け取れないおそれがあります。
【運用方針:定額と変額】
払い込んだ保険料の一部が貯蓄に回され、資産運用による増額を狙いますが、この際、元本割れとなるリスクがあります。定額年金の場合は、このリスクを保険会社が引き受けるため、年金の受取額は定額となりますが、その反面、増加率は低下してしまいます。
変額年金の場合は、資産運用のリスクと成果を保険契約者が引き受けるため、大きな利益を得られる可能性があります。その反面、損失を被った場合は支払った保険料を下回る年金しか受け取れなくなってしまうほか、受け取れる年金額が変動するため、資産形成の進捗(しんちょく)が見通しにくくなるといったデメリットがあります。
貯蓄性のある生命保険を利用するメリット
保険による資産形成は、予定利率が低下しているため、資産の大幅な増加を期待することは難しくなっています。そこで、個人年金保険では元本割れのリスクは生じますが、外貨建てや変額年金などで利率を高めていくことが考えられます。
しかし、年金の受取額が流動的となるため、資産形成の見通しがつきにくく、また、外貨建ての場合は為替変動リスクも加わるため、死亡時の保障が不足するおそれがあります。保険の価値は、万が一の際に必要な保障が得られることにあり、死亡保険金まで変動してしまうのは大きなデメリットです。
一方で貯蓄性のある生命保険では予定利率を高めるため、低解約返戻金型などで元本変動リスクの代わりに流動性リスクを取り入れており、死亡保険金が変動することはありません。一定期間内に保険を解約してしまうと大きく元本割れしますが、老後資金として長期間の資産形成を行う場合には大きなデメリットとはなりにくいでしょう。
まとめ
個人年金保険で老後の資産形成を行う場合、年金の支払期間のタイプや変額・外貨建てといった仕組みを取り入れることによって死亡保険金が不足したり、年金の受取額が支払った保険料を下回ってしまったりするおそれがあります。
これは保険の特徴であるリスクへの備えを損ねてしまう大きなデメリットです。そこで、貯蓄性のある生命保険を活用することで元本変動リスクを排除して受取額も確定させ、資金計画を立てやすくすることができるようになります。
このように特定の保険商品に固執せず、保険内容を把握して自身のニーズにあった保険を選択することをおすすめします。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
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