「不動産投資で老後に備える」のメリットとデメリットは?
ファイナンシャルフィールド / 2021年8月13日 12時0分
老後資金を考えるうえで公的年金だけでは心配なので、不足分を貯蓄や資産運用などで備えることが一般的になってきました。 資産運用といえば投資信託などが身近ですが、不動産投資を組み入れる人もいらっしゃるでしょう。不動産投資に与えるコロナの影響はいかがなのでしょう。
不動産投資のキーワード「東京」「ワンルーム」「中古」
「アパートの大家さんになって家賃収入があれば、老後の生活は安泰だろうな」と考え、不動産投資に興味がある人もいらっしゃると思います。
しかし、“リスクを考えるとなかなか踏み切れない”というのが本音ではないでしょうか。大きな悩みは、空室リスクと修繕など管理の面倒さに加えて、住民トラブルや災害リスク等々が考えられます。
投資用不動産を扱う企業に取材をしたところ、「東京」「ワンルーム」「中古」の物件という選択肢があるといいます。該当条件物件に絞って仲介している会社も少なくないとのこと。その理由を整理してみます。
<東京>
(1) 都道府県別転入増加数を見ると、人口が増加しているのは、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・福岡県・沖縄県・滋賀県(「住民基本台帳人口移動報告」(総務省統計局))、明らかに首都圏で人口が増加していることがわかります。
特に東京が増えているのは、大学などへの進学や就職が転入理由として考えられるので、賃貸需要を生む若年層の増加が見込まれます。
(2) 東京駅前や品川駅周辺などの再開発が進み、今後もオフィス仕様のビル建設が予定されているため、人口流入が進むと考えられます。
<ワンルーム>
ファミリータイプの場合、家族それぞれの状況を考える必要があります。通勤だけでなく子どもの保育園や学区なども物件選びのポイントです。決定に時間がかかり、契約がスムーズに進まない可能性が考えられます。
その点ワンルームは基本的には単身者用なので、ファミリータイプと比べると決定が早いことが予想できます。
また、床面積が狭いのでリフォーム費用も少なくて済み、工期も短期間なので、空室期間が少なくて済むメリットがあります。リフォーム費用は賃貸経営のコストの中でも大きなウエイトをしめますので、気を配る必要があります。
<中古>
新築物件は価格が高く、物件を仕入れる段階で費用がかさみます。自分の居住用なら新築に対するこだわりがあるかもしれませんが、賃貸用なので築浅の中古物件が現実的な対象物件となります。
築年数よりもむしろ、通勤至便で駅近などの立地条件が良いほうが空室リスクは少ないかもしれません。耐震基準やハザードマップに照らした立地条件は重要です。
この時期だからこそ、心配な2つのこと
不動産投資熱に水を差すようですが、筆者には心配なことが2つあります。
コロナの影響もあり人流は変化しています。先の図表においても2019年と2020年を比較すると、東京の転入超過数は激減しています。大企業がテレワークを推進し本社オフィスの床面積を縮小しています。また業種によっては、出社しない働き方にシフトする例も増えきています。
少し前までは、子育てに好都合ということなどから「職住近接」(職場近くに住居を持つ)の志向が高まっていました。コロナで在宅ワークが増え、都心のマンションから少し郊外に転居する動きも見られます。ワンルームマンションの需要は堅調のまま推移するのか、コロナ後も見据えて慎重に目配りは必要だと思います。
日経新聞(2021年7月7日付)「投資マンション最高値」によると、投資用不動産情報サイト「楽待」に新規掲載された、4~6月期の区分マンションの物件平均価格が1771万円だったそうです。これは前期に比べ48万円高く、過去最高。サイトの掲載物件数も1445件増えたといいます。ただし、物件の値上がりに伴い、利回りは6.76%と過去最低水準となっています。
この物件価格の高騰には、少し危うさを感じます。人口は間違いなく減少しています。コロナが収束してオフィスに人が帰ってきても、需要と供給のバランスはいかがでしょう。
また投資用不動産に資金が流入しているのは、金余りのため株価が高い水準で推移しているのと同様とも考えられますが、不動産投資の場合はローンを組んで投資をする手法が一般的です。「ローン返済のリスクを負っている」ということを承知して投資する必要があります。
信頼のおける企業と慎重に物件を選び、ゆとりのある返済計画を立てることをお勧めします。
(出典)
総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2020年結果」
日本経済新聞「投資用マンション、4〜6月最高値 区分価格1771万円、民間調べ」
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
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