高齢者の再婚。どんなことに注意すべき?
ファイナンシャルフィールド / 2021年8月13日 11時0分
筆者へのご相談のなかで、近年、高齢者の再婚に関する相談が増えています。高齢者の再婚は、お金や相続にまつわる問題が多くあります。詳しく見てみましょう。
親が幸せならばそれで良しなのか?
早くに配偶者を亡くした相談者さまのなかには、その後の人生がとても長く感じ、時間をもてあましていると話す方がいらっしゃいます。
特に、仕事一筋で生活を送ってきた男性は要注意。仕事を辞めた後、自分のコミュニティーを持っていないことが多く、奥さまに依存しがちです。そのような場合、奥さまに先立たれてしまったとしたら、さまざまなことに影響が生じることがあります。
高齢者のなかには「男子厨房(ちゅうぼう)に入るべからず」と言われた時代に育ってきた方もいらっしゃるでしょう。妻の死後に一人暮らしになったからといって、料理だけではなく、掃除や家計管理ができずに困ってしまうというケースもあります。
その時、男性に子どもがいた場合はどうでしょうか。30~50代の子どもであれば、共働きも多い年代です。さらにその子ども(男性からしたら孫)もまだ手がかかる年齢かもしれません。もし母親が先に亡くなったからといって、遺(のこ)された父親の面倒をみるのは、負担に感じる可能性があります。
こういったことから、妻に先立たれた男性のなかには、精神的な側面と実際に生活に困っているという側面から、「再婚」を望む方がいらっしゃいます。しかし、その子どもは、「親が幸せならばそれで良い」と思うのか。必ずしもそうでないかもしれません。
男性は認知症発症率が低い?
令和元年6月に話題になったいわゆる『老後2000万円問題』の金融レポート(金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書:「高齢社会における資産形成・管理」)の中に、非常に興味深いデータが掲載されていました。それは、男女別の亡くなる年齢と認知症発症率です。併せて、男女別の人が亡くなる年齢も添えておきます。
女性は男性よりも長生きですが、認知症発症率も高い傾向となっています。一方男性は、女性よりも認知症発症率が低く、また意外と長生きなのです。
「元気な高齢者」は再婚の可能性を秘めています。例えば、年金受給が多い、資産があるなど、金銭的に余裕はあるが生活そのものを維持することができないという方の場合、自分の身の回りの世話をしてくれる人を求めるということもあるかもしれません。
父親の再婚で資産が他人の手に渡ることも
もし、父親が再婚し後妻がきた場合、子どもはどうするでしょうか。
子どもが自立している場合は、後妻と「養子縁組」をしないこともあります。高齢者の男性の場合、結婚相手は自分より年下の女性である可能性があります。そうすると、かなりの確率で父親が先に他界します。そこで、相続問題が起こるのです。
もし、男性の子どもが1人の場合、父親から100%の相続資産が引き継がれました。しかし、後妻さんが来たことで、遺産分割は下記になります。
■後妻:2分の1
■子ども:2分の1
また、後妻が亡くなった場合には、後妻の兄弟姉妹に相続資産がわたります、もし兄弟姉妹も亡くなっていたならば、そのめいやおいにわたります。もちろん、後妻に子どもがいれば、そちらにわたります。
このように、父親の資産が実の子どもではなく、他人にわたってしまうのです。これでは、子どもにとっては「父親が幸せならばそれで良い」とは言えず、相続問題が起こってしまうかもしれません。
高齢者の再婚は相続対策を万全に
高齢者の再婚が発生したら、婚姻届を出す前に相続について話し合いを万全にするべきだと筆者は考えます。後に遺されるであろう後妻には、遺族年金があります。例えば、後妻には遺族年金では不足する分を現金でおぎない、形のある不動産や有価証券は子どもが受け継ぐようにする、という方法もあるでしょう。
高齢で再婚をするということは、自分の財産の相続を明確に思い描く必要があります。自分の死後、家族・親族の関係や、財産の規模や種類により、複雑な相続になる可能性があります。
「もういいや!」では済まされないのが、相続問題です。子どものためにも、新たに家族に加わる後妻のためにも、相続対策は万全にしておきましょう。
出典
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
執筆者:寺門美和子
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
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