生前贈与で損をしない方法。「暦年贈与」をご存じですか?
ファイナンシャルフィールド / 2021年8月30日 10時0分
相続税対策として生前贈与を検討されている方も多いことでしょう。しかし生前贈与はその方法に注意しないと、結果的に損をすることがあります。そこで注目したいのが「暦年贈与」です。 今回は、節税効果のある暦年贈与の基礎知識や、贈与税の対象となってしまう「定期贈与」とみなされないための注意点をご紹介します。
年間110万円の基礎控除を利用! 暦年贈与とは
暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までに譲り受けた財産総額に適用される110万円の基礎控除を活用した贈与の方法です。つまり毎年110万円以下なら非課税で財産を贈与できるため、相続税対策として検討の余地があります。
長年かけて暦年贈与を行うと、相続財産を減らすことが可能です。ここでは暦年贈与について、詳しく見ていきましょう。
相続税を節税できる! 暦年贈与の仕組み
暦年贈与の仕組みは、非常にシンプルです。
基礎控除の110万円以内であれば、財産の受け渡しに贈与税はかかりません。暦年贈与を行うための特別なやり方は存在せず、贈与を受ける側の受取金額を年間110万円以下になるように財産を受け渡すだけです。
贈与税は財産を受け取った人に課税されるものです。財産を受け渡す側には贈与税はかからないため、年間に何人にでも贈与できます。そこで110万円以下の財産を複数人に贈与することも検討しましょう。
例えば、祖父母の財産から孫5人に110万円ずつ5年間に渡り暦年贈与するケースでは、5年間で2,750万円を非課税で贈与できます。
他の贈与税がかからないケースと併用できる
節税効果をあげるために、110万円の基礎控除枠を活用した暦年贈与は、次のような他の非課税制度と併用できます。
●教育資金の一括贈与
●都度贈与
「教育資金の一括贈与」とは、30歳未満であれば父母や祖父母などから教育資金に充てる目的で受け取った贈与のうち、1500万円までが非課税となる制度です。取扱金融機関を経由して「教育資金非課税申告書」を提出する必要があります。なお500万円までは、学校以外の習い事などに使うことも可能です。
「都度贈与」とは、例えば祖父母が孫の生活費や教育費のうち、扶養義務とみなされる範囲で負担したものを「その都度」使い切ってしまえば贈与税はかからない制度です。
ただし都度贈与として受け取った金額を、預金したり株式・不動産の購入に充てたりしていると贈与税がかかることになるので注意してください。
贈与税がかかる「定期贈与」と「暦年贈与」の違い
暦年贈与と混同しやすい贈与に、定期贈与があります
定期贈与とは、毎年一定額を贈与すると取り決め「定期金給付契約」された贈与のことです。例えば、100万円を10年間に渡り毎年贈与すると取り決めをして生前贈与を行うと、定期贈与とみなされます。
例え毎年110万円以下であっても、定期贈与の取り決めを行った年に「定期金に関する権利」の贈与を受けたとして、贈与額の合計額に対して贈与税が課税されるのです。
生前贈与で贈与税が課されないようにするためには、暦年贈与の度に贈与契約書を作成するなど、定期贈与とみなされないような対策を行う必要があります。
暦年贈与の際に気をつけたい4つの注意点
暦年贈与は、相続税を支払わないための裏技ではなく、贈与税の110万円の基礎控除を利用した地道な相続税対策です。
コツコツ地道にやれば相続税を節税できる暦年贈与ですが、やり方を間違えると贈与税もしくは相続税の対象とみなされ、それに応じた税金を支払うことになります。ここでは確実に暦年贈与とみなされるために、どのような点に注意すべきか見ていきましょう。
死亡前3年以内に行われた贈与は相続税の対象
相続開始前3年以内に受け取った財産は、110万円以下でも相続税の対象となります。暦年贈与として確定していても、相続財産に加算されるからです。
注意したい期間は、具体的に次のとおりです。
・死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間
ただし、相続財産に加算されるのは相続などにより財産を取得した人のケースです。孫は祖父母から見ると遺贈や代襲相続などがない限り相続などにより財産を取得しないため、祖父母から孫への暦年贈与は、3年以内の持ち戻しの対象含まれません。
贈与契約書を作成する
定期贈与とみなされないために、暦年贈与の度に贈与契約書を作成すると良いでしょう。多少の手間はかかりますが毎回契約書を作成することが大切です。
毎年異なる金額を異なる時期に贈与する
「定期的」に見えないように、毎年贈与する度に金額や時期を変えるようにしましょう。暦年贈与では、「非連続」「気まぐれ」に見えるように贈与するのがポイントです。
受贈者が管理する口座に振り込む(名義預金を避ける)
親が子ども名義で口座を作り、毎年100万円を積み立てた場合には、暦年贈与とみなされません。なぜなら、実質的に親のお金が子ども名義の口座に入っていることになり、それは名義預金とみなされます。
暦年贈与では、必ず贈与を受け取る人(受贈者)が届出印や通帳などを管理する口座に振り込むようにしましょう。また、贈与契約書を作成することも忘れないようにしてください。
正しい理解で暦年贈与を進めよう
暦年贈与は、贈与税の110万円の基礎控除をうまく利用した王道の相続税対策です。ただし地道に行う必要のある暦年贈与は、正しい理解で進めないと思わぬ課税をされる場合があります。
生前贈与で損をしないためにも、暦年贈与を検討する際には当記事で紹介した注意点をぜひ参考にしてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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