父の死後、愛人に相続の請求権が発生? 一体それはどんなとき?
ファイナンシャルフィールド / 2021年7月29日 3時20分
![父の死後、愛人に相続の請求権が発生? 一体それはどんなとき?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_112382_0-small.jpg)
テレビドラマや小説で、父親の愛人が相続財産を自分にも分配するように要求するシーンを目にしたことはありませんか? 愛人から相続財産を守り切ることもあれば、逆に財産を奪われてしまうこともありますが、これはあくまでも創作の中でのお話です。 現実の問題として、実際に愛人が遺産を受け取ることはできるのでしょうか。
愛人には相続権がないのが基本
原則論として愛人には相続権がありません。父親の愛人だろうが、息子の愛人だろうが、ドラマや小説のように愛人が押しかけてきたとしても、相続財産を渡す必要はないのです。その理由は民法の規定にあります。
民法では、相続権の範囲を一定の親族に限っています。具体的には、配偶者が常に相続人となり、それに加えて最も相続順位が高い親族の方が相続人になるとされています。
まとめると下記のようになります。
相続順位 | 該当例 |
---|---|
常に相続人となる人 | 亡くなった方の配偶者(妻や夫) |
第1順位 | 亡くなった方の子(子が亡くなっている、または相続権を失っていれば孫。孫も同様の状態であれば、ひ孫) |
第2順位 | 亡くなった方の父母(父母が亡くなっている、または相続権を失っていれば祖父母) |
第3順位 | 亡くなった方の兄弟姉妹(亡くなっている、または相続権を失っていればおい・めい) |
※e-Gov 法令検索 「民法」(第五編 第二章 相続人)より筆者作成
愛人に相続が認められることがある3つのパターン
先に述べたとおり、愛人は相続人ではないので、基本的に相続財産の受け取りが認められません。しかし次の3つのパターンのように、ごく限定的なケースでは愛人でも相続財産の受け取りが認められることがあります。
遺言に記載がある場合
亡くなった方は、遺言によって財産を自由に処分することができます。遺言の中に「○○(愛人の名前)に財産を相続させる」といったように、愛人の方に財産を一部でも残したいという内容の記載があれば、相続財産を受け取る権利を得ることができます。
死因贈与が結ばれている場合
死因贈与とは、いわば「自分が死んだら君に財産をあげるよ」という契約で、贈与の一種です。これは契約になるため、その契約が愛人との間で結ばれており、有効とされれば相続財産を受け取ることができます。
内縁状態にあった場合
愛人が内縁関係にあると判断されれば、特別縁故者として愛人が相続財産を得られることがあります。ただし、これが認められるには相続人がいないこと、家庭裁判所への申し立てが必要となるなど、条件が厳しいものになっています。
愛人に財産を渡さないためにはどうする?
では、遺言や死因贈与などにより愛人に相続財産を持っていかれそうになったら、どうすればよいのでしょうか。主な方法としては2つあります。
1つ目は遺言や契約の不備を見つけ、それらが無効であることを主張するのです。特に遺言は様式が厳格に定められているため、不備により無効となることも珍しくはありません。その他にも、愛人との関係が不倫関係であったというような場合は、公序良俗や倫理に反して無効ということもあり得ます。
2つ目は、遺留分侵害額の請求という権利を行使することです。民法では相続人に対して、最低限これだけは相続財産を取得できるという取り分(遺留分)を認めています。それを取り戻すために遺留分侵害額の請求を行うのです。ただし、この方法では全額ではなく、あくまでも遺留分の範囲でしか取り戻すことができません。
なお、遺留分は亡くなった方の配偶者や子、孫、ひ孫、父母、祖父母にしかなく、兄弟姉妹には存在しません。
相続人 | 遺留分の割合 |
---|---|
父母、祖父母 | 相続財産の3分の1 |
配偶者、子や孫、ひ孫 | 相続財産の2分の1 |
※e-Gov 法令検索 「民法」(第五編 第七章 遺言)より筆者作成
愛人は相続人ではない!相続財産の請求権も基本はナシ
愛人は相続人ではなく、基本的に相続財産を受け取ることができません。ただ、亡くなった方の遺言があったり、死因贈与が結ばれている場合、愛人が相続財産を受け取れることもあります。
しかし、仮に遺言や契約があったとしても、様式の不備や公序良俗に違反することを指摘したり、遺留分侵害額の請求を行使することで財産の全部、または一部を取り戻せるケースもあります。
家族が亡くなったとき、愛人が突然現れて相続財産を奪われそうな状況になったら、速やかに相続に強い弁護士などへ相談するようにしてください。
出典
e-Gov 法令検索 民法
執筆者:柘植輝
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