男性が育休を取得したら?育休ハラスメントの実態
ファイナンシャルフィールド / 2021年8月3日 3時30分
![男性が育休を取得したら?育休ハラスメントの実態](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_112901_0-small.jpg)
2021年6月、育児・介護休業法が改正されました。主に、男性の育休取得を目的とした改正内容になっています。 ただ、現実は、男性の育休取得において、職場のハラスメントがあるようです。厚生労働省の令和2年度「職場のハラスメントに関する実態調査 報告書」(※)より、男性育休に関するハラスメントと改正内容についてお伝えします。
調査の内容
この調査は、過去5年間に勤務先で育児に関わる制度を利用しようとした男性労働者に対して行われました。勤務先の会社の規模としては、大企業から中小企業までさまざまで、下記のような構成になっています。
出典:厚生労働省「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 報告書」(※)
ハラスメントを受けた経験がある人は26%
過去5年間に、育休等ハラスメントを経験した人の割合は約26%です。内容としては、「上司による制度等の利用の請求や、制度等の利用を阻害する言動」が半数を占めます。その次に「同僚による、繰り返しまたは継続的に制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」が多いようです。
このハラスメントの内容からも分かりますが、ハラスメントを行った者として、最も多いのが「上司」で約66%です。ついで、幹部(役員)約34%、同僚約24%となっています。
上司がハラスメントを行ったのであれば、さらにその上の上司に相談という選択肢もあるかもしれませんが、役員や幹部となると、会社に対する信頼や仕事へのモチベーションは下がってしまうでしょう。これでは、育休を取得しようとは思わなくなります。
育休取得をあきらめた理由
実際、ハラスメントを受けてあきらめた制度として、最も多いのが育児休業です。約42%の人が、ハラスメントを受けて育休制度の利用をあきらめているようです。上司や同僚からハラスメントを受け、育休を取りたくても取れなかった人がいるということです。
しかし、これは決して珍しいことではありません。直接、育休取得を阻害するような言動はなかったとしても、取得しないように遠回しに言われたり、取得することを歓迎しない言い方をされたり、このような対応をされると、やはり育休取得をあきらめてしまうでしょう。
また、育休を取得したいと思っていたとしても、社内でそのような情報を耳にすると、育休取得をあきらめる人も出てくるでしょう。
勤務先の認識と対応
一方で、ハラスメントを受けたことを知った勤務先は、事実確認のヒアリングを行ったり(約43%)、相談にのってくれたり(約40%)、解決に向けて行動している割合も多いようです。しかし、そもそもハラスメントを認識していなかった勤務先の割合が約50%あります。ハラスメントを受けたことを伝えなければ、会社は認識しないまま終わってしまいます。
また、ハラスメントを認めた後の勤務先の対応としては、「会社として謝罪をした」が約58%で最も多く、ついで「行為者に謝罪させた」が38%となっています。すべての対応において、必ずしもハラスメントの非を認めるような対応ではないようですが、大多数においては、謝罪をしているようです。
ハラスメント経験者と経験しなかった人の職場の特徴は
ハラスメント経験者の職場とハラスメントを受けたことのない人の職場で、職場の特徴を聞いたアンケートがあるのですが、最も大きな違いのある回答が「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」です。
ハラスメント経験者においては、約50%が該当するようですが、ハラスメント未経験者は約22%しか該当しません。大きな差があり目立ちます。その他、子育てをしている従業員がいない職場は、いる職場よりハラスメント経験者が多くなっています。
改正内容と育休取得率
今回の改正では、育休の分割取得を認めたり、さらに、出産後8週以内なら、男性は2回に分けて育休を取得できたり、柔軟に育休取得ができるようになりました。
同時に、会社に対しては、育休制度を周知させ、育休取得対象の従業員に取得するかどうか確認することが義務付けられました。育休を取得させないような意向確認は認めないと示されていますから、ハラスメントは明らかな法律違反です。
男性の育休取得促進で業務の効率化が進んだり、ワークライフバランスの意識向上によって仕事の改革が行われたりと、育休取得が企業に対して良い影響を与えている例はたくさんあります。
ハラスメントを減少させ、育休取得率を上げるためには、男性が育休を取得することによって得られる効果を企業側にもあることを、企業自身が知ることがポイントの1つといえるのではないでしょうか。
出典
(※)厚生労働省「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 報告書」
(その他のデータも当資料から引用しています)
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ
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